第37話 ゲット

渋谷から徒歩10分ほど行った所にあるファミレスに、サングラスをかけた2人組の姿があった。一人はコーヒーをまずそうに飲んでおり、もう一人は美味しそうにコーラをストローですすっている。15分ほどして、男がやってきて2人の向かいの席に座った。

「航空自衛隊空士長の鮫島です」

男はそう言った。

「ラビットボマー1号2号です。ご存知ですよね?」

「はぁ…あなたがたが」

「突然ですが、あなたはお仕事がつまらないと感じてらっしゃるでしょう…いやわかりますよ」

「はぁ…まぁ面白くは感じてません」

「そうでしょう。退屈で、仕事に張りがない。刺激を欲しがってる、そうじゃないですか?」

「B、あれを」

AがBに指示すると、Bは重いアタッシュケースをテーブルに置き、開けた。中には5千万きっちり、ひしめき合っている。

「鮫島さん、次回の爆破計画のお手伝いをしてくださるなら、この5千万は今すぐあなたのものだ。輝きたいのなら、どうか受けてもらえませんか」

「5千万…」

鮫島は大いに心揺らいでいるようだった。時間を埋めるようにAはまずいコーヒーを口にした。

「どうです鮫島さん、決心つきましたか」

鮫島は決意を固めたようだった。

「…分かりました。協力しましょう」

Aは安堵した。固い握手をかわし、

「よろしくお願いします」

と言い合った。これでまた一人、自衛隊員を獲得できた幸せをAは噛み締めていた。Bはコーラの残りを飲み干しながら、

「よかったね」

とだけ言った。

Aはコーヒーを置き、鮫島に丁寧な口調で語りかけた。

「詳細は後で話すが、爆破した後現場にいる俺らをヘリで拾って欲しいんだ。それだけのことさ」

「お安い御用です」

3人はしばらくファミレスで談笑していた。


――――


対策本部のフロアで冴島が弁舌を振るっていた。

「爆破犯は前回の事件で、自衛隊のヘリに乗って逃亡、行方不明となりました。そして今回の自衛隊員銃殺事件…おそらく味方に取り入れる交渉が失敗したものと思われます」

「自衛隊員を撃ったのは爆破犯本人ということでしょうか?」

「おそらくそうでしょう。そして次回もだれか自衛隊員を味方に引き入れている可能性があります。ヘリを使うでしょうから、航空自衛隊でしょう。充分に警戒して下さい」

「裏切り者の自衛隊員を見つける手段はないんですか?」

冴島はちょっと間をあけてから、マイクを持ち直した。

「一人ひとりと面談をして聞き込みをするしかないでしょうけど、難しいと思います。とにかくいち早く発見して犯人を追い詰めましょう」

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