第37話 覇王復活と巨大剣

レイナの結界で転送魔法を封じられたツダは焦っていた。


「ど、どうして、その馬鹿げた剣が振れる⁉︎」


「ん?これか?これは、レイナとシスが作ってくれた『魔薬』とやらを飲んだからさ」


「なんだって⁉︎そんなのありか⁉︎」


「そういえば、呪いがかかるって言ってたけど、今のところ無事だな」


「クソッ!【UR】大剣とかいうチート武器使いやがって!汚ねぇぞ!おれなんか、最初の武器ガチャで3連続【NR】武器だったのに!」


「そう言えば、おまえ、転生者だったもんな」


「・・だから、強い者に付いて行けば生き延びられると思って、【SSR】盾を持っていたアラガキのパーティに入れてもらったんだ」


「それが、なぜ、暗黒魔導士なんかに闇堕ちしたんだ?」


「おれは、いつもパーティのお荷物だったんだよ。アークウィザードになったものの、強力な攻撃魔法も使えないから当然だよな。だが、ある日、ダンジョンの中でたまたま見つけたのさ、『暗黒魔導書』をな!」


ツダは、その手に漆黒の魔導書を掲げて見せた。


「この魔導書を手に入れた時は手が震えたよ。強力な暗黒魔法に、冥界の魔物の創造・・。フェアリーには愛想を尽かされたが、時には、神の化身とまで言われる伝説のドラゴンでさえ手懐けることができた」


「だったら、その力で女神さまのミッションをクリアしたらよかっただろう⁉︎」


「なにバカなことを言ってる?そんなものクリアしたら、元の世界に戻されてしまうだろうが⁉︎今、俺様はこの世界で最強の力を手に入れたのだ!もう、あんなクソみたいな世界で底辺の生活に戻りたくないわ!」


うーん、ちょっとは気持ちが分かってしまう自分が嫌だ。



「転生とかなんとか、言っていることがよくわかりませんが、悪はここで滅ぼします!」


ユイとレイナが前に出て来てツダを取り囲んだ。


「お、おう!観念しろ、ツダ!」


気持ちはわからんでもないが、だからと言って、この世界の人々を恐怖に陥れてもいいという理由にはならない。


「それ以上、近づくんじゃねぇ!」


ツダは王の間の端から、縄で縛られた二人の人物を引きずり出して来た。ドルガニア皇帝マルティムと娘フェリシアだった。


「それ以上、近づくと二人の命はないぞ!」


「「・・・・・!」」


マルティムとフェリシアは口を塞がれ、声が出せないようだ。


「なんて、卑怯な!」


ユイの表情が一段と険しくなった。


「フハハハハッ!卑怯もクソもあるもんか!勝てばいいのだ!この世界では生き延びた者が勝ちだ!さぁ、武器を捨てて、俺様にひざまずけ!」


ツダはマルティムの喉元にダガーを押し当てている。


「別にいいぞ。やれよ。俺には関係ねぇ。ただ、おまえをブった斬るだけだ」


「なっ⁉︎」


「「ソウタ⁉︎」」


「き、貴様、そのセリフ・・・あの某神作マンガの狂戦士みたいじゃないかーッ⁉︎」


「あれ?やっぱりわかった?無類のダークファンタジーファンなんだよね。おまえもなんだな?」


「クソッ!本当は、その役、俺様がやりたかったのにぃ!キィーーーッ!」


ツダはマルティムとフェリシアをこちらへ投げて解放した。


「・・・・・(某神作マンガ?ダークファンタジー?)」


「・・・・・(もしかして、ツダとかいう人、バカなのかしら?)」


ユイとレイナは呆気にとられている。


「もう終わりだ!こうなれば、おまえら全員、道ずれにして自爆するのみ!」


ツダは、なにやら詠唱しだした。


「しまった!・・くるぞ!」


ドガッ!


俺は咄嗟とっさに巨大剣を床に突き刺し、壁を作った。


「ユイ、レイナ!二人を連れて俺の陰に隠れろ!」


「・・・⁉︎は、はい!」



ツダは両手を上げて呪文を唱える!


「ロトンダークネス‼︎」


大気が一瞬、ツダの方へ集まり凝縮したかと思うと、閃光とともに大爆発を引き起こす!


ドォッゴォオォオォオォオォオォオォンッ‼︎


高熱の爆風が吹き荒れ、王の間の屋根も壁も吹き飛んだ!



突然、閃光と爆音を上げて、もうもうと燃え上がるドルガニア城を見上げて、シスとバルダスは驚いていた。


「何という禍々しい光!これは、暗黒魔法・・」


「おいおい、カシラたち、無事なんだろうな⁉︎」



天井は吹き飛び、雲に覆われた黒い空が広がっていた。辺りには、瓦礫が散乱し、一面、焦げ臭い臭いが漂っている。


「くっ、みんな大丈夫か⁉︎」


「は、はい、なんとか・・」


「ソウタの陰に隠れていなかったら、丸焦げどころか、姿一つ残らなかったわね」


ユイ、レイナ、それから、マルティム皇帝とフェリシア、全員無事だった。暗黒魔法の高熱の閃光を受けた巨大剣からも煙が上がっている。


巨大剣を盾代わりに使うというのは咄嗟とっさの判断だったが、生死を分ける選択だった。



「・・・ク、クソ・・き、きたね・・ぇぞ・・・」


ツダは、両膝をついて、うずくまっている。


「ツダ!」


「ま、まだだ。これで終わりじゃねぇ。この暗黒魔法の真の意味は『覇王の復活』にあり!」


「覇王だと⁉︎」


「これで、貴様も終わりだ!フハ、フハハハッ!先に行って待ってるぞ!」


そう言い残すと、ツダの体は消えてなくなった。


真っ黒な雲が空を覆い隠し、そこから、ポツポツと雨が落ちてくる。それは、すぐにザーッという雨へと変わっていった。


ゴゴゴゴゴ・・。


ドッゴォオォオォオォン‼︎


突然の稲妻が王の間の中央に落ちた!


「うぉっ!な、なんだ⁉︎」


「あれを見てください!」


ユイの指さす方向に目をやると、そこにはいびつな形をした鎧を身にまとう騎士が立っている。それは、鋭く光る長剣を持つドクロの騎士だった!


「コフォーッ。・・ようやく、この世界へ舞い戻って来られたか・・」


「おまえが、覇王⁉︎」


「コフォーッ。そうだ、我こそ、この世界の最初で最後の統治者『覇王オズマ』なるぞ!」


こんな時に不謹慎だけど・・・かっこいいーーーッ!ドクロの騎士とか、最高にワクワクするじゃないか!なに、あの鎧⁉︎凄く強そう!課金しないと貰えないレアアイテムみたいだな!


「・・・。ソウタ、なんかワクワクしてません?」


「し、し、してないよ!そんなっ!」


ユイは俺の心が読めるのか?



「我は闇の眷属として、この世界に再び生を受けた。その使命は新たなる支配!『闇の支配』を成し遂げることだ!」


「闇の支配だと⁉︎」


「そうだ。血と恐怖で満たされた『闇の支配』こそ、この世のことわりなり!この世界を闇で覆い尽くすのだ!」


覇王オズマは長剣を水平方向に一振りした。


ブォン‼︎


その瞬間、もの凄い衝撃波が俺たちを襲う!ソニックブレイドだ!


俺は咄嗟とっさに巨大剣を盾にして防いだが、不意を突かれたユイとレイナは一瞬で吹き飛ばされた。


「ユイ!レイナ!」


二人は瓦礫のところまで吹き飛ばされている。



「おまえ、その剣の主か?フフッ、面白い!」


「くっ!」


オズマが、ゆっくりとこちらへ迫ってくる!

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