第13話 ダンジョンと機械的な彼女
「ここ地下一階に出る魔物はほぼ、ゴブリンです!偶に上位種のホブゴブリン、後はオークが出る程度ですね」
「詳しいんだね」
「これもポーターの仕事ですから、下調べは充分です!」
メカニックな部分以外を見ると凄く綺麗に見えるし、どや顔も出来る秘書みたいで可愛い。
「問題はホブゴブリンとオークか、出会ったら逃げた方が良いのかな…」
「ちょっと良いですか?」
「ああっ」
「では、サーチ…うん! 筋肉のつき方と量、骨量…問題なく戦えます…」
サーチ?
鑑定みたいな物なのか?
「サーチってなに、鑑定となにか違うのかな?」
「これはですね、魔法とは違って体つきから筋肉量や骨量を計測しておおよその強さを計るんです!魔法は測れないので純粋な体力だけになりますが…オークまでなら余裕ですから頑張って下さい」
「頑張るよ!」
地下一階は初心者用だから、結構な人数が居るかと思ったが思ったほどの人数は居なかった。
「右、方向からゴブリンが1体来ます!」
「了解」
すぐさま僕は右方向に向かいゴブリンを刺した。
刺した途端にゴブリンは魔石になった。
凄い、魔物が来る方向が解るのか…
「左方向から、ホブゴブリン1体にゴブリン2体!」
「よし、任せて!」
体が軽い…まるで自分がボクサーにでもなった様に軽やかに体が動く。
別にレベルが上がっても居ないのになぜだ…
ホブゴブリンの動きもゴブリンの動きも、隙だらけに見える。
そのまま、吸い込む様に隙に短剣を刺すだけで簡単に倒せる。
自分に何があったのか解らない。
だが、今迄で一番スムーズだ。
あっさりとホブゴブリンもゴブリンも魔石に変った。
「凄いです!ツバサ様、理想的な動きです!」
マヤさんが興奮するのも解る。
体が本当に軽く、何でも出来る様な高揚感が走っている。
今の僕は確実に昨日までとは違う。
「ツバサ様、新手です、ホブゴブリン3体にゴブリンアーチャー1体です」
アーチャー。
弓使いか?
矢を簡単に躱し斬り込みゴブリンアーチャーを真二つにし、そのままホブゴブリンに斬り込んだ。
昨日までこんな動きは出来なかった。
何故できるか解らない。
だが、これはチャンスだ。
ホブゴブリン3体に斬り込んで相手の攻撃を躱しながらそのまま斬りこむ。
こんな動き怖くて昨日までは出来なかった。
だが、今日の僕には出来る。
「ツバサ様、この階層で一番強いオークです」
僕はオーガに負けた。
あの時無病息災のスキルが無ければ死んで居た。
オークとはまだ戦って居ないけど、恐らくはかなりの強敵の筈だ。
だが、怖くない。
こんな大きな豚男が怖くない。
こん棒の動きも、何もかもが大振りで躱すのは簡単だ。
「ぶもぉぉぉぉぉーーーっ」
オークの大振りのこん棒を躱し懐に飛び込む、そしてがら空きのお腹に短剣を刺し裂いた。
魔石はマヤさんが拾ってくれるから気にせず戦闘に集中できる。
オークとはこの程度の物だったのか…
その後、かなりの数のゴブリンやオークを倒した。
地下2階に行けば解らないが、地下一階なら余裕で無双できた。
沢山の魔石を回収してこの日のダンジョン攻略は終わった。
◆◆◆
「凄いですね、これで本当に初心者なんですか?ベテランでもこんな稼げないですよ…」
「そうかな?」
自分でも理由が解らなかったりする…
テーブルの上には今回稼いだ分の袋がある。
今回の稼ぎは凄い事になっていて金貨も数枚混ざっている。
マヤさんは俺の方を見て手を差し出してきた。
「あの…報酬を下さい!」
「大丈夫解っているから…」
そう言って銀貨1枚を取り出すとマヤさんの顔は笑顔に変わった。
だが、その銀貨1枚を俺はポケットにしまい、袋ごと今回の報酬を渡した。
「えっ…」
「それが今回のマヤさんの取り分だよ…これからもよろしくね!」
「あの…あの揶揄っていませんか? ポーターは普通1日銅貨8枚が平均です…そこに色を付けて貰えるかどうかなんです…この報酬は異常ですよ」
僕の神様の雪乃様は『裕福』を嫌う。
今現在の持ち金でも、今迄に僕が持った金額では一番多い。
これ以上、お金を増やすのはどう考えても不安がある。
「お金に困っていたのでしょう? 綺麗な女の子が『何でもしますから』っていう位に、足しになるか解らないけど使って下さい」
「あれですね…恥ずかしい所を見せてしまってしまってスミマセン…私の体のメンテナンスにお金が必要だったものですから」
「メンテナンスって…え~と部品とかの話ですか?」
「はい、部品自体は錬金術で作れるのですが、その材料が高くて困るんです…」
部品? あれ、ロボット?アンドロイド…そうか。
サイボーグ。
サイボーグみたいな物なのかも知れない。
「大変なんですね!」
「その代り上手くメンテナンスをすればエルフや妖精族程じゃ無いですが長生き出来ますから、文句ばかりも言えません」
確かSFの話では400年位…そう聞いた気がする。
「話は解りましたが『何でもしますから』は止めた方が良いですよ!綺麗なんですから…その…大変な事になりますからね」
なんで此処で考え込むのかな…
「ああっそれなら大丈夫ですから…ほら」
マヤさんはスカートを捲り、僕の手をパンツの中に突っ込んだ。
「なっ、マヤさん止めて下さい! そんな恥ずかしい…あれ」
触ってはいけない。
そう思い手を引っ込めようとしたのだが、触ってしまった。
毛の感触も無いし…ツルッとしている。
もしかして…
「はい、生殖器、穴がありませんから、体自体売り物にはなりませんから」
「すみません、解りました…ですが恥ずかしいので手を放して下さい」
「あらっスミマセン! それより今、ツバサ様は私を『綺麗』っておっしゃいましたか?」
顔半分は確かに機械だけど、本当に綺麗だ。
僕が居た世界で動画配信でアニメのキャラクターをAIで現実世界の人間の容姿にするのが流行っていたけど、まさにそれで作られたような容姿だ。
「言ったけど?」
「それなら、私の主人になりませんか?」
「それって結婚って事?」
「違います…種族が違いますから、主従関係の事です! 私のメンテナンスを負担する代わりに私を召使いに出来る…そんな感じです!望むなら子供は出来ませんが、そちらの相手もします…どうですか?」
「マヤさんは凄く綺麗でもてそうですが…それで良いのですか?」
「私はこの世界では嫌われ者なんです…『綺麗』なんて言って貰ったのは初めての経験です…私機械王国ジークの民のせいか、自然を愛するエルフやダークエルフ、精霊族や妖精族からは目一杯嫌われています! 人族からも人間もどきなんて差別されていますから…ふふふっそんな事言ってくれるのはツバサ様だけですよ? 正直に言えば、物凄くモテません」
「僕と一緒に居ると貧乏がついて回るけど良いの?」
「ええっメンテナンス費用さえ貰えれば問題はありません…それにツバサ様は凄く素敵ですよ!」
「そう、それなら構わないけど…」
「それでは、認証システム開始、ツバサを主人として登録を始めます!スキャン開始、網膜データー他取り込み中…認証OK…これよりツバサを主として登録…終わりましたツバサ様、これから末永く宜しくお願い致しますね」
これでロボットじゃ無いんだ。
「宜しく…」
貧乏な生活に付き合ってくれそうだから、問題無いな。
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