第24話 捨て身の攻撃と巨大剣

シャーーー。


「・・・(んゴクッ、んゴクッ)」


レイナのアクアブラストガンから水を補給させてもらい、なんとか息を吹き返した。


「どうぉ?立ち上がれそう?」


「あ、あぁ、ありがとう。生き返ったよ」




アラガキたちは、俺の復活まで、なんとかエンシェントドラゴンの足止めをしていた。


「グオォオォオォオォーッ!」


アラガキも武闘家もダメージがひどく、動けない状態になっている。プリーストも魔力を使い果たし、その場にうずくまっている。ただ一人、エンシェントドラゴンの攻撃を、一手に引き受けているのはユイだった。


ビキニアーマーは、このような高温地帯での戦闘に向いているようだ。ユイの全身は汗まみれで、胸元の谷間には雫ができている。


だが、ユイはもう限界だった。


シシマルがいない以上、いつもの攻撃方法は使えない。この巨大剣を持ち上げる方法は・・・これしかないか⁉︎


「レイナ!俺に特大の火炎魔法を浴びせてくれ!あのでっかい火の玉のやつだ!」


「なに言ってるの⁉︎そんなことしたら、死んじゃうわよ?」


「ば、バカっ!直接じゃないぞ!この足下あたりにだ!その爆風を利用して巨大剣を振り落とす!」


「なるほど!・・でも、あたしの火炎魔法は直撃しなくてもタダじゃ済まないわよ?」


「今は、そんなこと考えている余裕はない!とにかく、吹き飛ばしてくれればいいんだ!」


「・・わ、わかったわ。絶対、死なないでね」


「あぁ、大丈夫だ!ドーンとやってくれ!」



レイナは、ゆっくりと目を閉じると、呪文の詠唱に入った。


「・・・火の精霊よ、我が手に宿り、焔の踊りを魅せよ!」


両手をあげたレイナの手の上には、火の玉が出来上がり、どんどん大きくなっていく。


「おいおいおいおい!で、デカい、デカすぎるってーーーッ‼︎」


「メルトスフィア‼︎」


巨大な火の玉が、俺の足下めがけて飛んできた!


「ひぇえぇえぇえぇ!」



ドッゴォオォオォオォオォンッ‼︎



もの凄い爆発で、俺は巨大剣もろとも、空高く吹き飛ばされた。


「うぉおぉおぉおぉおぉおぉ‼︎」


そして、エンシェントドラゴンの頭上で、体勢を整えて巨大剣のつかを握りしめた!


「おぉりゃあぁあぁあぁあぁっ‼︎」


真下に、その長い首を確認し、そのまま振り落とす!



斬‼︎



「ギュアァアァアァアァアァアァッ!」


エンシェントドラゴンは胴体から首を斬り離されて、断末魔のような叫びを上げた!



ドガッ!


巨大剣は地面に突き刺さり、俺は着地した。



ズドン‼︎


そして、エンシェントドラゴンの巨体は崩れるように倒れたのだった。



ここで、俺の記憶は途絶えている。ただ、遠くに、ユイとレイナの泣き叫ぶ声だけが聞こえていた。






気がついたら、そこは病院のベッドの上だった。異世界にも病院はあるらしい。


「「ソウタ!」」


「ソウタさん!」


目の前には、ミーアとユイ、レイナの顔があった。


「ソウターーー!よかったぁあぁ!」


「ごめんね、ごめんね」


二人は泣きじゃくりながら、しがみついてくる。


「ソウタさん、三日も眠ったままだったんですよ」


俺はレイナの火炎魔法で大ヤケドを負って、生死の境をさまよっていたらしい。



「ははは、レイナのせいじゃないよ。あの時は、ああするしかなかったからな」


「ソウタ、ごめんね、ごめんね!」


いつもは生意気なことばかり言う憎たらしい大魔導士さまだけど、こういう時のレイナは、かわいい普通の女の子だ。俺はレイナの頭を「よしよし」としてやった。


「ようやく、目を覚ましたかい?」


アラガキたちが部屋に入ってきた。


「キミのおかげで、僕のこの世界での目標は達成されたよ。あれは、とてもじゃないけど、僕じゃ倒せる相手じゃなかった。心から礼を言わせてくれ」


「いや、いいんだ。どうせ、乗り掛かった船だしな。・・ところで、約束の暗黒魔導士のことなんだけど・・」


「そのことなんだが、ちょっと、二人だけで話せないかな?」


何やら事情があるようなので、みんなには一度部屋から出てもらった。



部屋で二人っきりになったところで、アラガキは話し出した。


「実は、暗黒魔導士軍を引き連れているのは、僕の元パーティメンバーで僕たちと同じ転生者なんだ」


「なんだって⁉︎」


「彼はアークウィザードとして一緒に戦っていたんだが、遺跡探索の最中に偶然見つけた魔導書を手にしてから、人が変わったようになってしまってね、そのままパーティを抜けてしまったんだよ」


アラガキは残念そうな表情を浮かべながら話した。


「その後、彼に一度会う機会があったんだけど、まったくの別人になっていたよ。ちなみに、彼の名前は『ツダリョウスケ』というんだ」


「『ツダ』だって⁉︎」


「あれ?知っていたのかい?」


「暗黒魔導士ツダ、そいつはアークドラゴンに街を襲わせたやつだぞ!」


「彼なら、やりかねないな。今は、西の孤島にあるブリタニア城にいるはずだ」


「そうなのか⁉︎・・でも、なぜ、居場所まで知ってるんだ?」


「その城は元魔王城なんだ。だから、魔王討伐のために、その城に行ったんだが、魔王はいなくて、代わりに彼に出くわしたってわけさ」


シスーーー!戸締まり、しっかりしておけーっ!


「彼を説得したんだけど、まったく聞く耳持たずでね、あきらめて、帰ってきたんだよ。・・暗黒魔導士について知っているのは以上だ」


「・・・ありがとう。まさか、転生者だったとは・・・」


「それじゃ、僕は、この世界から、おさらばさせてもらうよ。・・あ、最後にお願いがあるんだ」


「また、お願いかよ⁉︎」


「まぁ、そう言うなって。キミにとっても、いい話しなんだから。単刀直入に言うと、僕のパーティメンバーの2人をキミのパーティに加えて欲しい」


「はぁ?」


「みんな、入ってきてもいいよ」


目の前に武闘家の女とプリーストがやって来た。


「二人とも、言ったように、ちゃんと挨拶して。」


「あたいはサラ。武闘家のサラだ。は、恥ずかしいけど、夜のほうも頑張るから、よろしくな!」


「わたしはプリーストのナディアだよ。下半身の回復魔法はまかせてね♡」


いっ‼︎・・アラガキよ、おまえはいったい、彼女たちに何を仕込んだのだ⁉︎なんと、けしからん!最高じゃないか⁉︎


「な、な、な、なんですか⁉︎あなたたちはーっ⁉︎」


「このビッチども、ソウタから離れろ!」


ユイとレイナが慌てて、割って入る。



「なんだ、おまえは⁉︎ただ、おっぱいが大きいだけの小娘じゃないか⁉︎おっぱいなら、あたいのほうが気持ちよくできるからな!」


「な、なにおーーーっ!・・や、やってやろうじゃないか!どっちのおっぱいが気持ちいいか、勝負してあげますよ!」



「ビッチは、あなたの方でしょ⁉︎わたしは、回復魔法でソウタさんをスッキリさせることができるんだから!」


「おまえの回復魔法なんかより、あたしの魔道具のほうが、もっとスッキリするわよ!」



おっぱい?魔道具?回復魔法?・・・いかん、いかん、鼻血が。・・童貞には刺激が強すぎる!




女たちが揉めているのを横目に、アラガキは謎の微笑みを残して部屋を出て行った。すぐにでも異世界を去るのだろう。


ユイたちはというと、揉めに揉めて、最後は「どっちを選ぶの⁉︎」と、俺に凄む始末だ。


「全員」と言いたいところだったが、そうもいかず、サラとナディアには悪いが、『修行のため』と称して、ハイムのメイドカフェへと行ってもらうことにした。シスなら彼女たちでも上手く扱えるだろう。

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