第4話 登録とスキルの考察


「それじゃ、この用紙に必要な事を書いてくれ!代筆は必要ないよな?」


見た瞬間に文字が解った。


異世界特有の翻訳のおかげだ。


名前:クロキ ツバサ

出身:

職業:


何を書けば良いんだ?


「すみません、出身と職業ってどう書けば良いんでしょうか?」


「そうだな、出身は異世界で良いぜ。職業(ジョブ)が無いのか? この世界に来る異世界人の多くはあるんだが、無いなら仕方が無いなら、取り敢えず冒険者と書いて置けば良いぜ」


「解りました、これで良いですか?」


「ああっ、問題無い、それじゃ登録するぜ」


名前:クロキ ツバサ

出身:異世界

職業:冒険者

ランク:F


「よし、出来た、これがお前の冒険者証だ、依頼をこなしてギルドに貢献していけばランクは上がる!頑張れよ!」


これで良いのか?


態々、異世界から召喚したのに、何か成すべき事があるんじゃ無いのか?


「この世界で僕は何もしないで良いんでしょうか?」


「それは別に気にしなくて良いぜ!選んだ神によっては使命を課されるが、ツバサは神を選んでいない。王都や帝都と違い、王や帝王から依頼される事も無い! 貧乏村だから特に優遇されることはない。その代わり義務もない自由にして良いんだ」


「そうですか」


RPGやライトノベルで言うなら勇者とかでなく『始まりの村』からスタート。


そういう事なんだ。


ある意味気楽で良いかも知れない。


「それじゃ、まず装備だが何か持っているか?」


金貨以外入っていないから、持ってないな。


「何もありません」


「そうか、やはりな…それじゃ、古い物ばかりだがこれから案内する家の納屋にある装備を自由に使って良いから、使えそうな物を使ってくれ、飯はこの村にある酒場で食ってくれ、一番安い定食は無料で提供して貰えるから、それ以上を望むなら、金払ってくれ…まぁこんな物だ…大丈夫か?」


「はい、恐らくは大丈夫だと思います」


「そうか、それじゃ今日は遅いから、これから住んで貰う家に案内するから今日は休んでくれ」


「何から何までありがとうございます」


「良いんだ!いきなり違う世界に来て大変だと思うが頑張ってくれ」


ギルダーさんに酒場の場所を教えて貰い僕がこの村でお世話になる家まで連れて行って貰った。


前世で言う山小屋みたいな家だった。


2LDKで台所にトイレ、そして風呂があると思ったが、お湯は無く水風呂だった。


異世界で田舎、そう考えたら素晴らしい気がする。


「3か月は自由に使ってくれて構わない、それを過ぎたら家賃が掛かるからな」


それだけ話すとギルダーさんは去っていった。


◆◆◆


木のベッドに腰かけステータスの確認をする事にした。


「ステータス」


名前:クロキ ツバサ

状態:正常

レベル:1

HP:10

MP:10

守護神:黒闇天(雪乃)

スキル:翻訳、収納、無病息災(常時発動)、恋愛成就(常時発動)、心願成就(常時発動)、貧乏小(常時発動)、器用貧乏

魔法:

アイテム:金貨入りの小袋(金貨4枚)


守護神から上は解る。


ギルダーさんの話ではやがて職業(ジョブ)は得られるとして、今現在知りたいのはスキルだ。


翻訳、収納は何となくライトノベルを読んだ事があるから解る。


これは雪乃様じゃなくテティス様が下さったスキルだろう。


此処から下が一体どのようなスキルなのだろうか?


解ると言えば解る。


良く神社の御利益で目にする物だ。


無病息災

病気をしないで健康である事。

災害、病気からも守ってくれる。

そう書いてあった看板を見た気がする。


恋愛成就

片思いの相手と両想いになりたいという願いが叶うこと。

恋愛に関するあらゆる願い事が叶うこと。

これも縁結びの神社で書いてあった看板からだ。


心願成就

心の奥に秘めた願いがかなうこと。

心の中で神仏に願いを立てて、それが願い通りになること。

これも神社の看板に書いてあった。


器用貧乏

確か、色々出来るけど成功しない、そんな意味だった気がする。


貧乏小

これはあくまで想像だが、僕の神様が雪乃様だからなのだろうと思う。


これは雪乃様を神様として祀る者の宿命だ。


常に貧乏が付き纏う。


小というのは雪乃様なりに、その運命を小さくしてくれている様な気がする。


全てあくまで僕の憶測。


本当の所は解らないけど大きくは間違ってない気がする。


後は金貨4枚。


これは果たして僕が持っていて良い金額なのかな?


それとお爺ちゃんとお婆ちゃんは幸せに暮らしているのかな?


それだけが少し気がかりだ。


『文生お爺ちゃんと幸恵お婆ちゃんなら、幸せ確定だから気にする必要は無いからね』


頭の中に雪乃様の声が聞こえてきた。


「雪乃様?」


『なんだい?!まだ寝るには早いだろう? 凄く気にしているみたいだから教えといてあげるよ! 貧乏神が長く居座った後は福の神が今度は来るんだよ! ツバサくんは別だけどね! 誰がついたかは解らないけど大丈夫だ! ただ君が居なくなって悲しそうだったけど、それは時間が解決してくれると思う…そこは他の家庭と一緒だね』


「教えて頂き有難うございます」


『いいんだ!僕と君の仲じゃないか? ちなみにロトくじの1等に当選したみたいだから、お金も安心だ』


良かった。


「教えてくれてありがとうございます」


『良いんだよ!君はたった1人の僕の信者だからね、あとジョブについては悩んだ末に今はつけなかっただけだからね! 僕は異世界の神じゃないから何が良いのか解らないんだ!君が頑張っている様子を見て君に良い職業が思いついたらその時に進呈するからね』


「ありがとうございます」


『もっと話をしたいけど、異世界だから長居は出来ないみたいだ!テティスという神が煩いんだよ!暫くは神託出来ないけど、また来るから、頑張るんだよ!ツバサくん』


「はい」


見守ってくれていたのかな?


凄く有難いな。




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