第9話 神殺しの罪と巨大剣
アークドラゴンを倒した俺は、大量の経験値を獲得してレベル3から一気にレベル18まで上がった。そして、それで獲得したステータスポイントは、すべて【力の強さ】に振ったんだが、今回も巨大剣は持ち上がらず・・。
だがしかし、まだ望みはある。レベル20になると、クラスチェンジができるようになるのだ。そこで、バーサーカーにクラスチェンジしたら、きっと巨大剣を振れるようになる。なぜなら、某神作マンガの主人公が『狂戦士(=バーサーカー)』なのだから。
というわけで、俺たちはギルドへ向かっていた。
「なぁ、もうケガはいいのか?」
「はい。この街のプリースト達が集中的にケアしてくれたおかげで、すぐに回復しました。・・ただ、鎧は溶かされてしまい、使いものにならなくなってしまいましたが・・」
「それは、新しいものを新調したいところだな。なにせ、ユイはウチのパーティの守りの
「そうよ。盾役がしっかりしてないと、後方から安心して魔法も使えないんだから」
ひょんなことから集まったパーティだが、かなり強力なメンバーがそろったのではなかろうか。
盾役もこなし物理攻撃力もあるホワイトナイトのユイに、遠距離から強力な火炎魔法を使うアークウィザードのレイナ。そして、近接攻撃特化のバーサーカー、この俺、スズキソウタだ。
なかなか隙のないメンバーがそろったもんだな。この調子でいけば、かなり早い段階で魔王のところまで行けそうな気がする。
ギルドの建物に入ると、みんなが俺たちに視線を向けてきた。
「あの人だぜ、アークドラゴンを倒したのは!」
「あの小さい体で・・・信じられねぇな」
「この国一の剣士かもしれないぞ!」
まぁ、そりゃそうだろ。『神の化身』とか言われるドラゴンを倒して、この街を救った英雄だ。みんな、その目に俺の姿を焼きつけておいた方がいいぜ、なんてな。ガハハハハ!
「あのぉ、お金ないんで、報酬高めなクエストとかありませんかね?」
「あっ、スズキソウタさん!この度は、このハイムの街を救ってくださり、ありがとうございました!」
「いえいえ、冒険者として当たり前のことをしたまでですから」
「それで、大変、言いにくいのですが・・」
キタキタキター!巨額の報奨金の話しか⁉︎
「なんでしょう?」
「あなたをこの街から追放します!」
「へ?」
「『神殺しの罪』で、あなたを追放しなければならないのです!」
「神殺しーーっ⁉︎・・えっ⁉︎えっ⁉︎意味わかんないんですけど!ドラゴン倒して街を救ったのに、追放だなんて、意味わかんないんですけどぉ⁉︎」
「アークドラゴンは、この地方では『神の化身』として
は、はぁ⁉︎ふ、ふざけんなよ⁉︎神だかなんだか知らないが、あのままドラゴンを放置してたら、この街は全滅してたじゃないか⁉︎
「ただ、これは、私を含め、この街の人々の意思ではありません。アーク教の教皇ジュダ13世からの
「教皇⁉︎そ、そんなぁ・・」
「教皇には誰も逆らえないので、私たちにはどうにもできません。ソウタさんには本当に感謝しています。だから、これ、少ないですが・・」
ギルドのおねえさんは、金貨の入った小袋をくれた。
「街の人達からです。旅の資金にしてください」
俺たちは街を追放された。
シシマルの荷馬車に揺られながら、あてのない旅が始まった。
「せっかく、せっかく、みんなのためにと思って、頑張ったのに・・グスン。なんて、しがない世の中なんだ!」
「ソウタさんは悪くないです!」
「薄情な連中よねぇ、あんな街、追い出されなくったって、こっちから出て行ってやるわよ!」
「街の人達が反対したとしても、教皇の権力は絶大ですからね。誰も逆らうことはできません」
・・まぁ、よく考えたら、俺ももうレベル18だ。そろそろ、かけ出し冒険者の街も卒業していい頃だったのかもしれない。ここは気持ちを切り替えて、次の街を目指すとでもするか。
「なぁ、みんな、この先どうしたらいいと思う?」
「教皇に会って、誤解を解くべきではないでしょうか?アーク教は信者も多いので、このままにしておいては旅に支障をきたす恐れがあります」
「たしかに、そうだな。で、その教皇てのは、どこにいるんだ?」
「教皇領サザンクロスです」
ユイの話しによると、サザンクロスは北東の森を越えたところにあり、お膝元には街もあるという。
「よし、サザンクロスを目指そう!」
シシマルの荷馬車に揺られながら、二日が過ぎた。野営をしながらの旅だ。ハイムの街の人々からもらった金貨のおかげで、食料などをたっぷり買い込んだので、しばらくは空腹に困ることもない。
森に入った頃、レイナの魔道具の話しで盛り上がった。
「おまえの発明した魔道具って、どんなものがあるんだ?」
「えっへん!よくぞ、聞いてくれたわね!いろいろ珍しいものがあるんだけど、最近のオススメだと《魔力バズーカ》なんかは傑作だわよ」
「《魔力バズーカ》?なんだよ、それ?」
「魔力はあるけど魔法は使えない職業の人っているでしょ?そんな人のために、その魔力を充填して、撃ち出すことができる魔道具よ!」
「おぉ!それは、すごいな!まさに、俺にピッタリのアイテムじゃないのか⁉︎」
「そのとおり!威力もなかなかのものよ。ただ、まれにアタマパッカーンになっちゃうけどね」
「ゲッ、なんだソレ⁉︎怖くて使えんわ!」
「あとは・・《メルティキッスの呪文書》なんてどう?」
「呪文書ていうと、魔法使い専用の魔道具なのか?」
「そんなことはないわよ、誰でも使えるように改良してあるから。ただ、1回使うと呪文書の効果はなくなるわね。ちなみに、効果としては、この呪文をかけられた者は【魅了状態】になって、相手から離れられなくなるのよ」
「へぇー、そうなの?じゃ、ある分、全部ください」
「ちょっと、そんなの何に使うんですか⁉︎」
「何に使う?そんなの決まってんじゃん。魔物倒すためだよ、やだな、ユイちゃんは、変な妄想して。ははははは」
「今、在庫は3個だけね」
「全部ください」
「絶対、何かたくらんでますよね!」
ーメルティキッスの使い方。まず、呪文書を読む。次に、ターゲットに向かって投げキッスをする。
ポヨヨン。
俺の甘ーい投げキッスは、ユイに向かって飛んでいった。
「うぉっとーー‼︎な、なにするんですか⁉︎」
「ユイちゃん、避けたらダメだよ。1個ムダになったじゃないか」
「この男は⁉︎油断も隙もありませんね!」
小一時間、三人でたわいもない話しをしていたが、ミーアの声で現実に戻った。
「ソウタさん!魔物です!」
指さすほうを見ると、1匹のジャッカルが追って来る!
「ジャッカルか⁉︎俺にとっては強敵だけど、やれないことはない!レベルも上げたいし、ここは俺一人でいく!」
「あのジャッカル、ソウタさんの《メルティキッス》にかかったみたいです!ちなみに、オスです」
オスとか、いらない情報っ‼︎
「仕方ない!かかってこい!」
俺は荷馬車を降りてミニマムダガーを構える。
「せやっ!」
やや手こずったが、無事、ジャッカルを倒すことができた。
ホッとしたのも束の間、今度は奥からゾロゾロとジャッカルの群れが現れた!
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