第23話 人質
ラビットボマーからの動画が来たとして、対策本部の班はすぐに満員になり固唾を飲んだ。
県警だけではない。市民の誰もが動画に釘付けになっている。
動画は誰かの鳴き声から始まった。
「えーラビットボマー1号でーす」
「2号だよ〜」
「鳴き声がうるさいかもしれないけど、がんばりまーす」
「がまんしてね」
「うわぁああんん!!!!!!」
対策班は思わずヘッドホンを乱暴に取った。
「なんなのかねこれは!」
「まずは様子を見ましょう!」
「えー捜査1課の蛙谷君、最近出勤してないようだねぇ」
「怠慢だよねぇ」
「そこで、蛙谷くんにちゃんと仕事してもらえるよう、今日は仕掛けを用意しました。この子は蛙谷くんの子、翔ちゃんです。今夜20時までに蛙谷くんが東京国際埠頭に来なかったら…」
「ボン!!」
「果たして蛙谷くんは子供を捨ててまで仕事をさぼるのかどうか、乞うご期待です」
「動画見てないなんて言わせないよ―」
ラビットボマーからの動画は以上だった。
「いかが致しましょう…?」
「うむ…今回の件はあくまで蛙谷自身の問題であるからして、警察が動くことはないだろう」
「でもラビットボマー絡みですよ?」
「知らん。蛙谷に全ての責任を負わせるだけだ…」
夕方の17時になった。まだ蛙谷は来る様子はない。
「んー本当に雲隠れする気か?あいつ…」
「子供を犠牲にしてまで?信じられないよ〜」
Bはウサギの被り物をめくりあげ、瓶のバニラコークを口にしながら哀れんだ。
カウントダウンは報道でも行われていた。
「今だ蛙谷という男は姿を見せておりません。当番組は引き続き…」
Aはウサギの被り物をしきりに直している。どうやら息苦しいようだ。
「こちとら子供を爆破四散する趣味は無いんだが…」
19時50分になった。報道では、
「悲惨な映像が流れるかもしれませんがご了承下さい」
と市民に呼びかけている。
残り5分。Aは深い深いため息をついた。その時。
「瞬!そこにいるのか!?」
蛙谷が泣きながら子供にすがった。
「パパ―っ!」
「馬鹿野郎!東京国際埠頭は広いんだぞ!もっと詳細な場所を教えるべきだ!とにかく爆弾はやめろ!」
再びラビットボマーの動画がアップされた。階段を駆け下りながらスマホで撮影している様子だった。
「と、いうことで蛙谷は無事仕事に返り咲きました。こっちとしても嬉しいかぎり。じゃーねー」
という短い動画を残してラビットボマーは消えた。
対策本部もホッとしたようで、
「解散!」
と一言言うと、全員は対策本部のフロアから消えていった。
ウサギの被り物を取ったAは悪魔のような悪い顔を見せていた。
「いいぞ蛙谷…お前には上にいてもらわなくちゃ」
BはただただAの態度に怯えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます