第20話 少し甘い生活。


「ツバサ様、これはどういう事でしょうか? また私の取り分が多いのですが…」


「別に気にしないで良いからね」


「気にします…今回の報酬は金貨3枚です! ご主人様が銀貨3枚だけとって残り全部が私なんて可笑しすぎます」


雪乃様のルールでは『マヤの物は俺の物』というルールは無いそうだ。


それなら必要なお金を最低限残し、お金の多くをマヤさんにあげれば良い。


雪乃様は貧乏神。


雪乃様に対する僕の義務は『貧乏である事』


そう考えたらお金を持つことが怖い。


マヤさんに出来るだけお金は押し付けて置いた方が良い。


本当にお金に困ったら『マヤさんに泣きついて貰えば』よい。


仮にも僕はご主人様なんだから見捨てないで、きっとくれる。


「僕は余りお金が欲しくないんだ…悪いが取り分はこのままでお願いする! その代わり困った時に助けてくれれば良いんだよ」


「ですが…」


「僕は、ご主人様なんでしょう? それに主従の関係ってそんな簡単に切れるの?」


「認証登録ですから、どちらかが死ぬまで切れません」


「それなら、大丈夫! それにマヤさんと違って僕はお金が掛からないからね」


「ですが、ご主人様だってお金は必要な筈です」


「もし、本当に困ったらマヤさんに恵んで貰うから大丈夫だから」


「だけど、こんな大金私が貰っても…」


「だったら、渡すお金を使って、沢山メンテナンスしたり、欲しい物を買って」


「あの…ご主人様? それはどういう意味でしょうか?」


「綺麗で可愛いマヤさんが見たいから、それにお金を使ってよ」


「私が綺麗で可愛くなると、ご主人様は嬉しいのですか?」


「勿論」


こうでも言わないと貰ってくれそうも無いからな。


「ご主人様は本当に変わっていますね! 解りました。そう言う事なら貰わせて頂きます」


お金を持ちたくない。


マヤさんは綺麗になる。


正に一石二鳥だ。


◆◆◆


「ご主人様…ただいま」


「お帰りなさい!」


マヤさんが買い物に行ってくると言うので、僕は昼食の準備と宿屋の掃除をしていた。


この世界の宿屋は小さな台所がついている部屋も結構ある。


前の世界と違いコンビニも無く、酒場、娼館以外の殆どのお店が朝遅く開き、夜早く閉まるから、自炊が必要。


そう言った事情があるのかも知れない。


「あの…なんで、掃除からお食事のお世話までご主人様が行うのですか? 私は従者みたいな者なので逆じゃないですか?」


「マヤさんに喜んで欲しいし、割と家事は得意だから気にしないで」


「オムライスにハート迄書いて、本当にご主人様は私が好きなのですね…」


「そりゃそうだよ! 美人で可愛いし当たり前じゃないか?」


「ご主人様、私はこんな風に大切にして貰った事はありません…免疫が無いので困ってしまいます」


「いや、困らないで良いから、一緒に過ごして貰えるだけで嬉しいから気負う必要は無いよ」


「そう…ですか?ですが、こんなにして貰って嬉しいので、私も今夜少し返させて頂きます」


「え~とどういう事?」


「今は内緒です」


誰かと一緒に生活が出来る。


それだけで嬉しいのに何かしてくれるのか?


楽しみだな。


◆◆◆


「どうですか? ご主人様?」


「ううっうん、ありがとう?」


「こういうスケスケでヒラヒラした物が男性はすきだと聞いたので買ってきました」


マヤさんが買って来たのはスケスケの下着にベビードール。


こういう免疫が無い俺は困ってしまう。


こういう場合は、お礼を言うべきか? それとも褒めるべきだろうか?


「凄く綺麗で、セクシーで、そのありがとう」


「どう致しまして…それじゃご主人様寝ましょうか?」


「そうだね…」


生殖器が無いとはいえ、他は人間の美少女にしか見えない。


やっと一緒に寝る事になれてきたのに…


スケスケの下着にベビードール。


多分、今夜は眠れないな。



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