第8話 新パーティ誕生と巨大剣

「や、やったの・・か?」


アークドラゴンの首をブッた斬った巨大剣は地面に突き刺さり、俺はそれにぶら下がっている状態だった。


「ソウタ・・」


ユイのか細い声が聞こえてきた。


「ユイ!」


すぐにかけ寄って抱きかかえた。


「大丈夫か⁉︎」


「やりました・・ね。まさか、あの剣・・を、振る・・とは・・」


ユイのケガの状態は深刻だったが、ミーアの応急処置のおかげで一命は取り留めている。


「わたし達が手当てしましょう!」


街のプリースト達がかけ寄ってきた。



外には、100人、200人、いや、それ以上の人々が出て来ていた。


そして、俺たちを見守っていた群集は大歓声を上げた!


「ワァーーーッ‼︎」


「何という勇敢な若者なんだ⁉︎」


「もの凄い剣でドラゴンを一刀両断したのよ!」


「街は、いや、世界は、あの若者によって救われたのじゃ!」


「一撃で神の化身を倒してしまうなんて、まさに神以上だわ!」


「どれほど強いのか想像できないレベルだな!」


「ボクもあのお兄ちゃんみたくなりたい!」


「なぜ、あれほどの剣士が、このかけ出し冒険者の街にいたんだ⁉︎それが最大の謎だ」


一斉に称賛の声が、俺へと向けられた。


「な、何ということだ!アークドラゴンが、い、一撃で⁉︎一体、奴は何者なんだ⁉︎クソッ・・・この場は、退散するしかないか・・」


「待て!ツダッ!」


ツダの姿は薄くなり、やがて消えた。


「クソッ、逃したか⁉︎」


「『逃したか』じゃないわよ。むしろ、逃げてくれて助かったわね」


そこにはギルドのおねえさんに抱きかかえられたレイナの姿があった。


「おぉ、目が覚めたのか?」


「そこのミーアとかいう妖精に回復してもらったわ」


「ミーア、よくやったぞ!」


「はい!頑張りました!さすがに、ヘトヘトですが・・」


「それにしても、あなた、まぐれとはいえ、よくあの剣を振ったわね」


「言ったろ⁉︎この巨大剣をぶん回して、伝説のドラゴンの首、ぶった斬るって!」


「『ぶん回し』というよりは、ぶん回されて、ぶら下がっていただけのようにしか見えなかったけど?」


「うっ!よく見てたな」


「いずれにしても、あたしの禁呪さえ受けつけないあのバケモノを、よく倒したわね。それは認めてあげる」


「まぁ、そのチャンスを作ってくれたのはシシマルだけどな」


「フゴッ、フゴゴゴッ」


俺はシシマルの頭を撫でてやった。


「それにしても、その巨大剣、想像はしていたけど、もの凄い破壊力ね!ますます興味が湧いたわ!」


「これはレア度【UR】だからな。かなり攻撃力が高いんだと思うよ」


「ゆ、ゆ、ゆ、【UR】⁉︎」


「あれ?言ってなかった?そうだよ、ミーアに鑑定してもらったら、最高レア度の【UR】だって」


「・・・な、なんなのよ、それ⁉︎そんなの、あってはならないものよ‼︎世界のバランスが崩れるじゃないの⁉︎」


「やっぱり、凄いものなんだろ?ははは、売らないからな」


「・・・・・(スズキソウタ、『この世界を変える者』だというの⁉︎)」




翌日、俺は宿屋のベットの上で、少し遅い朝を迎えていた。


「はーあっ、この世界でこんなゆっくりできるとは・・」


そんな朝の静けさは、突然の来訪者により、あっさりと破られてしまうのであった。


ダダダダダッ!ダダダダダッ!


バタン!


「ん?」


「わ、わたしをソウタのパーティに入れてください!」


「あ、あたしをソウタのパーティに入れてください!」


ユイとレイナだった。


「おいおい、二人そろって、いきなりどうしたんだ⁉︎」


と言って、立ち上がった俺の姿はパンツ一丁だったのである。


「な、な、な、なんですか⁉︎その格好は⁉︎セクハラですか⁉︎」


「キャアァーーーッ!変態オヤジーーー!」


「だ、だ、誰が変態オヤジだっ⁉︎勝手に入ってきたおまえらが悪いんだろ!」


不可抗力だ。不可抗力なのに、半殺しにあった。


原因は『棒のようなもの』だ。健康な若い男子であれば、朝にその『棒のようなもの』がテントを張るのは、当たり前のことなのである。それが二人には理解できなかったらしい・・・クッ、ガキどもが!



「で、急にどうしたんだよ?二人ともあれだけパーティには入らないって言ってたくせに」


「もうご存知のとおり、わたしはフローディス王国の末裔まつえいです。そして、わたしたちは暗黒魔導士を追っていました」


ユイの話しは、こうだった。


世界各地で起こっている不可思議な事件、天変地異、その背後には暗黒魔導士の影があるという。その真相を調査するべく、王国は各地に騎士団を派遣。


そして、今回判明したのが、暗黒魔導士は王女であるユイの命を狙っているということ。つまりは、王国の転覆を目論もくろんでいるということなのだ。


「ツダという暗黒魔導士は、アークドラゴンを倒したことで、ソウタの命も狙ってくるでしょう。しかも、王女であるわたしも一緒となれば、なおさらです。逆にいうと、やつを倒すチャンスでもあるということです」


「なるほど。たしかに、こちらから探す手間は省けるってわけか」


「・・で、レイナの方は、なんでパーティに入る気になったんだ?」


「あたしは大陸一の大魔導士だけど、それは副業で、本業は魔道具の発明家なの」


「え⁉︎そうなの⁉︎」


あれだけの火炎魔法を扱えるのに、副業とは・・。


「それで、出会ってしまったのよ、この人生を賭けてでも研究したい物に!」


「まさか・・⁉︎」


「そうよ、ソウタの巨大剣よ!こんなにも興味深い品物は初めてだわ。譲ってくれないなら、ついて行くだけよ」


「ははは・・あのなぁ・・」


二人とも真剣な眼差しだ。



「二人とも、そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、残念ながら、それはできないんだ」


「えぇ!な、なんでですか⁉︎わたしの寝相が悪いからですか⁉︎」


「なんでよ⁉︎ソウタの趣味がロリコンだって見抜いたから⁉︎」


「誰がロリコンじゃーっ⁉︎お、俺は年上の女性の方が好きだもんねーだっ!それから、寝相が悪くても気にしないよ♡」


「「じゃあ、なんでっ⁉︎」」


「実は、今日で俺の冒険は終わりなんだよ」


そう、女神さまとの約束『伝説のドラゴンを倒す』というミッションをクリアしてしまったのだ。こんなにも早くクリアできるなんて、自分でも驚いている。


ただ、一つ心残りなのが、こんな素晴らしいパーティメンバーにめぐり逢えたのに、ここでお別れしなければならないことだ。本当なら、これから心躍る大冒険が始まっていたのかもしれない。


すべては俺が強すぎたせいか・・。


「さぁ、ミーア!女神さまのいるところへ連れて行っておくれ」


「え?ソウタさん、何を言ってるんですか?」


「何って、そりゃ、伝説のドラゴンを倒したんだ、もう、ミッションクリアだろ?」


「たしかに、アークドラゴンは『神の化身』といわれる伝説のドラゴンですが、ソウタさんに倒していただきたいのは、『真鍮しんちゅうのドラゴン』ですよ」


「へ?」


「なんか、いつも『伝説のドラゴン』とばかり言ってるから、気になってましたが、やっぱり勘違いしていたんですね」


いっ⁉︎・・そうだった!思い返すと、女神さまは『魔王を倒した後でないと行けない洞窟にいるドラゴン』とか言ってましたもんね。はい、私は勘違い野郎でございます。


「ユイ、レイナ、今日からヨロシク‼︎」


「「はぁ。」」

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