第42話 祝杯

AとBは渋谷駅から徒歩6分ほどにあるステーキ店で、早速祝杯をあげていた。

ステーキ店にはテレビが備え付けており、爆破犯の特別番組が組まれていた。

「またラビットボマーによる犯行が行われました。次第に過激さを増しており、警察は全力で逮捕に向け引き続き捜査を続けるとの事ですが、住民による警察への攻撃が後を絶たず、住民の不満もこれ以上なく溜まっているようで…」

Aは美味そうにビールを飲みながら嬉しそうに言った。

「いいぞ。住民も味方にすればうちの仕事もやりやすくなる」

そう言ってタバコに火を付ける。

「でも電気消すの、本当大変だったんだよ〜」

Bはいつも通りコーラを飲んでいる。

「よくやったと思ってるよ。いや実際よくやってくれた!」

めずらしくAが酔っ払っている。

「それで?次の爆破計画は?早く教えてよ〜」

「いやまだだ。みっちり計画を立てないといけないからな」

Aは腕を組んで自慢気にそう言うだけだった。

「ケチ―」

「お、ほらステーキが来たぞ」

そして2人は談笑しながらたっぷりのステーキを堪能したのだった。


――――


今日も満員の対策本部で、冴島が陳謝していた。

「このたびは私のアテが外れてご迷惑をおかけしました」

「いやいや冴島指揮官、誰にも分からなかったことだ。気にはしないで欲しい」

「急ではありますが、私の準指揮官として松島という男を任命したいのですが」

フロアは大いにざわついた。松島はキョトンとしている。

「この男は秋葉ビル街であることを当てていた他、自衛隊の増員も要請した男です。いまでは悔やんでいます。この人物は必ず捜査に尽力してくれると思います」

松島は拍手で迎えられながら、フロアの先頭まで連れて行かれた。

「松島君、大学時代の専攻は?」

「はい、学習院で社会心理学を」

「サイコパスの心理には興味ある?」

「ええ、まぁ」

「では松島君、準指揮官としておおいに辣腕を振るってくれたまえ」

「はぁ…」

松島は心ここにあらずといった感じだった。そんな彼に冴島はやさしく声をかけた。

「頼むわよ、松島君」


――――


「鮫島には悪いことをしたな」

Aはアジトのリビングで、ポツリと呟いた。一瞬部屋が静まり返る。

「もう自衛隊のことは、完全にバレてるってことだよね」

「ああ。もう自衛隊には頼まない。金の無駄でもある。」

Aは伸びをしながら、

「なあに何とかなるさ、そんなチンケな爆破じゃないんだから。ただし」

「危険はともなう。Bにも及ぶかもしれん」

Bはドキッとした。

「そっか、危険なんだね次回は」

「ああ、そのかわり今度のが終わったら俺は爆破をやめる」

「本当?」

「ああ、きっぱりだ。それくらい清々しい計画なのさ」

そう言ってAは作業場に籠もっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る