第31話 食べる少女


宿に帰ってきた。


「ご主人様!その子がもしかして、神様が探してくれた仲間ですか?」


「ツバサ様、随分可愛らしい子ですね」


「うん、僕もそう思うよ、それでちょっとこの子と話したい事があるから2人は席を外して貰って良いかな?」


2人は此方を見て察してくれたのか、席を外してくれた。


◆◆◆


「あの…本当に僕を買って良かったんですか? 後悔して無いですか…」


「特に後悔して無いけど? なんで?」


「あの…僕、他にも黙っている事があるんです!その僕が敵を倒すと、魔石にならないでそのままなんです!言わないでごめんなさい…」


「魔石にならない…」


「ゴメンなさい!」


僕がしょげている様に見えたのか、エナちゃんガ泣きそうにこちらを見ている。


幼い子を虐めているような罪悪感が沸いてきた。


男みたいな立派なイチモツ。


強靭な凄い歯。


それさえなければ、ライトノベルやアニメのヒロイン枠だ。


そんな子が泣きそうな顔をしていたら…


うん、何も言えない…


「別に謝る事は無いけど! なにか秘密があるの? あるなら教えて欲しい」


「僕…実は獣人族の中でも嫌われ者、他の人族からも嫌われ者のハイエナ族なんです…ごめんなさい」


「ハイエナ族?成程、だからかぁ~」


確か、ハイエナはメスにも、男性器に似た物がある、そんな話を前の世界の図鑑で見た記憶がある。


ハイエナの獣人なら、骨すらかみ砕く歯を持っていて、固い筋肉は当たり前だ。


確か、神話だと不道徳と言われ嫌われる話と一部神聖視されたりしていた筈だけど、この世界だと『不道徳』の方なのかも知れない。


それなら、神々から嫌われるのも解らなくない。


「ハイエナ族を知っているの?」


「ハイエナ族は解らないけど!僕のいた世界にはハイエナという動物が居たからね、なんとなく解るよ」


何故、異世界には前の世界を擬人化した種族がいるのか?


それは解らない…なんでだろう?


「へぇ~あの…ツバサお兄さんはハイエナ嫌いじゃないの?」


デ●●カバリーチャンネルで、仲間思いの生き物だって聞いた気がするし…


僕はラーテルやハイエナみたいに『実は強い』って言うのは好きだったりする。


「嫌いじゃないよ」


「そう、よかったぁ~僕、嫌われ者だから、そう言って貰えて嬉しいよ!」


「そう、それなら良かった! そう言えば、魔石にならないって事は戦う事も出来るんだよね?武器はなにを使うの? 剣、ナイフ、槍、用意するよ!」


「僕…口です…」


モジモジしながら答えた。


「口?」


「はい、僕に武器は必要ないんです…大抵の魔物であれば、バリバリとこの牙で食い千切れます、武器も防具も基本いりません」


「本当に?」


「はい…」


「それじゃ、少し狩りにいってみようか?」


「あの…僕…僕が狩っても魔石にならないんです…」


「まぁ、それで良いから、ちょっと行ってみない?」


「はい…」


渋るエナちゃんを連れてダンジョンに来た。


「この時間から潜るんですか?」


「ツバサ様、今からじゃ、すぐに夕方そして、夜になります!夜のダンジョンは危ないですよ!」


「大丈夫!エナちゃんに試しに一体狩って貰ったら終わり、その後は2人はエナちゃんに必要な物を一緒に買いに行ってくれ、俺は食事の準備…」


「ご主人様、前方にゴブリン、逃げます!」


「僕、狩って良いんだよね!」


「ああっ」


凄いダッシュでエナはゴブリンの方に走って行った。


そのまま、一体のゴブリンの首に喰らいついた。


ダンジョンで襲い掛からず逃げる魔物を初めて見た気がする。


「何故、逃げるんだ」


「ご主人様、恐らくはゴブリンはエナちゃんを捕食者とみなしたのかも知れません…あれっ!」


マヤさんが指さした先には2体目のゴブリンをニコニコしながらかぶり付いているエナちゃんだった。


「ご主人様、あれ大丈夫でしょうか?」


「ツバサ様、ゴブリンって食べられるのですか?」


「エナちゃんなら大丈夫…な筈だよ」


腐ったものですら問題無く食べられるハイエナの獣人なら多分、大丈夫だ。


だけど、ゴブリンを美味しそうにバリバリ食べる少女。


なかなかホラーだな。









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