第47話 膠着

アジトでAはテレビに釘付けになっていた。カシューナッツを食べながら、コナのコーヒーを飲んでいる。

「こんな状況なのに、コナのコーヒーうめぇぇ」

一人うめきながらもテレビから目を離さずにいた。報道では魔の24時間という名称で呼んでいるらしい。何が魔の24時間だ。Aはヘドの出る思いでテレビを見続けるしかなかった。

「耐えろよ、B…」


――――


夜8時―――

自前で食べ物を頼めるとのことなので、バニラコークと、取り調べと言えばカツ丼だろうと思い頼んだ。

勢いよくがっついてる取調室の隅の椅子に、松島はタバコをくわえながら憔悴しきって座っていた。

「どうしてあの爆破犯の事が好きになれるんだ…。やつは爆破で千人以上の死傷者を出してるんだぞ…しかも何かしら要求してくるわけでもなく、動機もない。愉快犯のサイコパスなんだ」

Bは黙ってカツ丼にがっついている。

「聞けば君もそうとう腕のたつハッカーだそうじゃないか。銀行から少しづつ金を抜いて生活しているとか。君もまた、孤独なサイコパスだと言える。これは孤独なサイコパス同士の甘い化学反応なんだ」

「そうかもね」

Bはバニラコークを飲み干してから、言った。

「でも僕らの仲を割くことはできないよ。無理。早くかたして」

タバコを吸っていた松島は、灰皿にタバコを押し付けて叫んだ。

「いい加減目を覚ましたらどうだ?奴はBのことを利用してるだけだ、それがわからないのか」

「確かに金遣いは荒いけど、利用とかそんな事考えてないはずだよ」

松島は深いため息をつき、また新しいタバコに火をつけて、

「まだまだ尋問は続くぞ。寝るなよ」

そう言って勢いよくドアを閉めた。また退屈な40分が過ぎるのだった。

40分経った後、例の女性と松島の2人が取調室にやってきた。

「ご飯は食べた?」

「美味しかったよ」

「そう」

「これから大事な話をするわ」

女性はBの元にぐぐっと寄り気味になった。Bは少しのけぞる。

「次の爆破先よ。吐きなさい」

「知らない!僕もしらないんだって」

「そんな事はないでしょう、素直に教えなさい」

「知っていたとしても教えないよ!Aが追い詰められるじゃないか」

「A?」

「彼の名前だよ!僕は彼の名前すら知らない!」

女性と松島はお互い顔を見合わせた。

「じゃあ本当に次につながる爆破の件は何も知らないのね?」

「知らない!」

松島はタバコをほおりなげた。

「ありえるんでしょうかねぇ!」

「相棒にも直前にしか教えないスタイルなのかもしれないわね。忌々しい」

そう言って女性は爪を噛んだ。

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