第12話 爆弾

薄暗い部屋にあるテーブルを囲むように、男と少年は座っていた。テーブルの上には様々な道具が揃え置いてある。男はコップにある水を一気に飲み干した。真似するように少年も冷たいバニラコークに口をつける。

「さぁこれから爆弾を作っていく。前も言ったが俺がガキの頃に作ってたものだから難しくはない。ただし慎重に慎重を重ねないと大爆発を引き起こす。」

少年は喉を鳴らした。

「いくぞ。まず満タンになった缶に蓋をするんだ。本当なら殺傷力を高めるために釘やガラス片などを入れると良いんだが、まずはこれでいいだろう」

少年はゆっくり蓋をしめてから、カクテルのようにシャカシャカと縦に振った。

「よせ!摩擦で爆発する可能性がある!」

少年はションボリと缶をテーブルに置いた。

「よし、次に缶の蓋にカッターで深く傷をつけろ」

カッターを手にした少年は、蓋に傷をつける。火薬が少々落ちてきた。

「よし、それは置いておいて、次に豆電球のフィラメントの外側を手でゆっくりと剥くんだ」

少年は言われた通りやってのけた。電球ははだかになった。

「それから電球を乾電池ソケット入りの導線とつなぐんだ。つないだらパチンコ玉を動線の先端に付けてみて電球に光が灯ったら成功だ」

「な、なかなか難しいですね……あっ光った!」

「よしいいぞ、今度は電球を缶の蓋の傷つけた箇所に押し込むんだ。慎重にだぞ」

焦りながらも電球を蓋の傷にゆっくり押し込んだ。見た目は良さげに見えた。

「あとはパチンコ玉が通る道を作ってやる。どっちの端にパチンコが転がっても通電するように導線をつなぐ。あとは、蓋をしめてる間はパチンコ玉を固定する仕組みにして、蓋を開くとパチンコ玉が移動するような仕組みにすればいい」

少年は言われた通りに、厚紙を使ってパチンコの通り道を作り上げた。蓋にも細工をしてパチンコ玉を固定しながら閉めた。

「完成だな。黒色火薬爆弾。軽自動車ぐらいなら吹っ飛ぶ。」

少年は黙っていた。

「問題は誰に渡すか、だな」

トパーズは目をゆっくり閉じた――――


トパーズの親はまだ赤ちゃんの頃に交通事故にあって亡くなっていた。

相談の結果、叔母の屋敷で育てられる事になったのだが、叔母は気に入らなかったのだろう。何かにつけては鞭でトパーズを叱りつけた。寝ている時も、ご飯を食べている時も…。

それでも何とか叔母のいじめを耐え抜き10歳になった頃、トパーズは叔母の屋敷を抜け出し、近くにあった孤児院へ助けを求めたのであった。


「おい、大丈夫か?」

男の声で少年は正気に戻った。

「寝たのかと思ったぜ。それで、相手は決まっているのか?」

少年は妖艶にその艷やかな唇を開いた。

「おおよそは、ね」


2日後、叔母の屋敷で爆発が起きたニュースをネットで拾うことができた。警察の見解は、連続爆破犯の模倣犯ではないかと報じている。叔母が死亡したネットニュースを読みながら、瓶のバニラコークを少年は堪能した。

ソファの後ろから少年の両肩に手をかける男がいた。同じくネットニュースを見て、

「やったな!よろしく相棒」

と威勢のよい声で少年をねぎらった。トパーズはニンマリ笑顔で返し、

「相棒じゃなくて友達でしょう〜〜?」

「と、友達?」

2人は薄暗い部屋の中ではうるさくはしゃぎあった。

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