第24話 懇願

雨が滴る午後過ぎ、2人は某地区のファミレスに居座っていた。

Bはステーキを頬張り、それをコークで流し込んでいる。Aはコーヒーを頼んだが、不味くて飲めないと放置していた。

20分ほどして、ふくよかな青年がこちらにのっしのっしとやってきた。

「海上自衛隊、磯崎であります!」

「ラビットボマー1号2号です。どうかお座り下さい」

「恐縮です!」

磯崎と名乗った男はステーキをチラ見しながら椅子に座った。

「磯崎さんは僕らをご存知ですか」

「もちろんであります!すごい爆破犯です」

「すごいかどうかは分かりませんが、今度大きい計画を練ってましてね」

「は!」

「ぜひ磯崎さんの力をどうしても貸してほしいんですよ、どうですか」

「なぜ自分でありますか」

Aは両手を顎に持ってきて言った。

「それはですね、夢を持ってるからですよ、持ってるでしょう…将来の夢」

「もちろんです!自分はラーメン屋を一刻も早く開店したいです!」

「すればいいじゃないですか…一刻も早く。B」

Bは大きなケースを取り出した。パカリと開ける。

「これは…!」

「5千万あります。協力してくれたら今すぐお渡ししますよ」

磯崎は明らかに葛藤している様子だった。AとBは不敵な笑みを浮かべている。

「…します」

「え?」

「お二人に協力します!」

「よろしい。では今日から君はCだ」


――――


「これは奴らへの復讐なんです!許可おねがいしますよ」

「いかん、許可できん。危険過ぎるし身勝手な行動だ」

そう言って男は蛙谷に背を向けて去っていった。それを見ていた男はそばにいた男に

「どうしたんだ?」

「罠でおびきよせるために爆弾使用の許可を要請したのさ。まああの調子だがね」

と呆れたように返すのだった。そこへ、

「ラビットボマーからの動画がアップロードされました」

とのアナウンスを受け、捜査1課は急いで対策本部室に駆けていった。


「えーラビットボマー1号でーす」

「2号だよ〜」

「3号す」

「また一人増えてるぞ!」

「えー今回が最後になるほどの大規模なものになるかもしれませんー」

対策本部がどよめいた。

「現在すでに東京都内のあちこち13箇所に爆弾をしかけています。どれもボタンひとつで大爆発」

「ボン!」

「死人がでないためには、こちらの要望を聞いてもらわなくてはなりませんー」

「勝手な事を言いやがって」

「明日12時、喫茶店の「憩い」に蛙谷を座らせておくように。自衛隊がくっついてくるのは勝手だけど、下手に射撃したら爆破させる。なぜ弟は死んだの?と聞かれたらこういうだろう。自衛隊が射撃したのよ。自衛隊が私の弟を殺したの」

「責任転嫁もいい加減にしろ!」

「最後のゲームを楽しもうじゃないか。じゃあ、楽しみにしているよ」

「じゃあね〜」

「狂ってる!とにかく蛙谷には行ってもらうからな!!」

蛙谷は震えて動けずにいた。


――――


爆破の日の前夜。Bは決意の目でバッグにノートパソコンを入れていた。

そこへAがヒョイと現れ、Bになにかを投げてよこした。うまくキャッチして見ると、黄色の栄養ブロックだった。

「何か腹に入れておけよ」

「ありがとう、明日食べるよ」

Aはそれだけ言って、作業場に戻っていった。

これが最後となると、物悲しいものがあったが、なんとか気持ちを乗り越えないといけない気がしたのだ。

「むしろ楽しんでいくよ、A…」

その日は早くに就寝についた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る