第28話 暗黒騎士と巨大剣

俺と巨大剣は城の入口付近まで来て、ようやくその回転を止めた。そして、完全に三半規管をやられた俺は、泡を吹いて倒れた。


「ソウタ、大丈夫ですか⁉︎」


「ソウタさん!」


「・・・だ、だい・・じょう・・ぶ・・だ。ユ、ユイたちは、ツダを追ってくれ・・」


「で、でも・・・」


「早く・・行かないと、また・・、逃げら・・れるぞ」


「わかりました。ソウタは無理をしないでください」


ユイ、レイナ、シス、バルダスと部下は、ツダを追って城の中へ入る。猪の団の兵たちは、残りのアンデッド兵と交戦中だ。



「うっ⁉︎」


「シス、どうしました?」


「・・ダメだわ。この城には結界が張ってある。私は入れない」


ツダは魔王の襲来を予想して、城にはさらに強い結界を張っていたようだ。


「ここから先は、わたしたちにまかせてください!シスはソウタをお願いします」


「・・わかったわ」



ユイたちは、ツダを追って螺旋らせん階段を駆け上る。



「ここから先は通さん!」


前に立ちはだかったのは二人の暗黒魔導士だ。


「アイスブラスト!」


氷の刃がユイに向かって飛んでくる!が、ヒラリとかわして間合いを詰める。


「はぁっ!」


ズバッ!


「ぐあっ!」


一人を倒した。



「ペトロブラスト!」


「うっ!」


暗黒魔導士の石化魔法を喰らった猪の団の兵は、たちまち石像になってしまった。


「クソッ!・・はっ!」


バサッ!


「ぐはっ・・⁉︎」


バルダスがもう一人も倒した。



ユイたちは城の屋上まで上がってきた。そこには、ツダの姿があった。


「フフフフ、よくぞ、俺様をここまで追い詰めたな。それだけは褒めてやろう」


「ツダ!ここまでです!投降するなら、命だけは助けてあげましょう」


「投降?おまえ、なにを言ってるんだ?あの馬鹿げた剣の転生者は予想外だったが、ヤツは下でグロッキーだ。ヤツさえいなければ、おまえらなど俺様の敵ではない」


「なにっ⁉︎」



ズダン、ズダン。


何かの足音が聞こえてくる。


「なんだ⁉︎アイツは⁉︎」


ユイたちの背後に、漆黒の鎧を身にまとった騎士が現れた!その身の丈は常人の二倍以上はある!


「暗黒騎士よ!ヤツらを全員、血祭りにあげろ!」


「グォオォオォオォ!」


暗黒騎士は大きな戦斧を両手に持ち、ゆっくりと向かってくる。


「クックックッ、せいぜい楽しませてくれよ?フハハハハハ!」


そう言い残してツダは姿を消した。


「くっ⁉︎またしても、逃がしたか⁉︎」



「「「うぉおぉ!」」」


猪の団の兵が三人がかりで、暗黒騎士に斬りかかった!


「おまえら、うかつに近づくんじゃない!」


「フンッ!」


ブォン!


「「「ぐわぁ!」」」


なんと、暗黒騎士の大きな戦斧は一振りで、三人の兵を吹き飛ばす!


「つ、強い」



ズダン、ズダン。


ゆっくりと近づく暗黒騎士。バルダスとユイは剣を構える。


「いくぞ!」


「はい!」


ダダッ!ダッ!


二人同時に両脇から攻める。


「グォオォオォオォ!」


暗黒騎士の強力な一振り!


ギンッ!・・ギンッ!


バルダスとユイは、すんでの所で防御するも、もの凄い力で吹き飛ばされた!


「うわぁっ!」


「・・・くっ!」



「二人とも下がって!」


レイナが両手を広げて呪文を唱える。


「ファイアストーム!」


暗黒騎士の足下に発生した炎の竜巻が、渦を巻いて焼き尽くす!


ゴォオォオォオォオォッ‼︎


「やったか⁉︎」


「まともに喰らったわね」



下火になった炎と煙の中から、黒光りする鎧が浮かび上がってきた。


「なにっ!」


「そ、そんな・・!」


暗黒騎士は戦斧を両手に構え、ゆっくりと歩いてくる。


「魔法が効かないというの⁉︎」




その頃、俺は、ようやく立ち上がれるまでになった。


「城の屋上で火が上がっている!レイナが魔法を使ったのか⁉︎・・一体、上で何が起こっているんだ⁉︎」


くそっ、巨大剣を引きずって上って行ってたら間に合わない!どうしたら・・・。


「・・・そうだ!シス、頼みがある!」




「グォオォオォオォ!」


ガンッ!


「ぐわぁっ!」


バルダスは、暗黒騎士の一撃を喰らい、深刻なダメージを負っていた。



「はぁあぁあぁッ!」


ギンッ!


ユイの強力な一撃も、暗黒騎士のぶ厚い鎧には歯が立たない。


「フンッ!」


ガンッ!


「あぁッ!」


暗黒騎士の重い一撃をもらい、吹っ飛ばされる!



「ファイアボール!」


ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!


火炎魔法攻撃では、まったくダメージを負わせられないとわかったが、レイナはやけくそになって放っていた。


「しね!しね!しね!しねーッ!」


全ての火の玉を直撃しながらも、暗黒騎士は平然と立っている。


「な、なんでよ・・・なんなのよ、あいつ・・」


レイナはヘナヘナと座り込んでしまった。



「・・・・・(魔法攻撃も効かない。わたしやバルダスの剣ではダメージも与えられない。・・くっ、ここまでか)」


ボロボロになりながらも剣を構えるユイの目の前に暗黒騎士が迫る。



その時だった。


「ちょっと待ったーーーッ!」


暗黒騎士の頭上高く、突然、姿を現したのは、巨大剣を振りかぶったこの俺、スズキソウタだ!シスの転送魔法で城の屋上まで転送してもらったのだ!


シス、ナイスだ!冴えてるぜ!ちょうど、敵の真上だ!


真下に暗黒騎士の姿を確認。重力に従って落ちる巨大剣の軌道を微調整する。


「どぉおぉおぉりゃあぁぁぁぁぁッ‼︎」



斬‼︎



暗黒騎士の左の肩口から入った巨大剣は、そのまま斜め右下方向へ落ちる。暗黒騎士の胴体は真っ二つに斬り裂かれていった!


「グガァ・・・ッ」


ズダン、ダン!


その巨体は、二つに分かれ、倒れた。



「あれだけ強固な鎧を、いとも簡単にブッた斬りやがった・・。カシラの剣は、いったい何なんだ⁉︎」


バルダスと生き残った兵は、唖然としている。



「ソウタ・・」


ガクッ。


「ユイ!」


俺は倒れ込むユイに駆け寄った。


「大丈夫か⁉︎」


「信じてましたよ・・来てくれると・・」


ユイの身体は暗黒騎士の度重なる重攻撃を受けたせいで、大きなダメージを受けていた。


「ミーア、たのむ!」


「はい!おまかせを!」


こういう時は、フェアリーの回復スキルが役に立つ。



「ごめんなさい。あたしの魔法が役に立たなかったばかりに・・」


レイナは責任を感じて、しょんぼりしている。


「いいんだよ、気にすんな。今回の相手は魔法防御に特化したヤツだったってだけだ。おまえの魔法は超強力だ!次は、たのむぜ!」


「・・うん」


俺はレイナの頭を撫でてやった。



敵のアンデッド兵は猪の団によって壊滅させられていた。勝敗は決したのだ。




その後、シスは、外部の者の侵入を防ぐため、ここブリタニア城に新たな結界を張ることにした。いずれ、シスの了承を得て、この城の有効利用も考えたいところだ。


「ソウタ、アンタのその巨大な剣で、私も切り裂いてちょうだい♡」


「な、なんだよ⁉︎シス!」


「その剣が、建物や敵を切り裂きまくるのを見て、濡れちゃったのよ♡」


猫撫で声を発しながら、シスは俺の腕に絡みついてきた。このエロテロリストがっ!・・ていうか、M女の魔王とか見たくねーッ!

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