第40話 雑貨屋 酒場SIDE 二者二様


嘘だろう…なんでこんな事になっているんだ…


俺の店が朝起きたら、ネズミだらけになっていた。


冒険者ギルドに依頼して追い払って貰ったが、食材は壊滅状態。


しかも、小麦には虫が湧いていた。


テーブルも椅子も齧られて、最早この店は営業できる状態じゃ無かった。


だが、仕方が無い。


手持ちの有り金を叩いて、中古のテーブルや椅子を用意して、なんとか翌日には開業に漕ぎつけたが…


「どうしてなんだーーっ!」


隣近所のお店には客が入って来るのに俺の店には誰も入って来ない。


ひそひそ声が聞こえてくる。


「あんな店で食べられるかよ…大量のネズミが沸いていたし小麦粉なんて虫が湧いていたらしいぜ」


「俺、あそこの常連だったんだけど、もしかしてお腹が偶に緩くなったのは、あそこのせいかな…」


「そうかもな…俺あそこのネズミの追い出しに参加したんだけど100匹近く居たぜ」


「ああっ、もうあそこにはいけねーよ!気持ち悪いよ」


「だな、安くて良い店だと思っていたのにな…」


嘘だろう…お昼の稼ぎ時なのに…客が1人も来ない…


◆◆◆


「ハァハァ…ようやくとけた」


俺は、自分が自由になったから、妻と娘の拘束をといた。


「本当に散々だったね」


「お父さん、お母さん…大丈夫?」


大丈夫じゃない。


だけど、家族の前で辛そうな顔は出来ない。


だが、言葉が出て来ない。


なんとか、


「そうだな」


その一言を絞りだしてそう伝えた。


「すっかり無くなってしまったわね」


「お父さん、お母さん…どうしよう…」


「まぁ、お父さん頑張るよ!」


それしか言えなかった。


商品も金も無い…


俺は、盗賊を恐れて役人には訴えなかった。


『風の盗賊団』


有名な盗賊団だし、恐らく訴えても捕まらない。


そして、訴えたのがバレたら、今度は殺されるかも知れない。


『泣き寝入り』それしかない。


そればかりか…今度は妻や娘が犠牲になるかも知れない。


「だけど、この状態どうするのよ?」


お金も無いし、商品も無い。


だが…


「なぁに、 盗賊も流石にこの店の権利書まで持って行かなかった、仕方ない、この店を担保にしてお金を借りるしかない無い」


「大丈夫なの?」


「お父さん…平気?」


「元々繁盛していたんだ!同じ物を仕入れて同じように商売すれば、借金なんてすぐに返せるさぁ」


「そうね、お客様が沢山ついている店だもん、すぐに借金なんて返せるわね」


「お父さん頑張ってね」


「ああっ、お父さん頑張るよ!」


確かにこれは凄く痛い。


だけど、今迄と同じように頑張れば、同じように儲かる。


また一から頑張れば良いんだ…この時の俺は『どうにかなる』そう思っていたんだ。



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