第23話 エンシェントドラゴンと巨大剣
アラガキは泣いていた。自慢の武具を破壊されたのである、まぁ、気持ちは分からんでもないが。しかし、もとはといえば、自分から仕掛けてきたことである、俺には責任がない。
「キミのせいで、僕の冒険は終わりだ!まさか、同じ転生者にこんな仕打ちを受けるなんて・・。普通、転生者同士って助け合うものじゃないのか⁉︎君ってやつは、血も涙もないのか⁉︎うぅ、うぅ・・」
このままでは、『神殺し』に加えて、『勇者殺し』の汚名まで着せられかねない。
「わ、わかったよ。じゃ、今回だけ、あんたのクエストを手伝うから、それで許してくれないか?そのかわり、そのクエストを達成したら、暗黒魔導士の居場所を教えてくれよ?」
「・・・本当?あ、ありがとう!助かるよ!・・で、キミたち、暗黒魔導士を追っていたのか?だったら、早く言ってくれればいいのに」
こ、こいつは・・・。何度も言おうとしたじゃないか!
「で、今、進めているクエストっていうのは、どんなものなんだい?」
「実は、このクエストが僕にとって最後のクエストなんだ」
「最後・・だと⁉︎もしかして、『
「『
「は?・・・おい、ちょっと、ミーア、これ、どういうことだ?」
「え、えぇ、じ、実は、ソウタさんが転生する直前までは、『エンシェントドラゴン』の討伐が転生者の最終目標だったのです。でも、女神さまの間で『これじゃ、いつまでたってもラチがあかないわね』という話しになって、じゃ、『悪いものは元から絶たなきゃダメね』てことになって、『
『臭いは元から絶たなきゃダメ』みたく言うな!それから、話題にすら上がらない魔王の存在って、一体・・・。
「クソッ、俺の直前か・・。ツイてないぜ」
というわけで、アラガキの最後のクエストに付き合うことになった。エンシェントドラゴンは、ウェアラウス火山の火口付近にいるらしく、そこまでの道のりは険しい。
上へ登るにしたがって、木は枯れ果て、岩肌のあちこちから蒸気が吹き出している。
ガタッ!
「・・ダメだ!また、脱輪した!」
シシマルの荷馬車は、岩の間に車輪がハマり、何度も動けなくなった。その度、みんなに押してもらって脱出してきたが、このままでは日が暮れてしまう。
「みんな、先に行ってくれ。ここからは、俺が巨大剣を引きずって登る」
俺は巨大剣をわずかに持ち上げられるようになったので、なんとか引きずっての移動が可能になっていたのだ。
「わたしも手伝います」
「いや、ユイとレイナもアラガキに付いていってくれ。エンシェントドラゴンは強敵だ。戦力は分散するより集中した方がいいだろう」
「・・・わかりました」
こうして、俺一人、みんなを追うかたちとなったのである。
ウェアラウス火山、火口付近。
アラガキを中心とする武闘家、プリースト、ユイ、レイナの本部隊は、目的の場所にたどり着いた。
「すごい熱だ。熱い・・」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ‼︎
突然、地面が揺れだした。
「あれを見ろ!」
「ギャオォオォオォオォオォン‼︎」
火口から、巨大な双翼がせり出してきた!
「「「「「エンシェントドラゴン!」」」」」
ドラゴン種の中でも最強の存在。それが、エンシェントドラゴンである。大きな翼をバタつかせて高く飛び、ゆっくりと地面に降り立った。その翼の風圧にさえ、吹き飛ばされそうになる。
「気をつけろ!くるぞ!」
エンシェントドラゴンは、口を大きく開けると、こちらに向かって、凄まじい炎を吐き出した!
グオォオォオォオォーッ!
アラガキたちは、その攻撃を避けつつ分散しながら、ターゲットを取り囲む。
「はぁあぁあぁ!」
ユイの剣が、エンシェントドラゴンのアキレス腱のあたりをとらえる!
ズサッ!
「ギャオォオォンッ!」
体勢を崩したところに、武闘家が飛び蹴りを繰り出す!・・が、巨大な尻尾を振って、それは跳ね返された。
「喰らえーッ!」
今度は、正面からアラガキが飛びかかる!そこに、エンシェントドラゴンは再び火炎を吐いた!
「いっけーーー!」
ドッシャーーーーー‼︎
レイナのアクアブラストガンから大量の水が放出され、吐き出された猛烈な炎をかき消してゆく。
「もらったー!」
アラガキの剣が、エンシェントドラゴンの頭部をとらえた!
ギンッ!
しかし、剣は跳ね返され、その反動でアラガキは体勢を崩した。
「うわぁあぁ!」
「ギャオォオォオォオォオォン‼︎」
次の瞬間、エンシェントドラゴンの体全体から電撃がほとばしる!
ユイはレイナとアラガキを守って電撃をガードし、プリーストは光のバリアを張って武闘家を守った。
「な、なんて強さだ!・・ダメだ、僕の剣じゃ、ダメージすら与えられない!」
「凄まじい電撃・・ですね・・、ガードするのが精一杯で、身動き・・できません・・」
「ソウタ、何やってるの⁉︎早くきて!」
レイナが火炎魔法で攻撃したり、武闘家がコンボを繰り出したりするも、エンシェントドラゴンにはダメージを与えられず、アラガキ本部隊は、徐々に追い込まれていった。
「こ、これ以上、電撃を防ぎきれません!」
「火属性で雷属性も併せ持っているなんて、めちゃくちゃだわね!」
「ハァ、ハァ、ハァ・・・」
その時、近くに人影が⁉︎
「ちょっと、あれ、見て!」
そう、ヒーローは、いつも一番最後に登場するものなのだ。
「ま、待たせたな・・ハァ、ハァ・・」
そこには、巨大剣を引きずって汗だくの俺の姿があった。
「ここからは、ハァ、ハァ・・、大船に乗ったつもりで、ハァ、ハァ、ハァ・・、いい・・ぞ・・」
バタン!
「「ソウターッ!」」
「ダ、ダメだ、体力を使い切ってやがる・・・」
そう、俺は、この過酷な登山で、すべての体力を使い果たしていたのである。
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