第21話 器用貧乏


「凄いね…」


「ご主人様が喜ぶかと思って作ってみました」


「こんなのも作れるんだ」


なんとゆうか、鎧には違いないがSFで良く出てくるようなアメコミのヒロインが着ているような鎧。


色は黒でなかなかセクシーだ。


バニーガールの服をボンデージ風にして鎧を作るとこんな感じかも知れない。


「材料さえあれば、ですね…ちなみにこんなのも作ってみました!」


「それは!」


「ドリルアームです! 戦いのときは腕を交換すれば少しは戦えます!」


「そんな武器が使えるのに、戦えないの」


「いえ、戦えますがコスパが悪いんです! このドリルという武器では精々がオーク迄しか通じません! 一般の人の真面な剣とあまり変わらないんです…それなのに結構お金が掛かってしまいます…魔法耐性も無いですから…ご主人様の鎧もそうでが、炎や氷などへの耐性は普通の金属と同じ位しかないので、魔力が宿った武器には及ばない事が多いんです」


まるでSFの武器 ドリルアームがオーク迄しか通用しないのか。


流石は異世界としか言えない。


「そういう物なんだ…」


「ええっ、ですからご主人様がレベルアップして戦った方が遥かに強くなりますから、あくまで私は荷物持ち…も出来ていませんが、何かあった時に補助になる位に考え戦力には考えないで下さい」


見た目、凄く強そうなんだけどな…


「ねぇ、あれジークじゃないの?」


「オイル臭いから絶対にそうだよ! 人に似せた皮を着ているけど人形みたいな化け物、よく連れて歩けるね」


「あれ、脳味噌がついた人形とか言われているジークの民よね、本当に臭いわ、私達は傍に居たくないわね」


「自然を破壊するジーク、幾ら神に許されてもね」


何処からともなく小声で陰口が聞こえてくる。


この世界は魔法が発達した分化学が遅れている。


自然や精霊の力を使う存在が多く居て、自然信仰もある。


そんな世界で化学を求めた国ジーク。


解らなくもないが…いい加減もう良いだろう。


「あの…」


僕が何か言ってやろうとした時にマヤさんに袖を掴まれた。


「何時もの事ですから気にしないで下さい…ジークの民ですから、反論していてはキリがありません」


「…そう」


確かにこの世界その物から嫌われた存在じゃ言い返しても仕方ないな。


一応は神に許されているせいか、実力行使みたいな事はされないから、今は静観しかないな。


「…仕方ないんです」


「まぁ良いや、兎も角マヤさんは僕には美人に見えるし、僕はSF美少女大歓迎…それじゃ行こうか!」


「SFってなんですか?」


「う~ん…空想科学? 良く解らないや、悪い。まぁマヤさんが凄くカッコ良く綺麗に見えると言う事で納得して…」


「解りました、まぁご主人様が凄く私を好きな事だけは良く解りました」


「それで良いや、それじゃ行こうか?」


「はい」


テンションが高まるとヤル気が起きるのか、毎日が楽しくて仕方が無い。



◆◆◆


『随分と楽しそうじゃないかい! 翼くん』


夜、マヤさんと寝ていると頭の中に声が響いてきた。


「雪乃様?」


「う~んご主人様? どうかしました?」


「何でもないよ!ちょっと夜風に当たってくるから」


「はい、行ってらっしゃい」


雪乃様の声はマヤさんには聞こえないからこのまま話しても良かったけど…何だか嫌な予感がするから、急いで外に出た。


「どうかしたんですか?雪乃様!」


『どうかしたんですか?じゃないよ! 翼くん、随分とあの子と仲が良さそうじゃないか?』


「え~と、はい仲良くしています」


『そうかい、そうかい、僕の事なんて忘れてイチャイチャとまぁ、お盛んな事で…』


「そんな、雪乃様、僕とマヤさんはそういう関係じゃ無くて…そうだ、マヤさんはそう言う事出来ない体なんですよ」


『知っているよ! だ.か.ら僕は彼女を君のパートナーに選んだんだい…そういう関係に絶対ならないと思ったからね…それがなんなんだい、仲良く楽しそうに出かけて、一緒に寝ているなんて…しかも下着姿でなんて何やっているのさぁ』


「え~と、普通に暮らしているだけですが」


『そうじゃ無いだろう?君はぼ.く.の翼くんなんだからね…ハァハァ…まぁそれは良いや、今日は君のジョブについて僕なりに結論を出したんだ、それを君に伝えにきたんだ』


「ジョブですか?」


『そうだよ、ステータスを見てごらんよ!変えて見たんだ』


「そうですか? ステータス」


「ステータス」


名前:クロキ ツバサ

職業:(器用貧乏)

状態:正常

レベル:16

HP:260/260

MP:150/150

守護神:黒闇天(雪乃)

永久従者:マヤ(廃棄不能)

スキル:翻訳、収納、無病息災(常時発動)、恋愛成就(常時発動)、心願成就(常時発動)、貧乏小(常時発動)

魔法:器用貧乏により変化

アイテム: ポーション×2 銀貨2枚




『どうだい?これが僕が考えた職業さぁ』


「これはどういう事でしょうか?」


『君は僕のせいで貧乏だったから色々なアルバイトをしただろう? おかげで、大抵のことは出来るけど…特に何かを極めたいとか、これ一つをやってみたい…そう言う事を考えなくなったんだ!だから、器用貧乏をスキルじゃなくてジョブにしてみたんだ』


「それがこれですか?」


『そうだよ!翼くんさっそく試してみようじゃないか?そうだね『勇者』になりたい、そう思ってごらんよ!』


「勇者になりたい…これで良いですか?」


『ああっ上手くいったみたいだね、ステータスを見てごらんよ!』


「ステータス えっ」


名前:クロキ ツバサ

職業:劣化勇者(器用貧乏)

状態:正常

レベル:16

HP:260/260 → 390/390

MP:150/150 → 240/240

守護神:黒闇天(雪乃)

永久従者:マヤ(廃棄不能)

スキル:翻訳、収納、無病息災(常時発動)、恋愛成就(常時発動)、心願成就(常時発動)、貧乏小(常時発動)

魔法:劣化聖魔法  劣化光魔法(器用貧乏により変化)

アイテム: ポーション×2 銀貨2枚


「劣化勇者?」


『そうだよ、流石に元が器用貧乏だから本物には遠く及ばない…だけど、どうだい翼くん、このスキルは自分がなりたい職業(ジョブ)に願えば直ぐになれるんだ! 凄いだろう?』


「凄いです 雪乃様!」


『但し、あくまで劣化版だ! 器用貧乏とは『さまざまな事が出来る反面、極める事が出来ない』そういう物だからね、だから劣化版のジョブになる、力としては本物の約5割の力、そう考えてくれよ』


「それでも凄いです」


『そうだろう?そう言ってくれると思ったよ! それじゃ翼くん、近々また、新たな出会いを用意するから、頑張っておくれよ!』


「出会いって仲間ですか? もう充分ですよ」


『駄目だ! 僕は考えたんだ!このままマヤと二人っきりだと2人でイチャイチャしてばかりだ…だからそれを防ぐためにはもう一人必要だってね』


「雪乃様…そう言う気はないですが、僕がそのもう一人ともイチャイチャしたらどうする気なんですか?」


『えっ、まさか翼くん、もう一人の仲間ともイチャイチャする気なのかい?ぼ.く.の翼くんはそんな事しないだろう?』


「するつもりはないですが、そういう事は考えないんですか?」


いつかという事ならまだしも、まだ仲間は要らないな。


『ううっ…解ったよ…仲間は一旦保留だよ…ちっまたテディス…翼くんまたね』


雪乃様の声が頭から消えた。


雪乃様ってなんだかんだで良い神様だ。


何時も僕の事を気に掛けてくれている。


器用貧乏がジョブか。


どの位違うのか、試すのが楽しみだ。







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