第15話 メンテナンス
トントントン
「マヤさん、ちょっと良い?」
あくる日僕はマヤさんの部屋をノックした。
「ご主人様…どうぞお入りください!」
「それじゃ…なっ!あのマヤさん、その隠して下さい」
ほぼ一糸纏わぬ格好でマヤさんがそこに立っていた。
朝日に輝くマヤさんは凄く綺麗だが…
「気にする必要は無いじゃないですか?私には生殖器がありませんから…」
「それでも胸からなにから見えっぱなしなのは…目の毒ですから隠して下さい!」
「そうですか?ご主人様がそう言うなら、服を着させて頂きます!ただ見たければ何時でも言って下さいね! なんなら口と手なら…」
「良いですから!取り敢えず服を着て下さい」
「心と言葉が違うようですが…解りました」
確かに機械に見える部分が多いが、それでも生身に見える部分は美少女だ。
それが裸で居たら…何処を見て良いのか解らなくなる。
◆◆◆
「それでメンテナンスの事なんだけど…」
「それなら、昨日ご主人様から金貨2枚以上頂きましたので、早速、修復させて頂きました、この程度直しておけば恐らく10年位は問題ないと思います」
「10年?」
「はい、私達ジークの民は他の種族と違い体の自己回復は出来ません。壊れたら交換しか無いんです…今回は人工血液の交換と循環ポンプが壊れ掛っていて半分死にかけでした。その為、急ぎお金が必要だったのです…本当にありがとうございました」
人間でいうと心臓が駄目になって血液も交換が必要な状態だった。
そういう事か。
「間に合って良かった」
「本当にそう思います…ご主人様に会った時点で余命2週間って所でしたので一安心です!」
「そんなに悪かったんだ…」
死にかけじゃないか。
「ええっ、ですがご主人様にお金を頂いたので早速、材料を買ってきて部品や人工血液を作りメンテナンスしましたから、もう大丈夫です!」
「そう? それで他にもメンテナンスが必要な所はある?」
「取り敢えず、生活するのにあたっては無いですね!ただ私は結構な時間を生きていますので、ちょこちょことは出てくると思います! あとはご主人様次第です!」
そう言うとマヤさんは自分の機械の部分を指さした。
「僕次第?」
「熱暴走で溶けてしまった皮膚をどうするかですね? 私としては無くても良い物ですが、ご主人様が必要であれば新しい皮膚と交換しますし、望むなら甲冑みたいな物を作って装着しても構いません」
「皮膚ってどの位の金額で作れるの?」
「金貨1枚位ですね、甲冑タイプでも通常の皮膚でも同じです」
「それじゃ、お金は僕が出すから、通常タイプの皮膚と交換してくれる?」
「畏まりました…ですが、皮膚を交換しても人族以外からは私がジークの民だと解るので、あくまで装飾品だと思っておいてください」
「なんで?」
「この世界の殆どが『自然を大切にしています』それと反対にあるのがジークの民です…まぁエルフを筆頭に嫌われていまして、匂いや音、僅かな見た目の違和感から『普通でない』と感じ取られるみたいですね」
「え~と」
「論より証拠!ほうら、匂いが違うでしょう?」
そう言ってマヤさんに抱きしめられると確かに生き物じゃない匂いがした。
ビニール繊維?ゴム…その臭いが一番近いかも知れない。
「確かに…なっ…」
抱きしめたままマヤさんは僕の耳を胸に押し付けた。
形の良い胸に押し付けられて僕が顔を赤くしていると…
「ほら、心臓の音もしないでしょう?」
確かに胸からは心臓の音ではなく機械的な音が聞こえてくる。
「本当だ…」
「それに私の肌はシミ一つほくろ一つ無いから、違和感があります!ご主人様、宜しければ、私の目を見つめて下さい!」
「うん」
殆ど解らないが、目を見つめていると僅かに瞳孔の形が違う気がする。
「ジークの民なのは、この世界の人には簡単に解ってしまいます…それでも皮膚は必要ですか?」
これは僕の我儘かも知れないけど、折角綺麗なんだから直してあげたい。
「マヤさんは綺麗なんだから直した方が良いと思う、お金は出すから直して」
「はい、ご主人様…あっ、そう言えばご主人様の装備、随分古い物を使っているのですね? 宜しければ私が作りましょうか?」
「出来るの?」
「はい、神々からオーバーテクノロジーは作れ無いようにされてしまったので、クリプトンガスレーザーブレードとかは作れ無いですが、通常の武器や防具なら作成可能です」
通常の武器や防具が作れる。
それだけで凄いと思う。
「それじゃ、お願いいして良いかな? 全部で幾ら位?」
「金貨4枚あればお釣りがでますよ」
「それじゃ、後で冒険者ギルドでお金を降ろしてくるから、お願いできるかな?」
「はい、ご主人様!」
お金も半分減るし、武器や防具も手に入る。
うんうん、良かった。
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