第14話 挑戦状

捜査1課の蛙谷とその右腕の男2人は、都内某所にある立ち食い蕎麦屋にいた。

「さすがに大胆すぎじゃなかったですか」

口に入れていた蕎麦を半ば無理やり口の中に押し込んで蛙谷は言った。

「何がだ?」

「犯人を挑発するような動画ですよ…。奴はまだ若い。動画を観てより大胆な行動を取ってくる可能性はありえませんか」

「何情けないことを言ってるんだ!俺達は完全に舐められてるんだぞ!ああまでしないといけない相手なんだよ。相手の冷静さを削ぎ落とす事は重要なんだ!」

怒鳴り散らしている男に他の客の視線が集まる。蛙谷は声のトーンを落とし、天ぷらを口にほおりこんだ。

「とにかくだ、これは警察に対する挑戦状なんだ。舐められていたら終わり、ごっそさん」

2人はスマートに蕎麦屋を出た。外は視界が揺らいでいる。背中に汗が伝ってくる。まだ夏まっさかりの東京なのであった。

店を出てすぐ前に巨大モニターがそびえ立っている。右腕の男はすぐに事に気づき隣りにいる蛙谷を突いた。

「蛙谷さん、モニター観て下さい!」

「…ん」

顔を上げモニターを注視すると、ニュース速報が流れていた。

「…警察からの動画を受け、爆破犯と思われる返答の動画が先程投稿され話題になっております」

「かかったか!」

蛙谷はまんざらでもない顔を見せながら、そのままモニターを眺める。

「…それでは映像をどうぞ」

映像が切り替わると、暗い場所に2人のうさぎの被り物をした人物がモニター越しにこちらをみつめている。

「どーもーラビットボマー1号でーす」

「2号でーすっ!!」

右腕の男は吐いて捨てるように、

「野郎、やっぱり複数犯だったか!」

と言った。蛙谷は黙ってモニターを見つめている。

「えー警察さんからの挑発がきたのでお返事します。はっきり言って勘違いしてませんかー?手綱を握ってるのは完全にこっち側なんですけどー?」

「なんですけどー?」

「どうやら切羽詰まってるようなので、一つドカンとやってやろうかと。2号、どこがいい?」

2号は両手を広げてブーンと1回転してから、

「うーん、東京都庁なんてどうかなー?」

と、楽しげに言った。

「そうか。じゃーそこに決定します。それだけじゃ可哀想なので、爆破するフロアのヒントをあげます。こちら」

一瞬なにか文字が見えたが、すぐに消えてしまった。

「おい、さっきのメモしたか?」

「無理っすよすぐ消えましたもん」

「くそ、すぐ署に戻るぞ」

モニターではウサギ2人が手を振っている。

「今度はプルトニウムがドオンといくかもよ?頑張ってねー」

「ドオン!」


――――


急いで署に戻った2人は対策本部に入り、すぐに例の動画を準備させた。

「一瞬だけ写った画像で一時停止しろ」

動画を写した男は、早急に動画を早送りしてから一時停止させた。

そこには数式が記してあった。しばらく集まった男数人はその数式を睨むように見つめた。

40−16÷4÷2

53−(8+9×3)÷(13−24÷3)

蛙谷は男の一人に訪ねた。

「答えはわかるか?」

「えーっ文系だったもので…」

「大学出てて、情けない!いいか、40ー16÷4÷2=40−4÷2=40−2=38だ。1つ目のフロアは38階となるな、同じく2つ目も解いていくと46階になる。すぐに爆破分析犯に知らせるんだ!」

数人の男がフロアからダッシュで出ていった。

「しかし…」

「はい?」

「簡単すぎる。こんな楽に解けるヒント通りに奴らはやってくるのか…」

「仮に都庁がデコイで、実際の爆破が別の所であったとしても、広すぎて我々の手には負えません」

「ふむ…」

蛙谷は数歩歩いて立ち止まった。

「どの道、手綱を持っているのは奴らだということ、か…」

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