第31話 躊躇
AとBは連日、規則正しい日と怠惰なスケジュールを繰り返して生活していた。
朝はラジオ体操に行き、その後色んな沖縄料理に手を出して、それから射撃訓練をし、その後はそれぞれ各自好き勝手に過ごしていた。
Bは連日の暑さにバニラコークが進んだ。そして4本目の瓶を取りに冷蔵庫に近づいた時である。
「すいませーん誰かいますかー?」
アジトの玄関から声がした。Bは素早く声から振り返り素早くリビングに足を伸ばす。
「ん?どうした?」
リビングで横になっていたAに対して、Bはヒソヒソ声で囁いた。
「警察、警察!」
「何?警察が来たのか?」
Bは警察に対して面が割れている。
「分かった、俺が出よう」
Aが玄関へと向かっていった。
「あーどうも旦那さんですか?ここにお住まいの」
警官はあっけらかんとした感じでAに対峙してきた。
「はい、そうですが」
「旦那さんもご存知でしょうけど、連続爆破犯の件でして」
「はぁ」
「東京に範囲が限られていたんですが、最新の犯行以来、犯人は東京以外にも潜伏してる可能性が高いらしくてですね、呼びかけているわけですわ」
「そうですか」
Aはポーカーフェイスを決めている。
「まぁこんな辺境の地まで犯人はいないと思うんですがね…」
Aは平静を装っていたが、警察の方から気になる一言があった。
「ちょっと中も…いいですか?」
「中ですか。散らかってますけど」
「かまいませんかまいません!形式的なものですんで…いいですか」
「どうぞ」
警官とAはリビングまで入ってきた。
リビングにはこちらに背を向けたBがくつろいだ風を決め込んでいる。
「おう、同居人さんがいらしたんですな、どうもどうも」
Bは背中を向けたまま手を振った。
「同居人はこの方だけですか?」
「ええ、そうです」
「いいお住まいですなぁ。ほんとに」
「ええ、気ままに過ごしています」
警官はグルリと一周して、ウンウンとうなずきながら、一言言った。
「少し火薬臭いですなぁ」
――――
対策本部に一人の小さな影があった。ほどなくもう一つの影がつながる。
「ご復帰おめでとうございます、冴島指揮官」
冴島と呼ばれた女性はその言葉に振り返り反応した。
「ありがとうございます。犯人に腹部を撃たれ死線を彷徨いましたが、こうして無事復帰することができました。」
「早速ですが犯人の行方で…何か情報ありますでしょうか」
冴島はスーツを引き締めながら、誇らしげに言った。
「今、全国で行方を追っていますが…何点か通報が上がってきております。沖縄なんかからも1件…」
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