第19話 神官モルドバと巨大剣
ユイに斬られた神官モルドバは、片膝をついた。
「さぁ、観念しろ、モルドバ!そして、おまえの背後にいる暗黒魔導士は、何を企んでいる⁉︎」
「ははは・・いいだろう、冥土の土産に教えてやる!」
モルドバは大きく目を見開らいた。
「暗黒魔導士の目的は、闇の眷属となった『覇王オズマ』を復活させること!」
「『覇王オズマ』だと⁉︎」
「有史以来、この世界を一つにした最初で最後の王、それが『覇王オズマ』だ!」
「あぁ、アイツね。知ってるわよ、同時代にいたもの。なんか暗いやつでね、いつも一人でブツブツ何か言ってるようなヤツだったわ」
シスがつぶやく。
「・・・・・。『覇王オズマ』は、世界を一つにしたが、権力という魔物に取り憑かれ、反抗する多くの人々を虐殺したのだ!そして、暴虐の限りを尽くしたのち、行方不明となり、その姿を見ることはなくなったのだ!」
「そうそう、アイツ、やりたい放題だったからね、とりあえず、私が消したのよ」
「・・・・・。お、お、おまえ、誰なんだ⁉︎さっきから、いいところで口をはさみおって!せっかく、おどろおどろしく説明してやってるのに台無しじゃないか⁉︎」
「え?私?私は魔王のシスよ。あ、もう引退したから、元魔王ね」
シスは町娘の姿から露出狂のような魔王の姿に戻った。
「へ?ま、魔王?・・だと⁉︎」
「モルドバさんよ、もうあきらめたほうがいいぜ。魔王もいるし、ホワイトナイトもいるし、アークウィザードだっている。もう、おたくに勝ち目ないって。あと、話しはよくわからん」
「ぐくくっ、話せって言うから話してやったのに・・・。もう許さんぞ!この暗黒魔導士に与えられし闇の力、とくと見よ‼︎」
そう言うと、モルドバの体は肥大化し、姿を変えていく!2本の角と体毛が生え、それはまるで巨大なミノタウロスのような姿になった!
「グゥオォオォオォオォッ‼︎」
地響きのような咆哮だ!
「な、なんなんだ⁉︎あれは⁉︎」
荒れ狂うその巨大な角で、一瞬にして、ユイを跳ね飛ばし、シスも跳ね飛ばした!
「くっ‼︎」
「アァーーーッ‼︎」
二人は吹き飛ばされて岩に激突した。
「ユイーッ!シスーッ!」
「グゥオォオォオォオォッ‼︎」
さらに勢いをつけて、今度は、俺をめがけて突っ込んでくる!
「ソウタさん!逃げてください!」
ミーアの声が聞こえたが、体が動かない!ダメだ、死ぬ!・・そう直感した時だった!
「ミゼラブルガード!」
炎の盾を構えたレイナが、俺の前に立った!火炎魔法の盾だ!
ガッ‼︎
「アァッ‼︎」
モルドバの角に突かれ、炎の盾は爆散し、レイナの体は空高く突き上げられた!
「レイナーーーッ‼︎」
俺は落ちてくるレイナの体を受け止めた。
「レイナ!大丈夫か⁉︎」
「うぅ・・」
レイナは口から血を流し、瀕死の状態だった。
「ばかやろう!なぜ、俺をかばった⁉︎」
「うぅ・・ソ、ソウタ、・・し、死な・・ない・・で」
そう言うと、指先で俺の額をちょんと押した。
ガクッ。
レイナは、それを最後に動かなくなった。
「ソウタさん!ミーアができる限りのことはします!だから、ソウタさんはモルドバをなんとかしてください!」
「・・・・・」
「グハハハハッ!思いしったか!貴様らごとき人間など羽虫の如し!ここで全員、プチッと潰してやるわ!」
「・・・おい、モルドバ。おまえ、絶対、やっちゃいけないことやってくれたな。この世界に来てから初めて
「クックッ、おまえみたいな最弱ヤロウがキレたところで・・・んっ⁉︎」
ゴォオォオォオォオォオォ‼︎
俺の髪は逆立ち、体のまわりからオーラが吹き出している。それは、スーパーヤサイ人ばりの狂戦士の闘気だった!
「ほほぉ、バーサーカーか。しかし、レベルが低いな!そんなんじゃ俺は倒せんぞッ!」
モルドバは一瞬低く構えたかと思うと、土を強く蹴って、突進してきた!
「死ねぇえぇえぇえぇッ‼︎」
「シシマルーーーーー!」
「フゴゴゴゴッ‼︎」
断崖の上で待機していたシシマルが猛ダッシュし、落ちる手前でUターンした!荷馬車は、あたかも車がドリフトするかのごとく弧をえがいて横滑りする!そして、その遠心力で巨大剣が崖下へと飛び出した!
断崖の上から落ちてくる巨大剣が、スローモーションのように見える。
俺は、足下の岩に駆け上り、大きくジャンプした。そして、空中で巨大剣の
「グゥオォオォオォオォッ‼︎」
突進してくるモルドバを斜め下に確認し、そのまま振り下ろすように落下する!
チャンスは一度だ!巨大剣が持ち上がらない以上、外したら次の攻撃はできない。すべてをこの一撃に込める‼︎
「うぉおぉおぉおぉおぉおぉ‼︎」
巨大剣の落下に気付いたモルドバは、身をよじって、ギリギリのところで回避した!
「グォオォッ!」
ドガッ!
巨大剣が地面に突き刺さる!
「しまった!外した!」
不思議だった。いつもならビクともしない巨大剣だが、この時は、もう一度、振れる気がした。地面に突き刺さった反動も利用して、俺はもう一度、巨大剣を振り上げた!そして、わずかに横にずれたモルドバの頭めがけて振り下ろす‼︎
「おりゃあぁあぁあぁあぁーーーッ‼︎」
斬‼︎
大きな半円をえがき、巨大剣はモルドバの頭を正面から真っ二つに割った‼︎
「グゥオォオォオォオォッ‼︎」
断末魔の叫びと血飛沫を上げながら、モルドバは倒れた。
「はぁ、はぁ・・」
一瞬、放心状態になった。
「レイナ!」
倒れているレイナの体を抱きよせると、その目が開いた。
「フッフッフッ、【連撃】の補助魔法が効いたみたいね」
「え?」
実は、レイナは、俺の額に触れた時、【連撃】の補助魔法をかけていたのである。巨大剣を持ち上げられなくても、一度振ることができれば【連撃】は作動するらしい。
・・ていうか、そんな補助魔法があるなら、早く言ってくれよ!そしたら、今までも、もっと楽に戦えたかもしれないのに。
レイナは瀕死の状態だったが、ミーアがすぐに回復魔法を使ったおかげで大事には至らなかった。いつも思うが、このフェアリーは要所要所で大きな仕事をする。
ユイとシスも無事だった。
ユイは、ビキニアーマーのおかげで、急所は守りつつ、素早い動きで攻撃を受け流し、ダメージを最小限にとどめていたのである。シスは、まともに喰らってしばらく動けなくなったが、自己回復能力により復活した。
シシマルの荷馬車に揺られながら、一路、ドルガニア城へ戻る。
「今回は、みんな
「ソウタが早く巨大剣を出していれば、こんなボロボロにならずに済んだのに!」
レイナが頬を膨らまして言う。
「切り札は、最後の最後までとっておくのがお約束だろ?それに、モルドバの口から暗黒魔導士の情報も聞き出さなければならなかったし。」
「そういえば、モルドバは『覇王オズマ』がどうとか言ってましたね?」
「あぁ。シス、そいつは、そんなヤバいやつなのか?」
「うーん、どうかしらね。ただ、闇の眷属として転生したら、ちょっと厄介かもしれないわね」
「その闇の眷属ってなんなんだ?」
「冥界の支配者たちよ」
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