第7話 一夜明けて
蒸し暑さと鳥の鳴き声で、トパーズはソファで目を覚ました。黒い上着とバッグがテーブルに置いてある所を見ると、どうやら夢でも無いらしい。ソファから身を起こしてしばらくボーッとしていたが、5分ほどしてから冷房のスイッチを押した。冷房の風を浴びた少年は、今度は完全に身を起こし冷蔵庫から瓶のコーラを1本取り出して、飲み干した。口が相当乾いていたのだろう。
テレビを付けたら間違いなく爆破犯の話題でひしめき合っているのは間違いなかった。瓶をもう一本取り出して、ノートパソコンからアクセスしてネットニュースを選び読む事にした。当然これでもかというくらい爆破犯の記事で溢れている。千葉県庁舎を21時2分に車爆弾で爆破、建物は大破、死者28名と書かれており。警察を幕張パレスに張り付けさせての犯行との事だった。コーラ瓶を傾ける。しばらくいくつかの記事を漁っていると、その中の一つに目が釘付けになった。
犯人が早くも犯行声明?動画をアップ。
トパーズはこれ以上ないくらいの笑顔で、頭をクシャクシャさせた。犯人は一体どんな人なんだろう。
早速動画サイトへ飛び、検索してお目当ての動画を探し始める。肩透かしを食らうほどその動画はすぐに見つかった。やはり拡散力がある動画だからだろう。コーラで喉を湿らせてから、再生スイッチを押した。
ウサギの被り物をした男が背中を向けて椅子に座っていたが、クルリとこちらに顔を向けた。謎の女性ボーカルのBGMが流れている。
「えー。ラビットボマーだ。警察の諸君の無能さが、昨日よく分かったよ。たった一人の爆破犯の言葉にすがりついて、結局はこのザマだ。」
動画は警察への挑発から始まった。
「俺はどこにでも爆弾を仕掛けられるぞ?しょうがないから今度は本当の爆破先を予告しよう。場所は新宿、人混みで溢れる場所。しかしライトが消えた悲しい場所もある。そこを俺の爆弾で明るくさせてやろう。8月1日、21時決行だ。では健闘を祈る」
トパーズは始めまで戻しながら、もう一度動画を眺めた。
「新宿はどこも人で溢れてるけどなぁ…」
少年はソファに寝そべりながら、ぼそっと呟いた。
「ライトが消えた悲しい場所――――」
少しだけ考えたが起き上がり、
「仕事しながら考えるか!」
そう言って少年は椅子に腰掛け、キーボードを打ち込むのだった。
――――
東京連続爆破犯対策本部のフロアから出てきた冴島を止める刑事がいた。
「冴島さん、あの動画どう思います?」
「目立ちたがりやの犯人のものと思っているわ」
「で…どういう意味っすかね、あれ」
「まだ断定はできないけれど、ライトの消えた云々は、閉店した場所だと睨んでるわ」
「おお!さすが冴島さん!」
「それでいて人の多い場所だから、そこをしらみつぶしに探せば見つかるけど、とにかく時間がないわ。すぐに1課も動いて頂戴」
「はい!」
走り去る刑事の背中を、しばらく冴島は見つめていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます