第46話 対峙
「ほい、ミネラルウォーター」
そう言って松島という男はペットボトルをBの前に置いた。
「コーラはないの?」
「コーラはさすがにないな。でもほら、キンキンに冷えてるから」
喉がとても乾いていた事もあって、Bはすぐペットボトルに口をつけ半分ほど飲み干した。
「言っておくけど、尋問が24時間を超えると主要13箇所のサイトにランサムウェアが作動する仕組みを付けて来てる。念の為に言っておくよ」
松島は真剣な顔をしてBの言葉を聞いていたが、
「そうか、分かった。君はハッカーか?」
「そうだよ。爆破の知識なんてこれっぽっちもないよ」
「秋葉の電気消したのは君か…さぞかし有能なハッカーなんだろうな。まぁいいそれはまた後で」
そういって松島は取調室を出ていった。退屈な20分を過ごしたのち、今度は女性と松島の2人組が取調室に入ってきた。女性の方の目は完全に怒っている。2人はBの対面に座った。
女性は開口一番、口を開いた。
「それで、あの爆破犯とはどういう経緯で一緒に動いてるの?どこで知り合ったの?」
「それは」
Bはそう言って口をつぐんだ。
「黙ってちゃわからないわよ僕ちゃん?」
「それは…最初僕から興味をもったんだ。連続爆破する人ってどんなんだろうって」
「あなたから接近したってこと?」
「そうだよ」
女性は立ち上がり数歩歩いた。
「それは分かったけど、そもそもどうして一緒に行動してるの?彼の手助けもしてるんでしょう、答えてくれなくちゃ困るわ」
「それはっ…!」
なかなか答えを出さないBに、途方に暮れて思わず松島はタバコを取り出した。
「もう一度聞くわ。何で一緒に行動してるの?」
「好きだからさ!それ以外にない!それに大人はいつだって汚い!」
しばし取調室内部が凍りついた。松島のタバコの先端から灰がこぼれ落ちる。
「好きっていうのは…いわゆるどういう意味の好きなのかな…?」
「自分でも分からない…どういう意味なのか…でも彼の全てが大好きなのさ!」
再び取調室に沈黙が流れた。松島はペットボトルの水を飲み干し、言った。
「トパーズ君、こういう事は考えられないかな。君は接近しなんだかんだで逃げられなくなった。恐怖のあまり敵である彼に同調するような味方になるような行動を自然と自ずから示すようになったと。これは心理学にある行動なんだ」
「そんな事ない。僕は彼の気持ちを好きになったんだ」
同じくタバコを吸っていた冴島が思わず聞いた。
「もしかして彼と性的関係も結んでるの…?」
「冴島さん!!」
「性的関係なんてなくても、2人はつながってるんだ」
また取調室はだんまりとし、気まずい時間が少しの間だけ流れた。
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