第36話 覚醒と巨大剣

シスの巨大竜巻とフローディス軍の追撃により、魔物の群れは押されていった。


「よし、一気に攻め上がれ!」


ロデリック王の掛け声で、さらに進撃する。



シシマルの荷馬車に乗った俺たちが、ようやく城門の前にたどり着いた時だった。


突然、門が開き、そこから漆黒の鎧を全身にまとった騎士が、ぞろぞろと6人出て来た。暗黒騎士だ!その巨体が俺たちの前に立ちはだかる。常人の3倍はあろうかという背丈で、長い剣と大きな盾を持っている。


「武器は違うが、こいつは前にブリタニア城で戦ったヤツか⁉︎」


そして、暗黒騎士の間から現れたのは、暗黒魔導士ツダだった。


「ツダ!」


「フフッ、久しぶりだな」


「もう、そのへんにしておけ!これ以上やっても、おまえに勝ち目はないぞ!」


「それは、どうかな?この暗黒騎士は1体で千の兵に匹敵する力を秘めている。追い込まれているのは、おまえたちの方だということに気づかないのか?」


暗黒騎士が前に出て来る。


スドン!ズドン!


「フハハハハッ!せいぜい楽しませてくれよ!」



「ソウタさん!暗黒騎士はレベル63です!」


「それは本当か⁉︎ミーア!」


「はい!」


レベル63のヤツと対等に渡り合える兵は、こちらにはいない。しかし、数千のフローディス兵がいる。数で押し切れば、なんとかなるか。


「グォオォオォオォッ!」


フローディス軍の前線に、暗黒騎士がその長剣を振った。その一振りで、兵たちが5、6人吹き飛ばされていく。


「「「うわぁあぁあぁっ!」」」


「な、なんてパワーだ⁉︎」



「カシラ!ここはオレたちがなんとかする!カシラたちはツダを追ってくれ!」


「でも・・・⁉︎」


「ツダを倒さなきゃ、この戦は勝てねぇ!だから、早く行ってくれ!」


「・・・わかった!バルダス、死ぬんじゃないぞ!」


「ここで、死ねるかよ!ヤロウども、カシラを通すぞ!」


「「「オーーーーーーッ!」」」


バルダスを中心に猪の団が、暗黒騎士を取り囲んで足止めを図る。


「いまだ!いけ!」


バルダスの一声で、シシマルの荷馬車が暗黒騎士の間をすり抜けた。そして、一気に城門を突破!



暗黒騎士の加わった魔物の群れは、フローディス軍を押し返してきた。


「おまえたち、いい加減にしろーーーッ!」


シスは大きく口を開けると、ドラゴンさながらの火炎を吐いた!


ゴォオォオォオォオォオォオォ‼︎


「「「グギャアァアァアァ!」」」


魔物たちを一気に焼き尽くす!そこは、まさに地獄絵図だった。


そして、暗黒騎士の軍勢とフローディス軍は一進一退の攻防を繰り広げるのだった。




城門を一気に突破した俺たちは、城の入り口までやって来た。


「このへんには敵がいませんね」


「魔力を温存して『ようやく、ここで!』って思ったのに残念ね」


ズドン!ズドン!


「来るぞ!」


城から出て来たのは、これまた、暗黒騎士だ!俺たちの前に姿を現したその数、10体!


「クソッ!数が多い!」



「メルトスフィア!」


レイナは火炎魔法を放った!巨大な火の玉が辺りを焼き尽くす!しかし、暗黒騎士の歩みは止まらない。


「そう言えば、魔法攻撃を受け付けないんだったわ!えーん!なんのために、魔力温存したのよ⁉︎」


ブォン!


「フゴーッ!」


シシマルが斬られて吹き飛ばされた。


ギンッ!


「くっ!」


暗黒騎士の強烈な一撃を受け止めたユイも吹き飛ばされた。


「シシマル!ユイ!」


シシマルを使って巨大剣を振ったとしても1体を倒すのがやっとだ。これじゃ、数が多すぎる!・・・どうする⁉︎


「レイナ!こ、これ、飲んだら、本当に巨大剣、振れるのか⁉︎」


俺は、例の『魔薬』の入った小袋を取り出した。


「振れると思うけど・・呪いにかかっちゃうわよ!死んじゃうかもしれないわよ!」


「このままだったら、どの道、全滅だ!だったら、試すしか・・」


「む、無茶よ!」


俺は一粒取り出してゴクッと飲み込んだ。


「あーッ!飲んじゃった⁉︎」


レイナは慌てている。



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ‼︎



なんだ、この感覚は⁉︎身体が熱い!



「グオォオォ!」


暗黒騎士が剣を振りかぶって来た!



俺は、とっさに巨大剣のつかを『片手』で握り、そして、振った。


ブォンッ‼︎


ガンッ‼︎



「グガッ!」


水平方向に振った巨大剣は、暗黒騎士を上下真っ二つにブった斬った!


「ソ、ソウタ・・・!」


ユイとレイナが目を見開いて固まっている。


「ミーナ、シシマルの手当てをたのむ!」


「は、はい!おまかせください!」



「「「グォオォオォッ!」」」


残りの暗黒騎士たちが一斉に向かって来た!


「はぁあぁあぁッ!」


ブォン‼︎ガンッ‼︎ ブォン‼︎ガンッ‼︎


ブォン‼︎ガンッ‼︎ ブォン‼︎ガンッ‼︎


俺は巨大剣を振り回して、暗黒騎士たちを次々と斬り倒してゆく!


「す、凄い・・・」


なんだろう⁉︎この湧き上がるような衝動は⁉︎とにかく硬くてデカいモノを斬りたい・・といか、ぶっ叩きたい!夢中で振って振って振りまくっていた。今まで振れなかった分、思う存分、振っていた!


気付いた時には、暗黒騎士は全滅していた。


「うぉおぉおぉおぉ!もっと、もっとだ!もっと斬らせろーッ!」


俺は巨大剣を両手に構え、我を忘れて城へと突入してゆく!


「「ソウター!」」


ユイとレイナの目に映った俺は、まさに『狂戦士』そのものだったろう。



城の二階を突破。暗黒騎士の撃破数6。


城の三階を突破。暗黒騎士の撃破数5。


俺が通った後には、暗黒騎士たちの分断された体が散らかっていた。





「フフフッ。我が魔力で創りし暗黒騎士の軍勢はどうだ⁉︎圧倒的ではないか!奴らは手も足も出まい。あとは、元魔王をなんとかすれば、大勢は決するな!」


「うぉおぉおぉおぉ!」


ドドドドドッ!


「なんだ⁉︎外が騒がしいな」


ドガッ!


王の間の扉が蹴破られる!


「なっ・・・⁉︎そ、そんなバカな⁉︎」


「ゼェ、ゼェ・・・」


ツダは驚きの表情で立ち尽くしていた。


「レイナ!」


俺の後に続いて来たレイナが両手をかざす。


「ブリムストーン‼︎」


「しまった!」


レイナの両手から放たれたオーラが、辺りいったいを包み込む!


「『テレポート』を禁じる結界を張ったわ。もう逃げられないわね!」


「クソッ!」



「さて、決着をつけようか?」


俺は巨大剣を担いで前へ出た。

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