第10話 仲間探しと願い

折角だから、仲間探しをする事にした。


僕が仲間に求める条件は3つだ。


1.貧乏である事。


2.貧乏を気にしない、もしくは楽しめる事。


3.そして貧乏を馬鹿にしない事。


この3つ。


難しいとは思うが雪乃様を信仰している以上は必要な事なんだ。


特に3は絶対に外せない。


前の世界で僕の事を貧乏だからと虐めた奴がいたんだけど…雪乃様の逆鱗に触れて、父親の経営している会社はあっという間に倒産して借金だらけになって引っ越していった。


だから、3は絶対に外せない。


前の世界では、それを目の当たりにした僕は怖くて、人付き合いを避ける様にしていた位だ。


お金の無い人で目ぼしい人の当たりをつける。


それしか無い。


カッコ良い鎧を着た冒険者に声を掛けた。


「ポータやお金の無い人を探して居る?ボランティアでもするのかい? ポーターなら噴水広場、金の無い奴なら貧民街だな…?というかあんたも相当貧しそうだけど…」


「はははっ…すいません」


確かに中古の初心者向け装備だし、そう見えて当たり前だ。


噴水広場に来てみた。


うん、そんなに甘くないのは何となく解っていた。


若いポーターは見た感じ居ない。


大体が齢を喰った人で、昔の行商人に近い格好をしている。


背負子ではなくリックを背負っている行商人。


そんな感じだ。


「すみません、若いポーターは居ないんですか?」


「黒目、黒髪…異世界の人だね?異世界から来た人は若くて可愛い女のポーターを探す人が多いがまず居ないな! ポーターは余りお金にならない仕事で危ない仕事だから、若くて綺麗な女が居たら娼館つきの娼婦になるさ...もし居たとしたら娼婦になれない様な女しか居ない」


そりゃそうか?


ライトノベルとかだと、一番最初に犠牲にされるのがポーターだし、綺麗な女の子なら男数人とダンジョンに潜れば、きっとセクハラもされるだろう、安全な場所で暮らせる娼婦の方がまし、そう考えても可笑しくない。


「確かに」


「それでな兄ちゃん、此処迄は無料で良い、だが俺も遊んでいる訳じゃない、此処で客待ちをしているんだ! もし此処から話を聞きたいなら報酬として銅貨4枚くれ! その代わり何でも知っている事は教えてやるぜ!」


この街に知り合いは居ないから聞いて置いた方が良さそうだ。


「それじゃ、お願いしてよいですか?」


「毎度!」


ただ、話すのもなんなので近くの露店で飲み物を2つ買いベンチに座った。


「どうぞ」


「悪いな、それでまずは、今の話の続きだが、もし若い女が居たとしたら訳ありだから注意が必要だ!」


「注意?」


「ああっ、五体満足なら盗賊等の凶状持ちか、あるいはジョブが盗賊等やましい者が殆どだ。他には見れば解かるが病気持ちの者で他に仕事が無くヨレヨレで仕事をしている者もいる。前者は仲間として危ないし、後者は役立たず」


「ジョブが盗賊だと問題があるのですか?」


「そういうジョブを持つ奴は犯罪に走りやすいんだよ…絶対とは言わないけど、用心にこした事は無い」


「そうなのですね」


「他には、怪我人も居る、これは実害はないが、見ていて気分が良い物じゃないだろう?フードを被っている奴に多く、暑い日でもフードを外さない奴はまずそれだ!いずれにしても評判が悪い奴は冒険者ギルドでも把握しているから聞いて見ると良いぞ」


「ありがとうございます」


「他にもあるかい?」


「貧民街やスラム街はどうなんですか?」


「酷いもんだ…女に限定すれば病気持ち、それも重度の性病持ちが多い。貧民街で路上生活して暮らしていても犯されたりしないんだから、当たり前だろう?他には冒険者をしていて大怪我をしたような奴だな…例えばブレスを吐く魔物と戦い顔や体に大きな火傷を負ったような奴とかだ…男が抱きたくない…そのレベルじゃ無ければ女は生活出来ない、普通に考えて解るだろう」


聞けば聞くほど酷い話だ。


「そうですか…」


「良いか? 異世界に夢を持つのは良いが、これがリアルだ! 『訳ありの人間はそれなりに問題がある人間』それを頭に入れる事だな! 兄ちゃんは冒険者なんだから、頑張ればそれなりに良いパートナーも手に入るし財産も稼げる、変な夢見ないで頑張る事だ」


約束の銅貨4枚を払い僕は噴水広場を後にした。


確認を兼ねて貧民街も少し覗いてみたが、ほぼ聞いた話通りどおりだった。



◆◆◆


流石に疲れた。


明日から頑張ろう。


僕はその日の夕食は軽食で済ますと安宿に泊まる事にした。


ダンジョン都市なだけあってギルメドには幾つものランクの宿がある。


その中の個室で最低ランクの安宿を選んだ。


部屋にベッドがあり、トイレは共同、だが、追加で銅貨1枚払えば何故か温水シャワーが使える。


素泊りで銅貨3枚。


僕には充分だ。


「ステータス」


名前:クロキ ツバサ

状態:正常

レベル:6

HP:60/60

MP:30/30

守護神:黒闇天(雪乃)

スキル:翻訳、収納、無病息災(常時発動)、恋愛成就(常時発動)、心願成就(常時発動)、貧乏小(常時発動)、器用貧乏

魔法:

アイテム:金貨入りの小袋(金貨4枚)金貨4枚 銀貨3枚 銅貨6枚 ポーション×2


今の僕のステータスはこれだ。


実力的にこれが良いのか悪いのか解らない。


ダンジョンに潜れば、自分の実力が多少は解る筈だ。


それにしても折角の異世界なんだからパートナー位欲しい。


前の世界では、人付き合いは怖くて遠慮していた。


此処なら、そう思ったけど、上手くいかないな。


話しで『奴隷』という制度がある事は聞いたけど、僕は持つ気になれない。


僕が奴隷を持つと言う事は、その奴隷に生涯の貧乏を強いる事になる。


それは駄目だろう…その奴隷は逃げられず生涯の貧乏を背負う事になるのだから。


やはり、暫くはソロで頑張るしか無いか…


『どうしたんだい? 浮かない顔して』


頭の中に雪乃様の声が聞こえて来た。


「雪乃様?!」


『ははぁ~ん、さてはその顔は寂しいとか考えているね?』


「雪乃様は何でもお見通しですね!」


『何を言っているんだい?! 僕は、君の神様なんだ!君の事なら何でも解るのさ! 本当は僕が傍に居てあげたいんだけど、それは出来ないみたいだ! だけど、翼くんは水臭いねぇ~な.ん.で.僕に願わないのさぁ~僕は君の神様なんだよ!』


「雪乃様?」


『おやおや、異世界に来て忘れてしまったのかい?困った時の神頼みって言うじゃないか? 向こうでは困った時は僕に拝んでいたじゃないか?』


「そうでした! 雪乃様、寂しいです…助けて下さい!」


『そうそう、それで良いんだ!その願いが叶うように僕が手助けするよ…じゃあね僕の翼くん…チッ、テディスが煩いからまた今度…ね』


僕は異世界に来た事で肝心な事を忘れていた。


僕の神様、雪乃様は日本の神様だった事を…







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る