第15話 白黒
Bは手に持っているかき氷をスプーンで口に運んだ。頭の中でペンギンが泳ぎ回る。何口か口に運んでいると、例の頭痛が襲ってきて悶える。そのタイミングでAがやってきて、
「おいB」
と呼びかけたが、頭痛の続いてるBは無理のポーズを精一杯して意思疎通を試みた。
「今に限った事じゃないが、変な奴だな。食堂いくぞ」
それだけ言うと、とっとと部屋の向こうへと消えていってしまった。
「ハァ…ハァ…ちょっとひどいよ〜」
痛みの取れたBは慌ててAの後を追って小走りした。
「そろそろ綿密な計画を練っていこうと思う」
食堂内のテーブルに収まった2人は、注文も終え一息ついていた。
「計画ぅ?」
Bはそう言って出された水を一気飲みした。
「建物内のシステムは全部ダウンロードしてるよ。どこのドアも開けることができるし、どこのカメラも見ることができる」
「そうか。そこのところは頼りにしている。今回使う爆弾は…」
言いかけた所で、頼んだ料理が運ばれてきた。
「どうも」
「今日もうまそー!」
しばらくは静かに料理を堪能していた。お腹がいっぱいになると、
「ふーご馳走様!」
Bはコーラを全て飲み干した。Aは紙ナプキンで口周りを拭いてから、再び口を開いた。
「今回使う爆弾はこれだ」
持っていた箱から、ブニョンとした物体をBに見せた。
「うわーなにそれ、プニプニしてて…まるでスライムみたい」
「よろしい、スライム爆弾と名付けよう。今度はこの爆弾をあちこちにくっつけて回る。このスライムは手で触っただけではそれほどではないが、建物にはすごい吸着力をみせる」
「へぇー良さげだね!」
「で、制服のほうはどうだ?」
「ぶらっくマーケットで購入済みだけど、サイズの方は…多分合ってると思う」
「まあよし、明後日、朝食を食べてから決行だ!」
「労働担当なんだからいっぱい食べて頑張ってね!」
一席から笑い声がもれた。そんな様を店主のおばさんが見てニコニコ笑顔でいるのであった。
――――
東京連続爆破犯対策本部の会議を終え、蛙谷と右腕の男の2人は廊下を足早に歩いている。そこを後ろからさらに足早にやって来る小男がいた。
「蛙谷さん!」
「ん?爆破分析チームじゃないか、どうした」
「犯人の予告にあった38階と46階の件ですが…」
「どうした」
「都庁の建築上、非常にもろい箇所、痛点でありまして」
「なんだ、そうなのか。なぜ対策本部で発表しない?」
「なんとなく内々で済ませたい話でその…」
「分かった分かった!もういいぞ」
蛙谷の会話を横目に冴島氷子が通り過ぎる。冴島は信頼出来る5名をつれて小会議室に入った。
「例の犯人からの動画、私は何度も見ました。そして爆破先は都庁ではないのではないかと思い始めました」
「それはどういう事ですか?」
「動画の中で、1号が爆破先を聞かれた時に、2号は飛行機が飛んでいる動作をしました。」
「まさか犯人は…」
「そう、本当の爆破先は都庁ではなく、飛行機なのではないかと思ってます。そして数式ですが、38と46を足すと、国際便のパラオ直行便84便となるのです。」
「なるほど…!」
「良いですか、都庁にはこれでもかという警官が向かいますが、私達はこの6人と爆破処理班2人だけで空港に向かいます。このことはどうか内密に願います!」
会議室を出た6人は、何事もなかったかのように散っていった。
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