第30話 謎のエナ...生えている

『翼くん、どうだい? 無難に過ごしているかい!』


「ええ、毎日、無難に過ごしています」


『そうかい、そうかい、無難にデレデレしながら過ごしているね? 此処暫く、エロエロな毎日だから、僕の事忘れていただろう?』


「そんな事ないですよ!毎日感謝して生活しています」


『怪しい…まぁ良いよ!それで、新しい仲間候補なんだけどさぁ…一応居たんだよ…』


「雪乃様、なんだか乗り気じゃなさそうに聞こえますが…」


『いや、そうなんだよ! この世界、魔法使いやヒーラーの多くは神や精霊信仰が強いから、もう諦めるしかないね…強い前衛も何処かの神の祝福を受けていてパーティかクランに所属しているんだ、なかなか厳しいね』


「まぁ僕たちは『無難』に過ごしたいだけですから、強力な仲間は必要ないですよ」


『一人候補は居るんだ! エナという獣人の女の子なんだけどね!問題は翼くんも面識もある『ラバーガール』というパーティに所属しているんだ…どうした物か考えものだよ』


「ラバーガール? 愛人冒険者のパーティですか?ですが、あそこのメンバーは神々の祝福を得ているのでは無いですか?」


『そこだよ!そういう人間だけでは無い様だよ! 優れた祝福持ちには待遇は良いみたいだけど…祝福を持ってなければ、酷い扱いみたいだね...パーティ内で階級があり、その中で1番下みたいだ』


「それなら、簡単かも知れないですね!結構、お金で転びそうな感じでしたから」


『そうだね…ただ、欲しがると足元みられるかも知れない…高く吹っ掛けられたら断った方が良いかも知れないね!どうしても必要な仲間では無いからね…ただ、現状仲間に出来そうな相手が彼女しかいない…それだけだよ』


「雪乃様としてはどうなんですか?」


『今は未知数だけど、伸びしろはある…そんな所だよ』


「そうですか? それなら、どんな子なのか様子だけでも見てみます」


『判断は任すから、しっかりと見極めておくれ…チッ、まただ…それじゃ翼くん、頑張るんだ!』


雪乃様と話していると邪魔が入るんだけど…なんなんだろう…


◆◆◆


「良く声を掛けてくれたね!うちのメンバーで気になっている子が居るのかい? どんな子だい?」


「いや、どんな子かも解らないんだ、だけど、エナって子がうちのパーティの戦力になるって勧めてくる人が居てね、気になっていたんだ」


「エナ、ねぇ…うちにエナって子は居るけど…訳ありでね、価値が無いから下働き専門の奴だよ…多分別人じゃないのかい?」


「獣人ですか?」


「まぁ、獣人っていえば獣人さぁ、だけど、獣の神々から嫌われている奴でね、普通は獣人であれば祝福を受けやすい筈なんだけど…ガーネル様やフェリル様を始めとする獣人を守護する神様からも何故か嫌われる…他にも問題は沢山ある」


「それじゃ、試しにあわせてくれませんか?」


「そうだな、良い事を思いついた!あんた賭けしてみないかい?」


「賭け?」


「そう賭け! エナを見ないで購入するなら銀貨8枚奴隷紋付きで譲るよ! 代金先払い、キャンセル不可だ! エナを見て気に入らなくても絶対に契約して貰う…見てから決めるなら金貨3枚だ、どうだい?」


何故か押し付けたがっている気がする。


だが、雪乃様が勧めてきたんだ。


此処は雪乃様に賭ける。


「その賭けに乗りました!」


「よっしゃ、そう来なくちゃ! 誰か早くエナを連れてきな…あと奴隷商の旦那もね」


「はい!」


どんな訳ありなんだ。


◆◆◆


「よいか、此奴がエナだ! エナ喋るんじゃないよ?」


「…」


背は少し低め、獣人特有の耳がある。


顔は可愛らしい感じがして体型は筋肉實で、前の世界で見たアニメのアマゾネスみたいな感じだ。


マヤさんにターニャさんが美人なら、この子は可愛い。


そう思える。


見た感じ欠点らしい欠点はない。


そうか…話しをさせない。


それが罠なのか?


もしかしたら、喋れない、もしくは歯並びが悪いのかも知れない。


今更、気にする必要は無いな。


「凄く可愛い子にしか見えないな、約束の銀貨8枚だ」


「あいよ」


「それでは、奴隷契約を…あんたか…また」


「商売の邪魔しないでおくれ、旦那は奴隷紋を刻めば良いんだよ、金はちゃんと払うんだからね」


「そうだな、それじゃまた血をくれないか」


「ああっ」


俺は指を剣で傷つけ、渡された小皿に垂らした。


奴隷商人はその血を使ってエナに奴隷紋を刻んだ。


「これで終わりだ、あんた酷い事するな!この商品にならない奴幾らで売ったんだよ!」


「奴隷紋つきで銀貨8枚…お得だろう?」


「はぁ~銀貨1枚で良いから引き取ってくれ、そう言っていたのに…まぁ良いや、あんたつくづくお人よしだな…説明位はしてあげろよな」


「まぁ良いや、此奴はうちでは使えないんだよ! エナ口開いて良いよ…どうだい?」


ギザギザの鋭い歯だ。


「これが…」


「馬鹿だね、こんな口の奴に奉仕させたら、男のペニスなんでズタボロに千切れちまうよ、だから口は使えない…」


「僕…ごめんなさい…」


「そういう目的じゃないから気にする必要は無いよ」


「そうかい、ならば体を触ってみなよ! ちゃんと胸はあるし、腹筋が割れている訳じゃないのに…可笑しいだろう」


「触って良いかな?」


「僕は貴方の奴隷になったんだから…良いよ」


まるで男性みたいに固いな。


胸はちゃんと柔らかいけど…


「どう?女を触った感触じゃないだろう? 男の体を触ったみたいじゃないか?そうだろう!」


エナちゃんなんだかしょげているな。


「ボーイッシュな僕っ子、可愛いじゃないか?」


「そうかい、それじゃこれでどうだい!」


「きゃぁぁぁーなにするんだよ!」


いきなりエナのスカート?が捲られた。


股間の付け根に、俺と同じ物があった。


「そうか、男の子だったのか、別にそれなら、それで構わない」


「違っ、違います、僕は女の子です…」


「え~と」


「はははっ、嘘じゃないよ! 鑑定を掛けてみれば解るけど、ちゃんと女、もしくは雌だからね!チンコ生やした女なんかキモいだろう?変態だよ、変態!ラバーガールは基本、女に対しては来るもの拒まずだからね…だけど、こんな子に居られたら評判に関わるから…いや、あんたが引き取ってくれて良かったよ」


別にそういうつもりじゃないから気にならない…


「そう、それじゃエナさん行こうか? ふたなりなのかな…気にしないから行こう」


「違っ、僕は女の子です」


「詳しい事は後で聞くから、取り敢えず帰ろうか」


「…はい」


なんだよ、ラバーガール達のあのにんまり顔。


少し、腹がたつな。

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