第12話 教皇の正体と巨大剣

「クソッ、なんで俺が牢屋にぶち込まれなきゃならないんだよ!」


「大変なことになってしまいましたね!」


服の胸ポケットに隠れていたミーアが出てきた。


「子供も行方不明になっているし、あの教皇、怪しくないか?」


「優しそうな顔してましたが、目が怖かったです」


牢屋の前には、常に守衛が見張っていて、うかつに行動できない。このままだと教皇の言うとおり、明日には処刑されてしまう。なんとか逃げ出す方法を見つけないと・・。


「ソウタさん、わたしが牢屋の鍵を盗んできましょうか?」


「いや、ダメだ。盗んできたところで、これだけ守衛に張り付かれていたら、逃げ出すチャンスはない」


「どうしましょう・・」


牢屋の窓からは月明かりが差し込んでいる。俺は、おもむろにズボンのポケットに手を突っ込んだ。


「ん?これは・・!」


いい案が思い浮かんだぞ!


「ミーア、頼みがある!」






「・・(やはり怪しいですね)」


「・・・(こんな夜更けに、どこへ行く気かしら)」


教皇ジュダは建物の裏手の小道を一人で歩いている。それを尾行するのは、ユイとレイナだ。


「・・(見て!あれ!)」


林に囲まれた場所には石造りの祭壇があり、その上には魔法陣のようなものが描かれている。


「お母さん、助けて・・」


「おうち帰りたいよ・・」


6人の子供たちが縄で両手を縛られ、木にくくり付けられていた。


「子供たちよ、泣く必要はありませんよ。あなたたちは、神聖な神への供物として、その命を捧げるのですから」


「いやだ、死にたくない!」


「助けて!お父さん!お母さん!」


ジュダは子供たちを祭壇の上に連れてきた。


「神よ!この子達を生贄に捧げます!そして、我にさらなる力をお与えください!」


ジュダの声が辺りに響きわたる。


「そこまでです!ジュダ13世!」


「まったく悪い趣味だわね!」


しかし、それをさえぎるようにユイとレイナが飛び出した!


「ほほぉ。つけられてしまいましたか」


「子どもたちを解放しなさい!」


ユイは鞘から剣を抜いた。


「見られたものは仕方ありませんね。あなた方もここで死んでもらいますか」


ジュダは両手を広げた。


「アニメイトデッド‼︎」


呪文に呼応して、土の中から死者が湧き出てくる!


「アンデッド⁉︎」


「数が多いわね!」


「ははははは!神に逆らいし者よ、死者の餌食となるがよい!」


アンデッドたちは一斉に、ユイとレイナに襲いかかってきた!


「はぁあぁあぁ!シャイニングダスト‼︎」


ユイの剣がアンデッドを切り裂く!


「これでも喰らえっ!ホーリーショット‼︎」


レイナのアクアブラストガンから、勢いよく水が放出された!それは、対アンデット用に転換された聖水だった!


「グオォオォオォオォ‼︎」


「どんどん土から湧いてくる!キリがないわね!」


「一気に殲滅します!レイナはわたしの後ろに下がってください!」


そう言うと、ユイは剣を胸のあたりに掲げた。


「彷徨える亡者の魂よ、天に召されよ!エクソシズムサンクチュアリ!」


光が辺りを包み込む!そして、その光に吸収されるようにアンデッドの体は崩れていった。


「白魔法⁉︎・・その目のやり場に困る格好に誤魔化されていましたが、もしや、あなたはホワイトナイトですね⁉︎」


「神に仕える者でありながら、子どもを生贄にするとは⁉︎ジュダ13世、何を考えているのですか⁉︎」


「・・ふふふふ。いいでしょう、私の真の姿をお見せしましょう」


ジュダの身体から闇の瘴気があふれ出す!


「ぐぉおぉおぉおぉ‼︎」


どんどん肥大化していったジュダの身体は、もう『人』のそれとは違っていた。昆虫のような6本の足を持った下半身に、4本の腕が生えた上半身。その姿は、まるで、ヒトとむし、そして魔獣を足したような姿だった!


「こ、これは⁉︎」


「なんなのよ、これ⁉︎」


「フハハハハハッ‼︎暗黒魔導士より与えられし、この力!絶大なり‼︎」


「暗黒魔導士⁉︎」


「シャーーーーーッ‼︎」


ジュダの口から蜘蛛の糸のようなものが吐き出される!


「クッ!」


ユイは素早く剣を振るって、その糸を断ち切った。


「レイナ、気をつけてください!あの糸に捕まったら身動きが取れなくなりますよ!」


「そ、そうね!」


ガガガガガッ‼︎


ジュダが凄い勢いで突進してきた!


ユイは、横にかわしながら剣をくり出す!


「はっ!」


バサッ‼︎


ジュダの足を一本斬り落とす!そこに、レイナの火炎魔法!


「ファイアーボール‼︎」


ボォッ!ボォッ!ボォッ!


「グワァアァアァ・・アァ・・‼︎」


3発の火の玉がジュダの胴体に直撃した!


「やったわね!」


「まだ来ます‼︎」


「シャーーーーーッ‼︎」


「くっ‼︎」


「キャアァーッ!きっもッ‼︎」


ジュダの吐いた糸はユイとレイナを直撃し、身動きを奪った!


「フハハハハハッ!つーかまーえたーぁ!」


糸に粘着されたユイとレイナを両手に取って、ジュダは顔を近づける。


「こちらは果物に例えるなら『桃』で、こちらは『苺』ですねぇ。どちらも美味しそうだ」


ジュル、ジュル・・。


ヨダレを垂らしながら、舐めるように見ている。


「くっ・・・‼︎」


「キモいのよ!この変態クモーッ‼︎」


「どちらからも、処女の匂いがしますねぇ。これは一気に喰ってしまうのも、もったいないですねぇ」


そう言うと、ジュダは下半身から触手を伸ばしてくる。


「二人とも苗床なえどこにして、わたしの子を産んでもらいましょう。まずは、こちらの露出狂のホワイトナイトに植え付けましょうか。フヒャヒャヒャヒャ!」


触手がユイの下腹部を撫で付ける。


「くっ、や、やめろ!」


・・・た、助けて、ソウタ・・・




ビュオッ!


崖の上から飛んできたダガーは、ジュダの触手を切断した!


ブシューーーーーッ‼︎


「グワッ!」


切断部分から血が吹き出す!


「だ、誰だ⁉︎」



「おい、おい、俺の大切な仲間になんてエロいことしてくれるんだ⁉︎」


「「ソウタ‼︎」」


崖の上に立っているのは、そう、この俺!スズキソウタだ!


「クッ、貴様、どうやって牢屋を出た⁉︎」


「レイナ、おまえの魔道具は効果抜群だったぜ!」


ソウタの横に一人の人影が立っている。それは、牢屋の守衛だった!


「お、おまえ、私を裏切ったのか⁉︎」


「守衛に《メルティキッス》使ったのね‼︎ウケるーーー!」


「さぁ、観念しろ!ジュダ‼︎」


「クッ・・・クククククッ、何を言い出すのかと思えば、『観念しろ』ですって?フハハハハハッ!貴様ごとき、弱小冒険者に何ができる⁉︎」


「あれ?忘れたの?俺、アークドラゴンを倒した男だぜ」


俺は指笛を鳴らす。


「シシマルーーー!」


「フゴッ、フゴゴゴゴゴーッ!」


シシマルがもの凄い勢いで荷馬車を引っ張ってくる!そう、俺は『シシマルを連れてきてくれ』とミーアに頼んでいた。そして、牢屋を抜け出したミーアが、シシマルを連れて来たのだ!



シシマルは、崖の手前で弧を描くようにUターンした!遠心力に引っ張られた巨大剣が荷馬車から滑り出し、崖を滑り落ちる!


そして、ジャンプ一番、俺は巨大剣に飛び乗った!


「スケボーもスノーボードもやったことはないが、これが俺の・・『巨大剣ボード』だッ‼︎」

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