第48話 開放

デパートの裏口の螺旋階段をAとBは駆け上がっていた。ほとばしる汗。やがて広い場所に出たが、自衛隊が待ち受けていた。ぐるりと囲むように配備された自衛隊の銃が走る。Aは上着を脱ぎ捨てた。体には爆弾を巻いている。

「ただで死ぬかよッ!」

「だめだA!だめだーっ!!」

ハッとBはそこで取調室で目覚めた。また嫌な夢を見た。嫌な汗をかくのは予知夢の面がいつも少しあるからだ。

Bが顔を覆っていると、冴島と松島の2人が取調室にゆっくり入ってきた。

「まだやるのかい」

「いえ、もう朝7時です。お話は充分聞きました。どうぞお帰り下さい」

冴島はBに寄り添い、

「よくやってくれましたね」

そう言ってBの肩に手を置いた。


外に出ると警察と市民が揉めていて騒乱騒ぎになっていた。市民は完全に警察を信頼してないらしく、今回の釈放も納得のいかない者が多いらしく、不満を持つ市民が火炎瓶を投げ抵抗するのだった。Bは警察にうながされて何とか出口へと出ることができた。Bはそのまま電車で誰にストーカーされる事もなく、アジトについた。


「B!」

AはアジトでBの帰宅を待っていた。

「A!」

思わずBはAの懐に飛び込んだ。

「Aの事は何にも喋らなかったよ…」

思わず涙がこぼれ落ちる。

「よくやった。ん…」

AはBの肩に付いているハエ程度の大きさの光を放つ何かを見つけた。

Aはそれを激しくむしり取り、投げ捨てそれを思いっきり踏みつけた。

「B!今すぐここを離れるぞ!!」

「えっ急にどうしたの…」

急にガラスの割れる音がした。何だろうと思うヒマもなく銃声がこちらへ襲ってきた。

「伏せろ!」

2人は慌てて床に崩れ落ちた。銃声は次第に近く大きくなる。

「伏せながら出入り口まで向かうぞ!」

ここで初めて、自分の服に位置を知らせる発信機が付いている事を知った。

冴島という女性の仕業だ!

盾を持って迫ってくる自衛隊員にAは蹴りを入れながら、

「B!バイクを早く持って来い!」

そう言ってAは3Dプリンターで作った拳銃で自衛隊員の頭をヘッドショットしていった。ふらふらとBはバイクのある場所まで及び足で向かった。

僅かの間だけ銃声が止んだ。バイクで逃げる最後のチャンスだった。Bがバイクのアクセルを吹かす。Aが必死に駆けてBのバイクに飛び乗る。再び強い銃声が聞こえてくる。その隙間を縫うようにBのバイクが火を吹き、アジトをなんとかかんとか離れる事が出来た。

「どこに向かう?」

「そうだな…足立区とかそこらへんだ。急げ!」

2人を乗せたバイクは夜の風景にすぐに溶けて消えていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る