第18話 無難が一番

『異世界召喚は大きな事を望んじゃ駄目なんだ! 多分、そこをよく考えない人は、間違いなく早死にしたり、不幸になるからね…これは僕たち神にとって常識だよ!』


同級生の事を聞こうと思ったら、こんな声が聞こえてきた。


「常識なのですか?」


『当たり前じゃないか?神で僕みたいなのは珍しいんだぜ!殆どの神は大きな力を求めたら、それに対して大きな義務や枷が生じるんだ、これは異世界でも地球でも同じだよ』


確かにそうなのかも知れない。


「たしかにそうですね」


『ああっそうだよ! 例えばそうだね…君が好きな漫画や小説にアテナって女神が出てくるだろう!あの子から祝福なんて貰ったら最悪さぁ…一生涯戦争の世界に招待だ! 暇さえあれば主神級の神に喧嘩を売っているからね…なにかある度に『アテナの所に集え』って招集されうぉぉぉぉぉーーっていう生活を送るんだぜ…確かに装備は良いかも知れないけどさぁ、優れた装備は元から実力のある者に独占されるから手に入らない、優れた戦士だって、その厳しい規律にすぐに半べそものだよ!しかもだ、人数が多いから余程の功績をあげなければ名前すら覚えて貰えないし、処女神だから寵愛を受けたら受けたで常に危険な任務を与えられて試される、普通の人間には勤まらないさ』


「確かに、今の話だけでも大変そうですね」


『だろう?だけど、それはこの世界でも同じだよ、アテナもそうだったけど、アレスも脳筋だったよ? 暇さえあれば戦争しているんだから、命がけの毎日、しかも相手も神々なんだから…平和主義には絶対に勤まらないさぁ』


確かに、あの生活はアニメや漫画だから楽しいのであって実際に自分がするとなると悲惨だ。


「確かにあれは僕には勤まらないですね」


『だよね! それで、君の同級生たちだけど『英雄』に憧れたり『勇者』に憧れた者が多く居たんだけど…それはね』


「やっぱり、そうなんですか?」


『うん、戦争に放り込まれたり、魔王討伐の厳しい旅に出たりしているみたいだね、それなりにしっかりしたジョブやスキルを貰っているから、すぐに死にはしないと思うけどね』


「同級生の女の子とかはどうなんですか?」


『おや、好きな女の子が居たのかな? そんな事を聞くと僕、嫉妬しちゃうよ! 君は僕の翼くんなんだからね…まぁ良いや教えてあげるよ、一部の女の子は娼婦をしているみたいだよ!』


「あの、雪乃様、それは…」


『今、翼くん、酷いと思っただろう? 酷くないからね、地球に居る美の女神にイシュタルっていう女神がいるんだけど『美しさは性愛の中にある』とか言っていたよ…男性から見て美しい女性ってある意味『男性が抱きたい』と思われるような女性だろう!だから、イシュタルの神殿には娼婦が居るんだよ、神殿娼婦っていうんだけど、この世界の女神にも同じようなのがいてね…美しくなる加護を条件に娼婦になっている同級生が何人か居るみたいだよ!』


「それを僕の同級生が望んだのですか」


『忘れちゃいけないよ! 皆、仲良く神と喋っていたじゃないか? 話し合ってちゃんと決めたみたいだよ。僕には理解できないけど、美しくなる代償が「沢山の男に抱かれるなんて事を受け入れる事」なんて理解出来ないよ!だけど、自分から受け入れたみたいだから仕方ないさぁ』


「え~と」


『翼くん、顔を赤くして初心だね…だけど、美の女神って奴は基本、一緒に性も司っているんだぜ、そうだね、有名な女神で美と言えばアフロディーテを知っているだろう?彼女は凄く淫乱でもあるんだぜ』


「アフロディーテ様がですか」


幾らなんでも知っているよ。


オリンポスの神々だよな。


『彼女は神聖な美も司っているけど肉欲の象徴でもあるんだぜ!美の女神の多くは性も司っている神が多いから、美の女神の祝福を受けたければ性も受け入れる必要はある…神の中では当たり前の事だよ』


「なんだか、イメージが変わってしまいました」


『余り気にしなくて良いよ! 今のはかなり大きな物を望んだり、活躍したいと願った者の現状だよ!テディスの話では2/3は普通に生活しているみたいだから、ちなみにこの世界の神とは揉めたく無いから、地球の女神の名前で答えたけど、内容は正しいから安心しておくれよ』


「はい」


『良いかいツバサくん!なに事も無難が一番!それが僕の教えだ…このまま無難に頑張ろうぜ』


「はい、雪乃様」


僕は雪乃様が身近にいたからか欲が少ない。


これからも『無難』に生きていこう。


本当にそう思った。



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