第29話 再会
Cが操縦するヘリに乗り込んだBは、そのまま以前からの目標地点である沖縄に向かって飛んでいった。Aも途中で乗っていた2トントラックを遺棄し、電車と新幹線で沖縄へと向かった。
開けた空き地にヘリを乗り捨てると、新しいアジトへ潜入する。そこはひどく埃っぽかったので、Aが来るまではと、BとCで埃たたきでなるべく埃を取った。
キレイになったテーブルに自身のノートパソコンを置き、早速瓶のバニラコークと新しい黄色のTシャツをネット注文した。Aが来るまではCが持っていた1週間分の非常食でしのいだ。
「A!!」
「おう。BもCも元気で何より」
Aは警察に目をつけられないように慎重に3日かけてアジトにやってきた。思わずBはAに抱きつく。
「A…A……ッ!」
抱きながら自然と涙がこみ上げてくる。
「分かってる。過酷なミッションを駆け抜けたんだろうさ」
「僕…心を鬼にして臨んだよ…でもだめだった」
「仕方ないさ。Bが元気ならそれで」
Cは黙ってAとBの再会を見つめていた。
「Cもありがとな」
「いえ、自分は取るに足りませんでしたので」
Aは抱きついたBを下ろしながら言った。
「蛙谷には本来の罪をつぐなって欲しかった。殺すのは簡単だ」
「Aはどれくらいの罪を償うつもり?」
「俺は鉄槌を下す側だからな。また別だ」
相変わらずクレイジーな思想を持っているな、とクスリと笑った。
Aはアジトを見渡しながら言った。
「しばらく休もう…なんか流石に俺も疲れたんだ」
「警察は大丈夫かな」
「Bの面はかなり割れてる…が、まだ平気だろう…俺は少し疲れた。一足早く眠らせてもらうよ」
そう言ってAは作業場のベッドに寝転んですぐ寝息を立てた。
「まぁ僕らもかなり疲れてる。寝るとしよう」
こうしてアジトは早めに電気が消えた。
Aは重さで息苦しく感じた。ゆっくり目を開けると、Bがキス寸前まで顔を近づけている。
「うわあ!」
AはBを横に追いのけた。
Aは髪をクシャクシャにしながら寝ぼけたまま、億劫に答えた。
「どうした?」
「ラジオ体操に行こう!」
「ラ…ジオ?」
「近所の小学校でやってるんだってさ!」
「おはようす」
Cも顔を洗ってスッキリしている。
「何でまたラジオ体操なんだよー…」
「頭のスイッチが切り替わるでしょ?さあ早く」
Bに引っ張られる形でAも起きて出発する。場所は少し行った小高い丘にあった。
「さあまずは背伸びの運動から――」
Aはカチコチで運動をこなした。BとCはのびのびと笑顔でこなしている。
謎のスッキリ感を得て、3人は丘を下っていった。
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