第28話 再発
もはやどうする術もない蛙谷と、返り血を浴びて明らかに不機嫌なBは、なおもお互い向き合って喫茶店内に座っていた。Bはコーラのおかわりをウェイトレスに注文し、ウェイトレスはすぐにコーラの大盛りを運んできた。
コーラを思いっきり飲むと、Bはゲップを抑えながらキーボードを打鍵した。
「…もっと面白いと思っていたよ」
タバコをくゆらせていた蛙谷はしかめっ面で返した。
「は?」
「今回の計画。もっと楽しめるって思ってたのに…女がトイレで隠れてるわ、ろくなもんじゃないね。まだ何か隠してるもの、あるんじゃないの?」
「ない!断じてない!」
「どうだか」
Bは返り血を浴びたTシャツを嫌がりながら、キーボードのモニターに集中する。
「次、吐かなかったら爆破していい?」
「俺はこれ以上言う事はないぞ!いいかげんにしてくれ!」
「強情だなぁ…」
「頼む!お願いだから…」
Bはケータイを取り出し、電話をかけた。
「A。2番目爆破」
「よせっ!!」
蛙谷は汗だくでテレビを注視した。しばらくして新しいテレビ中継が入った。
「たった今入りました情報によりますと、新橋駅ホームで大爆発が起こったとの事です…なお…」
蛙谷は震えながら、背広の中に手を突っ込んだ。取り出したのは拳銃だ。
「バカなゲームを終わらせてやらァ!!」
パンと一発撃ち放つ。びっくりしたBの顔の横をスローで通過する。
Bが返り撃つ。蛙谷の肩に命中する。
「ひいっ!!」
蛙谷はたまらず喫茶店の外へ出ようとする。Bはノートパソコンをバッグに素早く入れ、蛙谷の後を追う。蛙谷が喫茶店の外に出ると、低空飛行をしているヘリが、コブ付きの紐をたらしている。蛙谷はその紐に捕まり、上へと登ってゆく。Bも負けじと紐に捕まり、蛙谷の後を追いかけ登る。ヘリが上昇を始める。
「こらっ追いかけてくるな!」
ヘリは上昇を続けながら前進した。
と、バッグの中のケータイが鳴り出した。何とかバッグからケータイを取るとAからだった。
「Bか?早くも山手線経由の爆破と警察にばれてしまった。東京駅の警備もすごい。そっちはどうだ?」
Bは唇を噛み締めながら言った。
「また…ミッション失敗しそうです」
蛙谷がヘリ本体まで接近すると、ヘリ操縦士が顔を乗り出し、拳銃で蛙谷を滅多撃ちにした。蛙谷は上空に投げ出されるようにBの横を落ちていった。
そのままヘリに乗り込んだBは、そのまま喫茶店地点を後にした。
「追いかけますか?」
「爆破されると困る。追いかけるな!繰り返す、追いかけるな!」
自衛隊の無線が隊全体に響き渡った。
かくして劇場型連続爆破事件は、両者歯がゆいまま一旦幕を下ろすのだった。
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