第49話 ツグナールSIDE

「この農場は、もう駄目だな…」


「そうね、もし、今から一から頑張って耕しても、次の収穫は1年、その間暮らす事が出来ないわね」



俺の名はツグナール。


豊穣の女神では小隊長をしていた。


今はもう、無職だ。


未練がましく、豊穣の女神の持ち物だった畑を見に来たが酷い物だった。

ただ、他にも数人昔の仲間がいたのが唯一の救いだ。


アムリオン様が、去る前に別のパーティを紹介してくれたが…


酷い物だった。


◆◆◆


「小隊長だった俺が荷物持ちからだと!」


「うちは新人は年齢関係なく、荷物持ちからだ! 嫌なら他に行きな…」


「これでも、俺は豊穣の女神では小隊長だった…」


「だから、なんだ? 豊穣の女神はもう解散したんだぞ! アムリオンが土下座までして頼むから、仕方なく入れてやったのに…」


アムリオン様が、あの気高く、気位の高いアムリオン様に土下座をさせたのか…


「なぁ、俺を荷物持ち扱いするかには、お前は強いのか?」


「ああっ、お前達みたいに…」


「そうか…なら今すぐ決闘だ! 早く腰の物抜いてみろよ…」


「ちょっと」


「待ちなさいよ!」


「こちらは準備も出来てないのよ…」


「はん、3対1の状態で俺達は冒険者、そんなの言い訳にならないな…来ないなら俺から行くぞ」


アムリオン様に土下座までさせたんだ…只じゃおかない。


「待て…うわぁぁぁぁーーー俺の腕がぁぁぁーー」


素早く間合いを詰めて利き腕の右腕を剣で斬り落とした。


「「いやぁぁぁぁぁーーーーっ」」


「女とはいえ冒険者だろう? ゴブリンやオークに負けたら死より辛い人生が待っている…悲鳴なんてあげるなよ…」


2人の間を駆け抜け、片足づつ切り落とした。


「あっあああっあああーー私の足が…」


「痛い、痛いよぉぉぉぉーーー」


此奴らはアホだ。


「あのな…なんで手足が切断された位で泣きわめくんだよ! そこにあるポーション使えば良いだけだろう?」


腕を切断した男の収納袋から勝手にポーションを3つ取り出して治療をしてやった。


「お前、こんな事して覚えておけ!」


「絶対に許さないわ」


「この、犯罪者!」


「あのな…冒険者の命は自己責任なんだぜ! 余程の事じゃなくちゃ罰されない…それに捨て台詞を吐くなら、安全になってからの方が良いぜ! そらよ!」


「なんだ…何も、うわぁぁぁぁーー痛いい」


「いやぁぁぁぁぁーーー」


「早く、早く抑えないと…ああっあああーーいやぁぁぁー」


まぁ、腹を斬られれば痛いよな。


しかも内臓が飛び出しそうなのを押さえている。


「俺は優しいから治療してやるぜ」


腹を斬られたら、すぐにポーションを振りかけるか回復魔法を唱える。


こんな事、豊穣の女神なら新人でも1人でどうにかする。


馬鹿か…


「ああっ…あああっ助けて…」


「なんでもします…こ殺さないで…」


「た助けて…助けて…」


「確か、もうポーションは無いな、次は死ぬしかない…さっきもう言ったが冒険者の命は自己責任、俺やアムリオン様を馬鹿にするからいけないんだ…それじゃ、このパーティで一番強いのは俺だ!俺がリーダーで良いよな?」


「「「はい」」」


こうして俺は新しい仲間(手下)を手に入れた…筈だったんだが…


◆手紙◆


ツグナール様

  僕たちは冒険者で居る事が怖くなりました。


  手足がなくなったり、内臓をぶちまけるような戦闘なんて到底できません、仲間の二人もゴブリン怖い、オーク怖いと引きこもりになってしまいました。

そこで、冒険者証を返納して一般人になる事にしました。

探さないで下さい…


◆◆◆


なんだ…これ…


だが、一般人になった以上はもう…仕方が無い。


諦めよう…


アムリオン様…


やはり俺は此処から出て行くべきだったのかも知れないな。






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