第36話 自衛隊

アジト内でノートパソコンとにらめっこしてる青年がいた。画面には自衛隊のデータベースが流れている。青年は自衛隊名簿をハッキングしているのであった。そこへくわえタバコの男が机に手を付き、ノートパソコンのモニターを覗き込んだ。

「何とか味方にできる航空自衛隊員が必要だ。何とかいけそうな人物を見繕ってくれないか」

「探してるけど…むずかしいねぇ」

「ほれ、バニラコ―ク」

そう言ってAは瓶をBに差し出した。

「お、ありがとー」

Bは素直に受け取った。

「あの、次回の爆破先だけど」

「んん?」

「どこにするかもう決めてるの?」

「ああ。でももうちょっと打ち合わせは待ってくれ、すまない」

「そう。別にいいけどさ」

そう言ってAはうまそうにタバコを吸いながら作業部屋に戻っていった。

Bはため息を吐きながら、モニターに視線を戻した。

「あまり階級の高い人はなびかないな…階級の低い人で、ヘリを任されてる人がいいな…これはもうCに呼びかける方がまだマシかも」

しばらくモニターを眺めていたBだったが、ふと気になる人物を見かけて、流れているデータベースを止めた。

「これは…いいかも!」

 

Aは作業場で空を見つめながら考え事をしていた。

「千代田区内…神に逆らうべきか否か」

そう言いながら新しいタバコに吸い直した。


――――


ファミレスの帰りの車内、冴島は助手席で外の景色を眺めていた。おもむろに胸ポケットからタバコを取り出し、口にする。

運転手の刑事が言った。

「あれ、冴島さんタバコ吸いましたっけ」

「吸い始めたのよ」

しばらく沈黙が流れた。

「昨日、嫌な夢を見たのよ」

「どんなです?」

「…皇居が爆破される夢」

「それは……」

冴島は2本目のタバコに火を付ける。

「胸騒ぎがしてしょうがないのよ、次回の爆破対象」

運転手は苦笑いで応える。

「さすがに犯人も分をわきまえてるでしょう」

「そう?国会議事堂も成田空港も容赦なく爆破した人間よ?」

「はぁ…」

タバコの灰が落ちたのも構わず冴島は興奮ぎみに語り続けた。

「数百人の死者を出しても、なえるどころかどんどん対象が過激になっている人物よ?私はあり得ると思っている。だから自衛隊も多めに配備はするけど…」

「とにかく爆破対象が広すぎるのが難点ではありますね…しかも実は千代田区内じゃないかもしれないですし。卑怯だからな犯人は」

冴島は流れる景色を眺めながら呟いた。

「今度は最悪な事態を避けなきゃいけない。それには自衛隊を味方に付けるのをやめさせなきゃいけないわね。何とかしないと…」

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