第21話 計画
今夜の食事もフィットチーネにミートソースをかけたパスタだった。食料をネットでまとめて買うから、こんなことになってしまう。まあ2人とも馬鹿舌だからさして問題ではなかった。
Bがソファにだらしなく腰掛けノートパソコンのモニターを眺めていると、Aが作業室から手に丸めた紙をもってやってきた。BがAに視線を流していると、Aはテーブルまで歩をすすめ、テーブルに持っていた紙を広げながら言った。
「爆破計画を始めまーす」
お、と言ってBはノートパソコンをほっぽり投げ、テーブルに座った。
「計画は簡単、表の入口から入るのと、裏にトラックを置くのと2本立て」
「そんなに簡単にいくの?」
「石田首相の事!多分テロには屈しないとか何とか言って官邸に留まるとみている。その2!首相は夜、血税でピザを頼んで食うのが好き」
「へーそうなんだ」
「だからピザ屋の制服を調達してほしい」
「げ!僕がいくの?」
「お前にトラックの運転ができるか?」
「むーー…怖いよ」
「大丈夫、動画を見てるのは警察だけじゃない。だが、首相がピザを頼まなかったら任務は中止だ。頼むぞ相棒」
Bは不機嫌そうにバニラコークを飲み干した。
――――
19時半。首相は予想通り首相官邸に身を置いていた。AとBは官邸から少し離れた場所で待機していた。
「問題ないか」
「問題なし!」
2人はケータイでやりとりしていた。官邸周辺には警官がウヨウヨいる。真っ赤なサイレンがとても眩しい。それでもBは制服姿のまま我慢して待機した。
と、官邸内の秘書が電話でピザを頼んでいる所を、盗聴で傍受した。
「B!ピザを頼んだぞ!すぐに官邸前までいくんだ」
そう言うとAはトラックのキーを回した。
Bはへなへなと官邸入口まで向かった。当然警察に止められる。
「何者だ!?」
「えっと、ピザハットリです。お届けに上がりました」
「確認するからちょっと待ってろ」
警官は官邸の中に消えていった。
心臓がバクバク言っている。ピザの中身は当然爆弾だ。中を確認されたら一巻の終わりである。
「確かにピザを頼んだらしい。中に入って置いていってくれ」
Bは駆け足で官邸の中に消えていった。
Aは官邸の裏に軽トラを止めた。警察が数人やってくる。
「おい!お前それは何だ!」
Aは扉を開け、扉ごしに銃を数発発砲した。3人の警官はたちまち銃弾に倒れた。
Aはケータイを出し、
「すぐ爆発させるから、早く避難しろよ!」
「了解」
Bからケータイを受け取ってから、秘書にピザをやや乱暴に渡した。
「またお願いします」
帰ろうとした途端、秘書がピザの中身を確認した。
「きゃああああっ」
Bはダッシュで官邸を後にしたが、数ある警官に囲まれてしまった。
まずい!そう思った瞬間、官邸外から火炎瓶が投げ入れられ、警察の足に当たり燃え上がった。
「ひいぃっ!!!」
「こらあ石田ぁいいかげんにしとけよ!」
官邸外には政治に不満を持つ市民達でひしめきあっていた!市民は次々と火炎瓶を投げつける。警察は市民の鎮圧に数を割いた。今だ!この混乱に乗じて入口を後にしようとした時、警察の一人が、
「逃がすか!」
と、のしかかってきた。あまりの体重差に動けないでいると、謎の影が一瞬通り過ぎたかと思うと、警官は息絶えていた。
「誰!?」
言われた影は、腕にある鉤爪をシュンとしまい、
「あなたの仲間よ」
と言ってBに近づいてきた。影に見えたのは全身黒いレザー姿だったからだ。
Bはしばらく謎の女を眺めていると、ハッとした。
「もうすぐ爆発する!早く逃げなきゃ!」
「わかったわ」
2人はありったけの力で走り出した。途中警察に数名遭遇したが、女がハイジャンプし、鉤爪で仕留めたのでもたつくことはなかった。
轟音。
軽トラが無事爆発したようだった。
「ここからはバイクだよ。平気?」
「後ろにまたがるの大好き」
Bは制服の帽子を放り投げると、バイクのエンジンを吹かして走り去った。
――――
3人は無事にガレージに着いた。見事任務を成し遂げた。
Bは冷蔵庫を開けて、瓶のバニラコークを2本取り出して女に1本渡した。
「あら、ありがとう」
冷えた飲み物を飲んでいると、Aがやってきた。
「ああB、彼女は僕を助けてくれた…」
Aは躊躇なく女に銃を頭と胸に2発食らわせる。女はどうと倒れて即死した。
「どうして!」
「1、仲間を勝手に連れてくるな。2、死体の処理はBがやれ」
「………」
「ごめんよ…僕は間違っていた。彼は普通じゃないんだ」
その夜、Bは泣きながら血で汚れた床を一生懸命拭き続けた。
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