第41話 爆破
爆破日当日、晴天。
アジトでくつろいでいたAとBだったが、夜の爆破に向けて少しピリピリと過ごしていた。相変わらず瓶のバニラコークを飲みながらノートパソコンを眺めているその先には、現場のマップが映し出されていた。
「大丈夫そうか?」
Aがタバコを吸いながら心配そうにBに問いかける。
「オッケーオッケー」
Bが実に気楽そうに返答する。
それからはしばし沈黙の間が流れた。
――――
皇居の周辺に不気味な軍靴の音が鳴り響いていた。警備を行う自衛隊の群れである。周囲を取り囲むように配備されていた。靖国神社も同様である。
冴島は皇居で指揮していた。無線を口に当て、
「怪しい者は一人も入れちゃだめよ」
と喝を入れている。そこへ一人の男が冴島の元へ駆け寄った。
「何?誰?何か用?」
「あっ捜査1課の松島といいます。あのーそれで用件なんですが」
「早く言いなさい!」
「犯人は今回秋葉ビル街を襲うと思うんです。これは僕の勘なんですが、僕が犯人だったらそうするだろうなって…」
「あんたの勘でどうこうなるものじゃないの!いいから警備につきなさい」
「秋葉ビル街にもう少し自衛隊を動員させてはくれませんか…」
「却下」
「そうですか…では」
松島と名乗った男は群衆の群れに消えていった。
――――
爆破1時間前、アジトにいた2人はバイクにまたがり、渋谷区から千代田区に向けて猛スピードで進めていた。着いた先は秋葉ビル街である。到着すると1名の自衛隊が少し距離をおいた場所にいたが、気にせずAはBのバイクから飛び降り、
「じゃあな」
と言って所定の場所めがけて駆けていった。Bも目的地点に向かうため、バイクを飛ばし歩を進めた。
――――
冴島は秋葉原ビル街担当自衛官に無線で呼びかけた。
「怪しいやつはいない?」
「捜索中ですが、何分人が多くてですなぁ手こずってますわ」
「そう…捜索を続けて」
冴島は口惜しそうに爪を噛んだ。
――――
所定の位置についたバイクに乗ったBは、ヘルメットを取り自前のノートパソコンを取り出した。
「うまくいってくれよ〜」
そう言いながら打鍵する。しばらくすると。
秋葉原全体の電気がシャットダウンした。信号機もコンビニの電気も、ビル街の明かりも一切消えてしまった。
警備に当たっていた自衛官が、無線で冴島に知らせる。
「秋葉原の電気が消えました!ヘルメットのライト以外何も見えません!」
――――
(犯人は今回秋葉ビル街を襲うと思うんです。これは僕の勘なんですが、僕が犯人だったらそうするだろうなって…)
やられた。痛感した冴島は、
「ヘリだけでも秋葉原ビル街に向かって!」
そう言うと無線を地面に叩きつけた。
――――
「遅いんだよ」
待機していたAは爆破ボタンを1つ押した。
ビルがものすごい勢いで爆破した。暗いので炎がより目立った。上層部がやられたのでそのまま下に倒壊していく。Aは次々とボタンを押してゆく。ビルが連鎖的に大爆発を起こした。全てのボタンを押し終えたAは、逃走場所へ向かうためにダッシュした。
爆破を確認したBは、電気を再びノートパソコンで戻した。逃走場所へ向かうため、またメットを被りバイクで向かった。
――――
「電気は復活しましたが、ビル街が大炎上中!至急消防車を…」
冴島は深呼吸してから、言った。
「いい?ヘリの中に裏切り者がきっといるはずよ。追尾ミサイルで破壊しなさい。裏切り者には死を!」
――――
AとBが逃亡地点に到着すると、都合良い事に先頭をヘリが単独で走ってきた。無論鮫島の操縦するヘリである。
「助かった」
もうすぐABの元へ到着しようというその時である。ヘリが大爆発を起こしてこちらに落ちてきた!
「逃げろ!」
できる限りの速度で落ちてきたヘリを避けたが、ギリギリであった。
「B、大丈夫か?」
「う、うん何とか」
「バイクで逃げるぞ」
2人は急いでバイクに乗り込み、アクセルを思いっきり吹かせた。
順調に走っているようにみえたが、後方からヘリが追っかけてきている。そしてヘリはミサイルを1発撃ちはなった。
「追尾ミサイルだ!トリッキーな運転をしろ!」
「トリッキーって…」
Bはジグザグな運転をしてから、ミサイルがここぞという時に急に通路を横に曲がった。後方から爆発音が聞こえる。
「よしやった!そのまま直進しろ!」
Bはめいっぱいの速度で千代田区を後にした。
結果、ラビットボマーはまたしても爆破に成功したのであった。
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