第3話 ギルドと巨大剣

「ここが武器屋か」


俺たちは、まず、武器屋にやってきた。目的はもちろん、この最高レア度のゴミ武器を売るためだ。


「あぁ、やっぱり売ってしまうんですね・・」


ミーアは、この巨大剣の売却には大反対している。



「いらっしゃい」


「すいません、買い取ってもらいたい武器があるんですが・・・」


「どんな武器だい?」


「ちょっと重すぎて、店の中まで運んでこられないんですが・・ははは・・」


武器屋の店主に、わざわざ店外に出てもらって鑑定してもらう。


「こ、こいつはスゲェや!これは剣なのか?」


「この世に、一つしかない伝説、いや、神話級の剣だよ」


「なるほど・・」


店主はマジマジと見ている。


「それにしても、どこでこんな剣、手に入れたのですか?」


「武器ガチャ、あ、いや、たまたま落ちてたんだよ」


「こんな代物、そうそう落ちてないと思いますが・・。どこかの巨人が落としていったのでしょうか」


ユイは不審に思っている。まぁ、仕方のないことだ。


「鑑定結果が出たぜ」


「おっちゃん、いくらだ⁉︎」


最高レア度【UR】の剣だ!国家予算が動くぜ!


「0円だ」


「へ?」


「こいつは、たしかにスゲェ代物だ。信じられないが、レア度も【SSR】より上かもしれん。正直、こんなの見たことねぇよ」


「じゃ、なんで0円なんだよ⁉︎」


「誰も振れねぇ剣だからだ。どんな貴重な品物でも、使う人がいなけりゃ、ただのゴミだからな」


ガーン!・・ですよね。そうなんです。武器として使えるなら、そりゃ売ってませんもん。


「で、でも、おっちゃん、これを溶かして、また別の武器に作り変えるっていう方法もあるんじゃないのか⁉︎最高レア度の武器なんだ、きっと、この素材も珍しいもののはずだよ!」


「すまんが、それも無理だ。こいつの金属は、たぶんアダマンタイトが主成分だと思うんだが、鍛造の段階で手が加えられて、ちょっとやそっとじゃ溶解できないようになってる。これは人間の仕事じゃねぇ。まさに神の創造物としか言いようがないものだぜ」


神の創造物ねぇ・・はははは・・武器屋のおっちゃん、あんたの目は確かだぜ。




「巨大剣、売れませんでしたね!」


ミーアは嬉しそうだ。


「あのなぁ、ダガー1本売っただけじゃ、今夜の晩メシくらいにしかならんのだぞ。どうすんだよ、これから⁉︎」


「そのような事情なら、わたしの分はいいですよ」


「そういうわけにはいかん。それだけは、ごちそうさせてくれ!」


ここで、ユイにまで見放されたら、この冒険は早くも行き詰まる。なんとしても足止めせねば。


「ソウタさん、ミーア、思うんですけど、職業変えたりレベル上げたりしたら、きっと持ち上がるようになるんじゃないですかね?」


「俺も、もしかしたら・・と一瞬考えたよ。しかしだなぁ、こいつは、その想像のはるか上をいってる気がする」


とりあえず、俺たちはギルドへ向かった。




ギルドは街の中央にあった。


「すいませーん」


「あ、ようこそ!冒険者の方ですね」


「はい。あのぉ、冒険者登録したいんですが?」


「かしこまりました。それでは、こちらで、まずステータスを調べてみましょう」


巨大剣の売却失敗で落ち込んだ俺だが、やっぱり楽しいぜ!これぞ、ファンタジーの世界って感じだ!さぁ、俺の驚くべき才能よ、今ここに開示されよ!


「・・ステータスは、普通ですね。あ、【力の強さ】が、平均よりちょっと低いようです」


すぐ絶望。早いよ、早すぎるよ。大剣ぶん回したいのに、【力の強さ】が低いだなんて、もう終了じゃないか!


「あのぉ、リセットとかできませんかね?」


「リ、リセットって何でしょう?」


「ソウタさん、そんなに気を落とさないでください。【力の強さ】なんて、レベルを上げれば、いくらでも増やせますよ」


「あのなぁ、そもそも物理攻撃の才能無いって烙印らくいん押されたようなもんなんだよ!・・もうダメだ、この冒険は、あきらめよう」


「わたしも【力の強さ】は、最初、低かったですけど、クラスチェンジでかなり伸びましたよ」


「え?そうなの?」


「はい。クラスチェンジはステータス全体がかなり底上げされますので」


うーむ、たしかにそうだよな。地道な経験値稼ぎでコツコツレベルアップしていくしかないか。


それに、いつか、この巨大剣を持ち上げられれば、魔王だろうが伝説のドラゴンだろうが、倒すのも難しいことじゃないはずだ。そう、俺は生粋の大剣使い。『モンスターバスター』で数多のモンスターを斬り倒してきた男だ!


「スズキソウタさんのユニークスキルは・・ん?何でしょう?【大剣使い】と出ています」


ほらほらほらっ!キタキタキターーー!【大剣使い】いただきましたーーー!


「それは、大剣が扱えるってことですよね⁉︎」


「はい・・たぶん。今まで見たことのないスキルなので何とも言えませんが・・」


「よっしゃー!ユイ、ミーア!外へいくぞ!」


「あ、ちょっと、待ってください!職業は何にしますか?」


「みなまで言わせるなよ、ギルドのおねえさん!もちろん、剣士だ!よろしく!」



とっとと登録を済ませた俺は、早速、巨大剣の前に来た。


「なんかわかんないけど、力がみなぎってくるような気がする!」


「剣士にジョブチェンジしましたもんね!」


「ジョブチェンジしただけでステータスは変わっていませんけど」


ユイは、いつも冷静だ。


「なんか持ち上げられそうな気がする!」


「頑張ってくださーい!」


俺は巨大剣のつかを両手で握りしめた。


「うぉおぉおぉおぉ!」


微動だにしない。・・・うん、知ってた。ジョブチェンジしただけだもんね。持ち上がるわけないもんね。ただ一つだけ言わせてください。【大剣使い】のスキルって、何の意味があるんだ?


グキッ!


「あ、痛タタタタ・・」


俺は膝をついて倒れ込んだ。腰をやってしまったのだ。


「だ、大丈夫ですか⁉︎」


「無理をしてはいけませんよ」


この剣を持ち上げることが想像できない。レベルをどこまで上げたらいいんだ?


「な、なぁ、ミーア。おまえの鑑定スキルで、どのくらいレベル上げたら、これを持ち上げられるか、調べられないのか?」


「うーん、正確には分からないと思いますが、だいたいの目安なら・・」


そう言って、ミーアの鑑定スキルが巨大剣をスキャンし、必要な【力の強さ】を割り出した。


「たいへん言いづらいのですが、ソウタさんのステータスだと、このままレベルをカンストしても、この剣は持ち上がらないようです」


終わりました。今、俺の冒険は終わりましたわ。短い間でしたが、ありがとうございました。


「・・た、ただ、剣士としての話しです。剣士の上位職のナイトやバーサーカーになったら、また、話しは変わってくると思います!」


ん?バーサーカー・・・。バーサーカー、つまり狂戦士ってことか。


はっ⁉︎狂戦士といえば、某神作マンガのタイトルにもなったアレか⁉︎つまり、バーサーカーなら持ち上げられる!そういうことなのか⁉︎


フッフッフッ、見つけてしまったぜ!この巨大剣を扱う方法がな!【大剣使い】のスキルもあるし、これは、やっぱり運命だったんだ!


「ブツブツブツ・・」


「あまりのショックで、おかしくなってしまったのでしょうか?」


「ソウタさーん!戻ってきてくださーい!」

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