第38話 呪いと巨大剣

ミーナが城の外でシシマルの手当てにあたっている。だから、オズマのレベルやあの長剣のレア度がどれくらいなのかわからない。しかし、確実に言えるのは、今までの敵の中で一番強いだろう、ということだ。


「我が覇道を邪魔する者よ。ここで死するがよい!」


オズマは長剣を上段に構えた。・・来る!


「はぁあぁあぁあぁッ!」


金属の長剣がしなるほど、強烈な打ち込みだ!


ギンッ!


俺も巨大剣を上段に構えて、その一撃を受け止める。


「はぁあぁあぁあぁッ!」


ギンッ!ギンッ!ギンッ!ギンッ!ギンッ!ギンッ!ギンッ!


もの凄い速さの打ち込みだ。しかし、それ以上に驚いたのが、その攻撃のすべてを、この巨大剣で受け止めている自分だった。


「はぁーッ!」


ギンッ‼︎


より強い一太刀!


「くっ!」


ズサーーーッ!


俺は巨大剣で受け止めながらも、後ろに押し出された。


「まさか、人間でありながら、ワシの剣を受け切るとは・・。しかも、その剣、並みのものではないな!通常の金属ならば、どんなに分厚くても、この『カオスソード』の前には、ただの柔らかいハムのように切れるはずだが・・。貴様、いったい何者だ⁉︎」


「何者でもないよ!」


ダッ!


今度は、俺のほうから斬りかかる!


ガンッ!


「・・・⁉︎」


ズザーーーッ!


巨大剣の重い一撃に、今度はオズマの方が押される。


「フフフッ、こいつは驚いた。これほどの者がこの世にいたとはな。これは、ワシも全力でいかないとならぬか」



ゴゴゴゴゴ・・・。


オズマの周りに黒い邪悪なオーラが漂い始めた。


「い、いや、俺、そんなに強くないから、本気なんか出さなくても・・・」


ヤバい!ヤバい!ヤバい!凄いの来そう!



「受けてみるがいい。我が最強の奥義!」


オズマは再び上段に構えた。今度は本気のやつが来る!・・っていうか、あれでも本気出してなかったってことか⁉︎


「カオスインペリアル‼︎」


勢いよく振り下ろされた剣から極太の光線が放たれる!


ズドォオォオォン!


「うおぉおぉっ!」


俺は間一髪のところで避けた。波動砲か、メガ粒子砲か・・直撃したらその時点で終わりだ。



「はぁっ‼︎」


ズドォオォオォン!


「・・・⁉︎」


ダメだ!二発目は避けきれない!咄嗟に、巨大剣を盾にして身を守る。


「ぐわぁあぁッ!」



ドッゴォオォオォオォオォオォン‼︎



「フッ、直撃したか」




もの凄い閃光と轟音で、気を失っていたユイとレイナが目を覚ました。


「ソ、ソウタ・・」



俺は、巨大剣を盾にしたことで、かろうじて直撃はまぬがれたが、高熱と衝撃波で服はボロボロになり、身体にも痛恨のダメージを負ってしまった。もう立っているのがやっとの状態だ。


「我が奥義を喰らいながら、まだ生きておるとは・・・。なんという、しぶとさだ」


再びオズマが剣を構える。


「その強さに敬意を表して、楽にいかせてやるぞ!小僧!」


「・・・くっ!」


「はぁあぁあぁあぁッ!カオスインペリアル‼︎」



ズゴォオォオォオォオォン!



再び極太の剣光線が放たれる!



「「ソウターーーッ!」」




「・・・⁉︎」


俺は最後の力を振り絞って、ジャンプ一番、剣光線をかわした!


「敬意を表しているのに、『小僧』はないだろうがーーーッ!」


そして、オズマの頭上に巨大剣を振り落とす!



ゴッ‼︎



巨大剣は、床に突き刺さる。だが、そこには、オズマの姿はない!消えた⁉︎


なんと、オズマは、剣を振り落とした俺の背後に瞬間移動した!


「なかなかよい攻撃だったぞ!小僧!」


背後から斬りかかるオズマ!



「だから、『小僧』じゃ敬意になっておらんわーーーッ」


俺は、巨大剣を高く振り上げて、そのまま後ろ向きに倒れた。




「なにっ⁉︎」



斬‼︎



「グォオォオォ・・オォ・・ば、ばかな・・・」


オズマの脳天から入った剣は、そのまま重さにまかせて、下まで落ちる。骸骨の騎士の鎧もろとも、真っ二つに割っていた。



ズダン!



仰向けに倒れた俺と、真っ二つになったオズマ。やがて、オズマの体は煙を出しながら消えていった。



「・・・。これぞ、背面斬りだ!」



「「ソウターーーッ!」」


ユイとレイナが駆け寄ってくる。


「大丈夫ですか⁉︎」


「あ、あぁ、なんとか・・。それより、おまえたちこそ、大丈夫か?」


「はい、ちょっと気を失ってしまいましたが、大丈夫です」


「あんたこそ、ボロボロじゃないの⁉︎人の心配している場合じゃないわよ」



「ソウタ殿!」


「ソウタさま!」


マルティム皇帝とフェリシアも駆け寄ってきた。


「二人ともご無事でなによりです」


「お主のおかげで助かった!ありがとう!おぬしは命の恩人だ!」


「いえいえ、俺なんか、そんな・・・」



ん?




「オンギャーーーッ!」


な、なんだ⁉︎


か、身体が思うように動かない!



「「ソ、ソウターッ!」」


ユイたちが目を真ん丸くして、俺を見つめている。


「オンギャ、オンギャ、オンギャーーーッ!」


「ソウタが・・ソウタが、赤ちゃんに・・!」



赤ちゃん?



そう、俺は、赤ちゃんになっていた。






ユイが優しく抱き上げてくれる。


「よーし、よーし、大丈夫ですよ」


「・・ヒック、ヒック」


「泣き止んだわね」


レイナが不思議そうに覗き込んでいる。



「呪いよ」


シスが俺たちのもとへやって来た。


「どんな効果が現れるか私にも分からなかったのだけれど、これが『魔薬』に込めた魔王の呪いなのよ。死ななかっただけ運が良かったわね」


「その呪いは、どうしたら解けるのですか⁉︎」


「・・・私にも分からないわ」


おい!おい!おい!それじゃ、俺は一生このままってことか⁉︎い、いやだーッ!


「オンギャーーーーーッ!」


「また泣き出したわね」


「だから、『この薬は飲まないでね』と言ったのだけれど・・・」


そんな薬、作るんじゃねぇーっ!


「オンギャ、オンギャ、オンギャーーーッ!」


「よーし、よーし、いい子いい子」


それにしても、ユイの、その、あの・・柔らかい胸が、なんとも気持ちがいい・・・。


「・・ヒック、ヒック」


「また泣き止んだわね」



「その呪いの解き方については、帝国をあげて調べさせよう」


さすが、皇帝マルティム!それにしても、呪いを込めた張本人のシスが、解き方を知らないとは・・まいったな。


「お父様、わたくし、ソウタさまが元に戻るまで、お世話をさせていただきたいと思います」


フェリシアまで・・うぅ、ありがとう!



こうして、俺の『赤ちゃん生活』が始まったのだった。

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