第35話 ファミレス
渋谷駅近くにあるファミレスに、サングラスをかけた2人の姿があった。向かい側同士ではなく、隣り合わせで座っている2人組だ。うち一人はコーヒーを、もう一人はビッグサイズのコーラを飲んでいた。談笑後まもなくして、もう一人の男が2人の元にやってきた。
「航空自衛隊、空曹長の前島です」
やってきた男は自らをそう名乗った。
「ラビットボマー1号2号です。実は折り行ってお話があるのですが…」
「あなた達が爆弾魔か」
「ひどい言われようだが、まあそうとしか言えない。実は…」
「何の話か知らないが、爆破犯に加担するつもりは一切無い」
「…そうか…残念だ」
そういうとAは懐から拳銃を取り出し、胸めがけて発砲した。発砲音で周りがざわつく。ウェイトレスが一人寄ってきて、悲鳴を上げた。Bは残りのコーラをズズズとすすった。
「顔をみられたからには、仕方ないもんでね」
そのまま2人は席を立ち、ファミレスを後にした。
――――
捜査1課のオフィスは今日も怒号と喧騒の中にあった。その中の一人の刑事が叫んだ。
「渋谷のファミレスで男が撃たれた!被害者は自衛官!誰か行ってくれないか」
それを聞いた女性が一人、手を挙げた。
「私が行くわ」
「冴島指揮官はいけませんよ、この場で統括していただかないと…」
「爆破日まではまだ時間があります。気になるのでぜひ行かせて下さい」
ファミレスを訪れると、一人の男の死体があった。すでに警察が動いており死体現場を封鎖している。封鎖線をまたいだ冴島は、慎重に死体に近づいた。心臓付近を1発拳銃のようなもので撃たれて即死していた。
「あーあなた、聞き込みは済んでる?」
「今、ウェイトレスに聞き込みしています」
冴島は第一発見者のウェイトレスの元に駆け寄った。
「あなたが第一発見者ね」
ウェイトレスは泣いていた。
「…はい、そうです」
「犯人がどんなやつだったかは覚えてる?」
「…サングラスをしていた2人組でした。顔はよく覚えてません」
「どんな風貌だったかはわからないの?髪色とか服とか」
「一人は黒髪で、もう一人は銀髪でした。確か、ですけど」
「着衣は?」
「一人は白い上着、もう一人は黄色いTシャツだったと思います」
「やはりそうだわ、私を撃ったやつに違いない」
冴島は爪を噛みながらそう言い放つと、ファミレスの出入り口に向かって駆け出した。
「犯人はもう東京にいるわよ!都内の住民の聞き込みを徹底強化しなさい!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます