第54話 顔合わせ
ツグナールさんが酒場を去ったあと急に頭の中に声が聞こえてきた。
雪乃様からだ。
『なんだい? なんだい!? エルフとダークエルフを侍らせてまさか、これから楽しもうって言うのかい?』
「あの大丈夫ですか?」
「大丈夫?」
雪乃様の声は他の人には聞こえない。
そして僕も声にしないで会話できる。
「うん、大丈夫! ちょっと考え事があるから、好きな飲み物でも頼んでいいから飲んでいて」
「はい」
「わかりました」
『雪乃様、僕がそんなことするわけないじゃないですか? 』
『本当かな~ なんだいさっきからにやにやしちゃって、全くもう』
『それに、ツグナールさんの話では、300歳越えのもうお婆ちゃんらしいので見かけは兎も角、僕の恋愛相手になるわけないじゃないですか?』
『なんだい! なんだい! それは僕に対する嫌味かい? ツバサくんのバーカ。バーカ』
『ちょっと雪乃様!? あの……僕、雪乃様を怒らせる様な事しましたか?』
『怒ってない……』
『怒ってますよね?』
『怒ってないったら! もう君って奴は……』
『雪乃様、なんでしょうか?』
『いや、何でもない! それならいいや……もう! あ~あっもう。これ以上神託は出来ないみたいだ……それじゃツバサくんまた』
『あっ』
途中で終わってしまった。
「あの……大丈夫でしょうか?」
「平気ですか?」
「大丈夫だから」
僕はアイラとアウラを連れて宿へと向かった。
◆◆◆
「ただいま~」
「お帰りなさい。ご主人様……えっその方たちは誰ですか?」
「お帰りなさい。ツバサ様……お客様ですか?」
「お帰り。ツバサお兄さん!」
僕は今迄の事情を三人に詳しく話した。
「それじゃ、ご主人様、そのお二人も仲間になるのですね。ジークの民と仲良くして大丈夫なのですか?」
「私は構いませんが……私は耳長族ですが? 良いんですか」
「僕もハイエナ族だよ! エルフもダークエルフも僕の事嫌いなんじゃないの?」
マヤさんやターニャさん、エナからしたら、元々嫌われていたから聞いただけなんだろうけど、アイラさんとアウラさんは顔を青くしていた。
「そんな事無いですよ……私はそういうの気にしません……から」
「そうだな、私も気にしないから大丈夫だ……です」
「まぁ、取り敢えず。皆、仲良くやって行こう」
「「「はい」」」
「「はい……」」
アイラさんとアウラさんはかなり心配そうな顔をしていた。
◆◆◆
「それじゃ、さっさとお風呂に入っちゃって、特にアイラさんとアウラさんは綺麗にしてね」
「はい、わかりました」
「はい……」
どうしてアイラさんもアウラさんも絶望そうな顔をしているんだろう?
まぁ良いや。
僕はいつも通りご飯を作るだけだ。
オムライスにサラダにスープ位で良いよな。
一応は二人は服は持っているようだから、それを着て貰えば良い。
交代でお風呂に入り五人は湯上り状態だ。
風呂上りの女の子ってなんだかよいな。
「それじゃ、皆、席に座って」
「あの……私も食べて良いのでしょうか?」
「このテーブルの物を食べて良いのですか?」
「勿論、そうだけど? もしかして好みじゃなかった?」
「いえ、普通は奴隷は床にすわってスープと固いパンとかじゃないんですか」
「そうです」
「ご主人様はそんな事しませんよ!」
「マヤさんの言うとおり。そういう差別はしないから、気にしないで食べて……ほら遠慮しないで座って」
「あっ……はい、ありがとうございます」
「ありがとう」
「僕、お腹空いちゃったよ。ツバサお兄さん……」
「それじゃ、食べよう。アイラさんもアウラさんも足りなかったら言ってね。追加でつくるからね」
「「はい……」」
二人とも緊張しているのかオドオドしている。
まぁ突然の事だから緊張するのも仕方がないか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます