第3話 白昼夢

寂れた住宅街をトパーズは彷徨い歩いていた。人のいる気配はなく、遠くでカラスの鳴く声がきこえてくるだけだ。不安な気持ちを抱えたまま、そのまま真っすぐ進むしかないような気がしていた。しばらく歩くと、やや開けた空き地があり、そこに面してプレハブ小屋が建っていた。少年はその建物がどうにも気になり、吸い寄せられるように向かっていった。

気がつくと建物のドアをノックしている自分がいた。反応はない。ドアノブに手をかける。鍵はかかってないようだ。キィィという音がしてドアがゆっくりと開いた。中は薄暗く視界がいまいちだったが、やがて目が慣れてくると、奥に明るい部屋がほんのりと浮かんできた。このまま進むべきか。トパーズは悩んだが、意を決してそのまま明るい方へ、虫のごとく進んでいった。

と、奥にビジネス机があり、椅子にやや大きめの男が座って何か作業をしている。顔から煙を吐き出しているので、タバコを吸っているのかもしれない。誰なんだ。何をしているのだろう。無意識のうちに男のそばへと寄っていく。と、

「誰だ!?」


ハッ――――――!!

気がつくと少年はいつものコーラ瓶に囲まれた部屋のソファに寝転がっていた。

それにしてもリアルな夢だったな。銀色の髪をクシャクシャしながら冷蔵庫に向かい、コーラ瓶を一つ取り出す。

だるくて金稼ぎのハッキングもおっくうだった。TVのリモコンを気だるく握り、スイッチを入れる。

今日もまた大規模な爆破が起こり、緊急特番が組まれていた。今度は国会議事堂が標的らしく、現場では慌ただしく報道陣がひしめき合っていた。専門家は昨日の東京ビッグスクエア爆破犯と同一犯であると指摘している。

同一犯、か…。

東京ビッグスクエアと国会議事堂に関連性は無い。かといってここからメッセージ性も感じなかった。単なる愉快犯か?規模から言って複数犯だろうか?

気がつくとトパーズは犯人像を手探りするのに夢中になっていた。単独犯だとしたら、自分と同じ孤独と闇を抱えているに違いない。そう思うとますます犯人の事が気がかりになり、会いたいという気持ちまでその心は膨らんでいった。

犯行は両方ともトラックが大爆発を起こしている。だから同一犯だと推定されているのだろう。大事なのは起爆の方法だ。スイッチ式のものもあれば、携帯電話式の物もある。もし携帯電話起爆式の場合、何とかしてハッキングできるのではないか。でもそれには次に爆破される場所を知っておく必要があった。

「難しいかぁ…」

そう呟くと、冷えたコーラ瓶に口をつけながら少年はテレビに見入っていた。

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