第51話 昨日の敵は今日の仲間
「スノードロップのツバサだな!」
「僕がツバサだけど、なにかよう?」
不味い、失敗した。
まさか、街中の往来で攻撃を仕掛けてくると思わなかった。
建物の影には複数の仲間らしい人物がこちらを見ている。
ここでヤルしかないのか。
三人が此処に居ないのは運が良かった。
「俺の名前はツグナール。元豊穣の女神の幹部で今は迷宮の探究者のパーティリーダーだ! これが俺の覚悟だ受け取れ」
ヤバい、こいつ強い……えっ……
「どうしたんですか……急に寝ころんで」
ツグナールは大の字になって仰向けになっていた。
「これは五体投地という。転移者でいう土下座を越えた謝罪だ。俺達はもう豊穣の女神じゃない。だが豊穣の女神の時に迷惑をかけたのも事実だ。だからこうして謝罪をする。許してくれないか?」
なんでこうなる……ここは街中だぞ。
「その話ならもうアムリオンさんと話がついたからどうこうする事はありませんよ」
「そうじゃないんだ!俺は、いや俺達は悪い事したと反省した。だからこそ、それを示したかったんだ。もし、本当に許してくれると言うのなら、直接聞きたいんだ。許して貰えないか?」
「わかったよ……許すよ!だから、これからは僕の仲間を差別しないでくれ。あと、なんでこんな事をするのか理由を教えてくれないか?」
場所を近くの酒場に移してツグナールの言い訳を聞く事にした。
「それで、なんで五体投地だっけ、あんな事したわけ?」
「それは俺達があんたに酷い事をしていたからだ。自分達がされる側になって初めてわかったんだ。あれは恥じる事だ。そして、ツバサの気持ちも良くわかった。仲間の為に一生懸命にあんたはなっていた。その姿こそ、俺の理想だ」
「何をいまさら……」
「いや、本当に馬鹿な事に最近までわからなかった。「仲間の大切さ」「仲間が集う場所の大切さ」がね。あんたの生き方を考えて思った。俺は勇者でもなんでも無い。あんたも同じだ。世界なんて関係ない。だから『大切な仲間だけ』を守れれば良い。あんたはその為に俺達に牙を剥いたんだろう?」
なにが言いたいのか解らない。
「だから、俺もあんたを見習って『仲間の為に何でもする』その為なら五体投地だって土下座だってするさぁ」
「だが、ツグナールだっけ? あんたらエルフをはじめとする種族は俺の仲間の種族が嫌いなんだろう?」
「確かに本来はそうだ。だが、種族と考えるから悪いんだ。俺達はこれからは種族として考えないで個人で考える事にしたんだ」
「個人で?」
「そうだ神は大昔に許していたし、エルフにも善人も悪人もいるし、人族だってそうだろう?」
「確かに」
「だから、俺達は種族とか考えるのをやめる事にした。これからはジークの民だろうが、耳長族だろうがハイエナ族だって差別しない。普通の人間として仲良くしたい」
「それが本当なら願っても無い事だ」
ここギルメドに長くいる者は差別しないが、旅人の中には差別する人間もいる。
味方は少しでも多い方が良い。
「そうだろう? それでな、まず第一歩としてツバサ、お前と俺は友達になりたいんだ……どうかな?」
「そうだな、取り敢えず、交流してみるか?」
まぁ友好的な仲間になってくれるなら確かに助かるな。
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