第41話 話し合いと どっちを選んでも終わる運命


「ふん!私が『豊穣の女神』のリーダーをしているアムリオンだが!なにかようかな?」


僕は今、ギルドに仲介に入って貰い話しをしている。


「なにかようかな? ふざけないでくれ!おたくが圧力を掛けるから食事や買い物が思うように出来ない…直ぐに止める様に言ってくれないか?」


「なんで、そんな事しなくちゃならない!嫌われ者ばかりでパーティを組むのがいけないんだろうが! 我々は女神パストル様を崇拝し自然を愛する者が集まってできたクランだ!お前等を嫌う正当な理由がある…自然に反したカラクリ女に、エルフに似た気持ち悪い耳長族、そして獣人の恥じハイエナ族、よくぞ此処迄嫌われる存在を集めた物だ…根っこからお前らが嫌いなんだから仕方あるまい」


嫌いなのは仕方ない。


だが、これは違う。


「だったら、無視していれば良いだろう…態々、圧力を掛ける事は無いだろう…」


「ゴキブリが居たら誰もが理由もなく叩き殺すだろう? それと同じだ! 我々にとってはゴキブリ以下なんだよ! お前達はな! 迫害するのに理由は無い…嫌いだからそうしているだけだ!法が無ければ我々のメンバーはお前達を殺したくて仕方ないんだ! だから『法的に問題が無い方法』で攻めているだけだ…文句があるなら『パーティ戦』でもやるかい? 真面に戦えるのはお前だけなんだろう?良いぜ、3人には手を出さないでやるぜ、サービスだやるかい?」


普通に考えて勝てない。


僕一人対実質、女神の豊穣全員…勝機など無い。


「1週間位、考えさせて貰って良いかな…(ボソッ)貧乏(ボンビー)」


「お前、今、何か言ったか? まぁ良い1週間待ってやる、だが、仲間なんて集まると思うなよ…お前等は嫌われ者なんだ、金を使っても助っ人なんて現れないさぁ」


別に、これで用は済んだ。


「そうだな、ちなみにギルド戦をする場合はどうするんだ」


「お前を攻めに行ったら1人だから直ぐに方がつく、だから攻め手は譲ってやる…うちのクランに攻め入って俺を倒せたら、そちらの勝ちでどうだ?勿論、ちゃんとギルドが間に入るから、あとから文句はお互い無しだ」


「解った」


こうして豊穣の女神との話し合いは終わった。


◆◆◆


「そんな、可笑しいだろう! この間はネズミが沸いてきて追い払ったら…食中毒だなんて…」


「お前の店で食事した人間が下痢を起こした! それも1人じゃ無く6人だ! どう考えてもお前のせいだろうが!」


「だが、食材は、朝仕入れたばかりの物だ…しかも俺がこの目でちゃんと目利きしたんだ…そんな訳ない」


「いや、辻褄はあっているだろう…ネズミが湧くほど不潔にして小麦粉には虫が湧いていたんだろう? 食中毒が出て当たり前じゃないか…悪いがこれも仕事だ! お前の店から営業許可を取り上げさせて頂く、あとは下痢を起こした相手にしっかり保証するんだ…それだけしたら、牢屋に入れるのは勘弁してやる」


「そ、そんな…店を綺麗にしたばっかりで金なんて無い…」


「それが出来ないなら牢屋行きだが!それで良いのか?」


「解りました…」


もう終わりだ…


店の権利を取り上げられたら、もう商売は出来ない。


「あなた…」


「お父さん…」


「もう、終わりだ…行こうか…」


「あなた、何処に行くの?」


「おとうさん…」


「おとうさんも何処に行けば良いか解らない…だけど、この店はもう続けられないんだ…いこう」


「そうね…」


「…」


どうしてこうなったんだ…


まさか…


◆◆◆


『そんな事しない...神様が』


『馬鹿じゃねーの!豊穣の女神のパーティが祝福を受けている女神はパストル様という女神様だ!神の中でも神格が高いんだ、しかも豊穣の女神のクランは100人近く居る、そんな相手に1人でなにが出来るんだ?』


『そうですか? 僕の神様、雪乃様も僕もこれでも慈悲深いつもりです…困った事があったら言って下さいね…豊穣の女神と手を切る事で相談に乗りますからね』


『馬鹿じゃないのか? 豊穣の女神と縁を切る筈はないだろう!』


『そうですか…素敵な貧乏生活を』


◆◆◆


スノードロップの彼奴が言っていた…



俺はスノードロップを敵に回す事で、その後ろにいる神を敵に回したのかも知れない。


彼奴らが仕える神はどんな神なんだ…


良く解らないが『商売を潰せる神』なのかも知れない。


『そうですか? 僕の神様、雪乃様も僕もこれでも慈悲深いつもりです…困った事があったら言って下さいね…豊穣の女神と手を切る事で相談に乗りますからね』


とも言っていた…


スノードロップに詫びを入れれば良いのか…


いや駄目だ、この店は豊穣の女神や豊穣の女神と仲が良いエルフやドワーフが贔屓してくれたから流行っていた。


それ抜きで商売は成り立たない。


結局、どっちについても…俺は食堂を経営出来なくなる運命だった。


そういう事か…





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