第13話 食事

アジトであるガレージから徒歩7分ほどにある食事の取れるダイナーは、男にとって台所とも言える大事な場所であり、ほぼ毎日通っているほどの常連客だった。

そこに少年を連れて食事に来たのだ。入口のドアを開けるとチリンチリンと乾いた音が鳴った。

「あらいらっしゃい。2人で来るなんて珍しいわね」

「あはは…まあ」

1番隅の席を選んでそれぞれ腰掛ける。

男はメニューを少年に差し出し、言った。

「この食堂は俺にとって大事な場所なんだ。変な事起こすなよ」

「もう〜!僕もう16歳だよ!大人しくしてるよぉ」

「メニューは決まったかい?」

食堂のおばさんがやってきた。

「俺はいつもの」

いつものとは、スクランブルエッグと目玉焼きと、少しの野菜が盛られたもので、ライスもついていた。

「えっと僕は…オムライス大盛り!あとコーラも大盛りで!」

おばさんは紙に書き取ると、奥へと消えていった。

「お前…朝からグイグイいくのな」

男は呆れながら備え付けのフォークを取り出した。

「大丈夫!僕がおごるから!それにこの偽クレカもあるし!」

「はぁ…」

5分ほどで頼んだ料理が運ばれてきた。コーラをいの一番に受け取り、

「これがなくちゃ!ズズー!」

と勢いよくすすり飲んだ。そんな少年を見ながら、呆れたように口を開いた。

「俺とお前はまだ、名前を知らない」

「僕の名前は―…」

「いやまて!俺はお前の名前を知りたくはないし、俺も教える気はない。だからお互いをあだ名で言い合おう」

「あだ名?」

「そうだ…俺の名はAとしよう。お前はBだ。いいな」

「B…なんか変な感じモグモグ」

Bはオムライスを頬張りながら首をかしげた。お互いが食べ終わろうとした時、食堂のおばさんが、コーヒーを持ってきてくれた。

「はい食後のコーヒー」

「あ、どうも」

Aはコーヒーを飲みながら備え付けのテレビに何となく目をやると、そこでは報道番組をやっていた。

「連続爆破犯の特定が難航していることを受け、30分前に対策本部は犯人に対する動画を残しました。」

Bはスプーンをくわえながら驚いている。Aはコーヒーにミルクを入れながらテレビから目を離さずにいる。

「捜査1課の蛙谷だ!いい加減遊びで市民を脅かすことはやめるんだ!正々堂々かかってこい!動画で返事してみろ!以上!!」

Bは流石に焦りながら口にした。

「どうするの…?」

Aはコーヒーを一口すすってから、言った。

「おいそぎ便でうさぎの被り物をもう一つ買ってくれ」

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