第55話 安堵
動画をアップロードしてから2,3日が過ぎたが、2人は実に安穏といた日々を過ごしていた。
Bは暗号資産をかすめ取りながら、料理にはまり夕食はBの担当になっていた。
AはAで最後の爆破物にタバコを吸いながら取り掛かっていた。
2人はなるべく外には出ず、ほとんどをリビングでテレビを見ることで過ごしていた。テレビでは相変わらず僕らについての特番や、民間人による警察襲撃のニュースがやっていた。
「今夜はグラタンとからあげとシーザーサラダとブロッコリーの炒め物だよ」
「お、うまそうじゃないか」
2人が夕食の食卓につく。
「んん。グラタンなかなかいけてるぞ」
「シーザーサラダも食べてよね」
はたから見ると仲の良い兄弟に見える。が、一人は1000人以上を死傷させた爆破犯、もう一人は数億円をかすめ取ったサイコパスの2人組であった。
次の日の昼、Bは相変わらずノートパソコンとにらめっこをしていたが、ひとつ重大な事に気づいた。瓶のバニラコークを注文しそびれて、冷蔵庫に無くなっていたのである。すぐに注文すると、エコバッグを片手に取って、外に出た。
すぐ近くに自動販売機があって、缶ではあるがコーラが売ってるのだ。
ガコン、ガコン。連続でコーラを買っていると、ふととなりの老婆と目が合った。
「っへへ…どうも」
Bの愛想笑いも虚しく老婆は黙ってこちらを見続けた。それからはそそくさとエコバッグを抱えてアジトに戻っていった。
アジトに戻るとAが、
「射撃訓練を多めにやっておけよ。最終的に身を守るのは自分自身だからな」
と言ってきた。
「はいはい、コーラを飲んでからね」
缶コーラを一つ開けて美味そうに飲む。
アジトにパン、パンという銃声が響いた。
――――
対策本部で冴島が熱弁を振るっていた。
「犯人は空中爆破を目論んでいる可能性が高いです。我々は自衛隊と協力し、ヘリやオスプレイなどを使って空中に漂う爆破物を押収、解体することを想定として考えています」
対策本部が解散した所で松島は冴島に声を掛けた。
「有力な通報が入りましたよ」
「本当?どんなかしら」
「北綾瀬の邸宅でテレビで見た少年の顔と似た人物がコーラを買ってたとか」
「あの子、コーラ好きだものね」
「しかも、北綾瀬」
「間違いないわね。アジトを制圧するシミュレーションを今度は徹底させましょう」
「了解」
「いよいよ2人を追い詰められる実感が湧いてきたわ。これも松島君のおかげよ」
「いやぁ僕は勘にただ、頼ってるだけの男ですから」
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