第11話 バーサーカーと巨大剣

次に、俺たちはこの街のギルドへ向かうことにした。ここに来るまでの道中でも経験値を稼ぎ、俺は、ついにレベル20になっていた。いよいよクラスチェンジができるのだ。


「やっぱり、みなさん、ジロジロ見ている気がするのですが・・」


ユイは恥ずかしそうにビキニアーマー姿をマントで隠して歩いている。


「そんなことないよ。おまえが立派な騎士で強そうに見えるから、尊敬の眼差しを向けているだけだよ」


「そ、そうですか・・。それならいいんですが・・」


こいつチョロいな。



ハイムの街に比べると冒険者の数も多く、ギルド内は賑わっていた。


「すいません」


「はい、どういったご用件でしょうか?」


「えーと、クラスチェンジしたいのですが?」


「クラスチェンジですね。今は《剣士》でいらっしゃいますので、次になれるのは、《ナイト》、《バーサーカー》、それから、《レンジャ・・」


「《バーサーカー》で!」


「あ・・はは・・、もう、決めてらっしゃったんですね。かしこまりました。それではご登録いたします」


俺はバーサーカーになった。



「もう終わったんですか?」


「あぁ」


「なんだか、さっきより自信に満ち溢れているように見えるわね」


「目の前に敵がいるからブった斬る。ただそれだけだ」


「完全に自分の世界に入っているわね・・」



シシマルの手綱を引きながら移動中のことだった。突然、男三人組に囲まれた。


「おいっ!おまえら、ちょっと待て!」


「その荷馬車の荷物をここに置いていけ!」


「へっへっへっ」


こんな街中でも盗賊がいるんだな。奴らはダガーをチラつかせて脅してきた。


「だっる!邪魔よ、あなたたち!」


レイナの言葉に、盗賊達は眉をひくつかせる。


「威勢がいいな、お嬢ちゃん。ケガしたくなかったら言うことを聞きな」


「誰がお嬢ちゃんよ!あたしは大陸一の・・」


「俺がやる」


レイナの言葉を遮って、前に出る。ちょうどバーサーカーにクラスチェンジしたところだ。試し斬りには、もの足りないが、まぁ、いいだろう。


俺は荷馬車の上の巨大剣のつかを右手で握った。そして、左手で盗賊たちを手招きしながら、こう言ったんだ。


「いいぜ。かかってきな」


「ぐっ、こいつ、ただもんじゃねぇな!野郎ども、ぬかるんじゃねぇぞ!」


「バーサーカーになって気が大きくなってますね」


「ソウタさん、頑張ってー!」


「まるで別人ね」


「俺の剣は『なまくら』だ。死にそこなうと痛ぇぞ」


「クッ、野郎ども、やっちまえ!」



俺の剣は・・・。


持ち上がらなかった。



気がつくと、ユイに抱きかかえられていた。


「大丈夫ですか⁉︎」


「ユイが盗賊どもを追い払ってくれたわよ」


どうやら、盗賊三人組にボコられたようだ。もっと早く助けに入ってくれよ!


「くっそー!なんで、持ち上がらないんだ⁉︎バーサーカーにクラスチェンジしたってのに!」


「ソウタさん、もしかしたら、まだレベルが足りないんじゃないでしょうか?」


クラスチェンジして、たしかにステータス全体が上がった。だが、この重さの剣である。まだまだ【力の強さ】が足りないということなのか。


「さっき、片手で持ち上げようとしてたわね。今度は両手でやってみたらどうかしら?」


「たしかに!それは一理ある!」


俺は両手でつかを握る。


「いくぞ!」


「「「フレッ、フレッ、ソウタ!ガンバレ、ガンバレ、ソウタ!」」」


「はぁあぁあぁあぁあぁ‼︎」


「「「おっ、おぉおぉ‼︎」」」


「上がってます!上がってますよ‼︎こ、拳一つほどですが、持ち上がってますよ!」


「す、すごい力ね!さすが、バーサーカーだわ‼︎」


「ソウタさん!すごいですー!」


「はぁあぁあぁ・・あぁ・・あぁ・・」


ドスン!


拳一つ分くらい持ち上がったらしいが、今の俺だとこれが限界だ。構えられない以上、まだ戦闘では使えないな。とりあえず、みんなの力を借りなくても、荷馬車に載せたり降ろしたりなどの場所移動くらいはできるようになったってところか。




翌日。


今日は、目的地である教皇領サザンクロスへ行く。サザンクロスは、このセントアンジュの街から北へ少し行ったところにある。


出発の準備をしていると、小さな男の子が俺たちに声をかけてきた。


「お兄ちゃんたち、サザンクロスへ行くんでしょ?だったら、お願いがあるの」


「お願いとは何ですか?」


ユイが話しを聞く。


「僕のお姉ちゃんが、教皇さまのところへ行ったきり、帰ってこないの。お友達のリンちゃんも。だから、見つけたら、一緒に帰ってきて欲しいの」


「・・・。わかりましたよ。もし、見つけたら、連れて帰りましょう」


「うん!ありがとう!」


「どういうことだ?このあたりで子供が消えてるってことか?」


「神隠しでしょうか。調べてみる必要がありますね」




サザンクロスは、周りを崖に囲まれた窪地にあった。


城壁の入り口には門番がいる。


「なにやつ⁉︎」


「あ、すいません、教皇さまに会いに来たのですが?」


「ダメだ!誰でも通すわけにはいかん!」


「わたしはフローディス王国の騎士団の者です。教皇ジュダ13世さまに接見させていただきたいのですが?」


「・・・!これは、失礼いたしました。どうぞ、お通りくださいませ」


ユイの場合、王女という名を伏せても、王国騎士団というだけで、すごい影響力だな。『神殺し』のレッテルを貼られている俺とは大違いだ。




「これは、これは、ようこそいらっしゃいました」


教皇ジュダ13世は、俺たちを暖かく迎え入れてくれた。


「あなたがアークドラゴンを倒したスズキソウタさんですね」


「は、はい。そうです。アークドラゴンは、暗黒魔導士に操られて、街を焼き尽くそうとしていました。だから、俺は街を救うために仕方なくアークドラゴンを倒したんです!だから『神殺し』は誤解なんです!」


「なるほど。それは大変でしたね。わざわざ誤解を解くために、よく来られました」


「わかってくれたんですね!ありがとうございます!」


「えぇ、よくわかりました。衛兵、この者を捕らえよ!」


俺は、傭兵に拘束された。


「えっ⁉︎なんでですか⁉︎今、わかったって言ったじゃないですか⁉︎」


「『神殺し』はいかなることがあろうとも、許されるものではありません!その命をもって懺悔してもらいます!」


「や、やめろ!放せ!」


「ちょっと待ってください!ソウタに罪はありません!わたしが証人になります!」


「そうよ!ソウタがあのバケモノを倒さなかったら、街は全滅していたのよ!」


ユイとレイナが割って入ってきた。


「何を言ってもムダムダムダです!衛兵、他の者はここから追い出せ!」


「何をするのですか⁉︎放しなさい!」


「触るんじゃないわよ!この変態オヤジ!」


ユイとレイナは教皇領を追い出され、俺は囚われの身となった。

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