第28話
グレイとエイダンのレベルアップも順調に進み、戦闘スキルとして魔法スキルも習得出来た。
エイダンに作ったスリングショットは、弓よりも使い易いそうで投擲スキルを習得し、魔力弾で攻撃出来るようにまでなっている。しかも属性も付けられるようでちょっと羨ましいとか思ってしまった。今後は錬金術スキルを向上させてスリングショット用の投げる武器も開発したいと意欲的になっているようだ。
魔物についてはエイダンも躊躇することなく討伐出来るようになり、自分の中で折り合いがついたのか、怯える事も無くなっていた。
まあ武器開発に意欲的になってる時点で躊躇なんて時の彼方に追いやられてるよね。
でも、なんでこんな変わったのかが不思議でしょうがないのよ。最初の頃は戦えるけど顔面蒼白だったし、自分が倒した魔物を直視するのも怖がってたからさ。
〔今の快適環境を無くしたくないそうですよ〕
ん?
〔住めば住むほど異空間の居住空間は快適ですし、ノエルの食事は大変美味しい。それにグレイがどんどん強くなっていくのが羨ましくなったそうです〕
おお、ライバルの存在が心境を変えたのか!
いいねいいねぇ。
〔まあ、美味しい料理と快適な暮らしを手放したくない気持ちの方が強いみたいですが〕
おぅふ。
エイダン意外に俗物か……
まあせっかくの錬金術スキル持ちなのだから、このまま育って欲しいものですな。
兎にも角にも3週間の結果がこれだ。
名前:エイダン
年齢:24
LV:20
種族:人族
HP:781/781
MP:742/742
攻撃力:729(+18)
防御力:730(+32)
魔力:750
魔防:734
俊敏:692
幸運:18
スキル:錬金術LV1、投擲LV3、弓術LV1、水属性魔法LV2、火属性魔法LV2 、状態異常無効LV-、精神異常無効LV-、(調薬)
恩恵:ステータス補正(低) LV3、無詠唱LV3、魔力操作LV3、魔力感知LV3、魔法命中率LV3、言語理解LVー
状態:正常、従属契約
称号:ゼン・コウダの奴隷
装備:
-スリングショット(効果:攻撃力+18)
-皮の胸当て(効果:防御力+12)
-探索用ブーツ(効果:防御力+20)
未装備:
-レントの木の弓(効果:攻撃力+15)
名前:グレイ
年齢:32
LV:20
種族:人族
HP:811/811
MP:723/723
攻撃力:792(+40)
防御力:739(+32)
魔力:738
魔防:710
俊敏:713
幸運:16
スキル:錬金術LV1、剣闘士LV3、水属性魔法LV2、土属性魔法LV1、 状態異常無効LV-、精神異常無効LV-、(料理)
恩恵:ステータス補正(低) LV3、無詠唱LV2、魔力操作LV2、魔力感知LV3、魔法命中率LV2、言語理解LVー
状態:正常、従属契約
称号:ゼン・コウダの奴隷
装備:
-両手剣(効果:攻撃力+40)
-皮の胸当て(効果:防御力+12)
-探索用ブーツ(効果:防御力+20)
状態異常無効化スキルも精神異常無効化スキルも習得出来た。
後は素材狩り組に任せてナントローモのダンジョンでレベル上げしても大丈夫だろう。
そろそろ冒険者ギルドの貢献のほうも力を入れるかな。レビー達に任せっぱなしだったからね。
「今日は俺も冒険者ギルドの依頼を受けるよ。素材狩り組はナジとオルトのどっち?」
朝食を食べながら今日の予定を確認する。
「私です」
「オルトか。すまないけどグレイとエイダンも今日から素材狩りに連れてってくれ。出来ればレベルアップを中心にして欲しいんだけど大丈夫かな」
「はい、お任せ下さい」
オルトが快く引き受けてくれたので安心である。
「ゼン様、ギルドの依頼ですが基本は討伐依頼が多いです。ゼン様、レビー、ネラ、俺の四人で一つの依頼を受けるよりも、せっかく引率できるゼン様が一緒が居らっしゃるので二手に別れる方が効率は良いと思われます」
ナジが腕を組み、今までのギルドの依頼の傾向から別行動した方が良いと提案した。
確かに討伐系にしろ採取系にしろ、一人でも出来る内容だろう。パーティーとしての実績を上げるなら効率的に動いた方が良い。
今までは素材の買取でパーティーのランクポイントを貯めていたけど、今のブループラチナムはCランクパーティー。Bランクになるにはまだまだ貢献が足りない。二手に分かれて依頼を熟すのも良いだろう。
というか、そろそろ自分達の冒険者ランクも上げておきたい。グレイとエイダン以外はBランク試験受けれるだろうし、俺もAランク試験を受けれるまでポイントは貯まっているはずだ。
「ちょっと聞きたいんだけど、みんなもう冒険者ランクポイント10000超えてるよね。Bランク試験受けても良いと思うんだけど、どうかな」
「はい、グレイとエイダン以外は皆30000以上ですので問題ございません。一緒に二人もCランク試験受けて貰いましょうか。1000ポイント以上はある筈ですし」
「じゃあ今日は全員冒険者ギルドでランクアップ試験受けてから行動しよう」
商会運営だけなら冒険者ランクとかどうでもいいんだけど、素材集めするから冒険者ランクはある程度上げときたいんだよね。
低ランクだからと制限されるのも面倒だし。
あまりランク上げすぎると貴族からの依頼とか指名依頼とかあるからそれも面倒ではあるけれど、ちょっとコネを作っておくのも良いかもしれないし。
商会の宣伝にも良いだろうしね。
朝食も済んだので早速みんなで冒険者ギルドに出向くことにした。
ナントローモのギルドはBランク冒険者が多いけれど、大抵はダンジョンに行くので依頼が貼り付けられた掲示板の前にはCランク冒険者がほとんどだ。ざっと鑑定したけど、今のままでは1階層の魔物にすら勝てそうにないような冒険者ばかりだった。
依頼内容をざっと見たけど近隣の村や街道に出る魔物討伐やダンジョンでの採取依頼ばかりだったので、ランク試験後にも依頼は残っていそうだと安心した。
「すみません、ランクアップの試験を受けに来ました。Cランク2名、Bランク6名、Aランク1名です」
受付は空いていたので早速受付嬢に声をかけ、ランク別に固まってカウンター前に整列する。
人数の多さに受付嬢がちょっと引いている気がするのは気のせいにしておこう。
「これから試験を受けられますか?」
「はい」
「ではギルドカードを提示して下さい。試験官の手配を致します」
「ありがとうございます。ギルドカードです。みんなも提示して」
俺の言葉にそれぞれカードを提示していく。
「なあおい、エルフの嬢ちゃんとこのパーティーか?随分多いな」
「それよりドワーフ族もいるぞ。なんなんだ、あのパーティー」
「仕切ってる奴は見たことねーが、随分若いし別嬪じゃねえか」
「エルフの嬢ちゃん以外にも可愛らしい嬢ちゃんもいるぜ。ちっ、羨ましい事この上ねーな」
「あんな優男どもより俺らのパーティーの方が良いだろうに。誘ってみるか」
「止めとけ。エルフの嬢ちゃんの強さは知ってるだろ?もう一人のかわい子ちゃんだって俺らより強いかもしれねぇんだ、下手に手を出すな。また痛い目みるぞ」
さっきからやたら見られているなと思ったら、やっぱネラが目立ってたか。
既にちょっかい掛けて、痛い目みたんだな。
ご愁傷さまです…
「試験官の準備に時間が掛かりますので、しばらくお待ちください」
全員のギルドカードから、それぞれのランクポイントが規定値以上かを確認し終えた受付嬢は一度後ろの部屋に下がった後、実施まで時間が掛かると教えてくれたので先に依頼を受けるべく掲示板の元へ足を運んだ。
全員が一斉に動くとちょっと邪魔になってしまう…
他の冒険者達といざこざにならないように注意しないとだな。
「ギルドの依頼かぁ、俺は薬草採取くらいしかやった記憶ないんだよね」
「討伐依頼などもでしょうか」
「うん、常駐依頼はやってたけど、それってわざわざ依頼として受けなくても良かったからね」
ざっと見ても一人で対応可能な依頼ランクCの物がほとんどで、貢献度もさほど高くないのが残念である。それでもBやAランクの依頼もチラホラあるようだ。
「いつもはどんな依頼受けてたの?」
「魔物討伐や盗賊討伐、素材集め等ですね。冒険者ランクがCですので、依頼もCランクの物までしか受けれませんので」
ナジがこの辺りですと、掲示板の依頼書を指さす。
ふむ、なら今日は俺が居るからBランク、いや、全員Bランクになるだろうし、俺もAランクになる予定。となるとAランクの依頼も受けれるな。
ザワッ
ギルドの空気が一変した。
今までこちらをコソコソと伺っていた視線が出入口に集中する。
「おー、いたいた。今日こそいい返事を貰うぜ」
ピリッとひりついた空気が流れてきた。
声をかけてきた奴らからだと思い眉間に皺を寄せて相手を鑑定、観察する。
ん?ピリッとしてるのネラ達だな。
「何?知り合い?」
「違う。最近ずっと付き纏ってくる変態」
あらま。ネラがお冠じゃないさ。
「レビー、コナ掛けられてるの?」
コソッと近くにいたレビーに耳打ちするとレビーが「ネラを狙ってるやな奴なんだ。パーティーに誘うだけじゃなくて、こっちの依頼邪魔してきたり、ネラ以外のメンバーに攻撃してくるんで鬱陶しいんですっ」
と、こっちもぷんすこ状態である。
サクッと痛い目見せれば良いのに大事にしないよう我慢してくれてたのかな。
ギルドに偉そうに入って来た連中は周りの冒険者達が静まりかえる程には有名な連中のようで、ステータスを見る分には確かに上位に位置するようだ。だが有名なのは強いからってだけでは無さそうだな。先頭を悠々と歩きネラに声をかけた男が俺達の前で足を止める。
「なんだぁ?今日は随分大人数じゃねぇか。パーティー全員で俺様を歓迎してくれてる訳でも無さそうだがなぁ、ん?」
30代そこそこだろうか。
蛇のような目つきの筋肉質な男がこちらを睨めつる。むぅ、嫌な目つきだな。
「何か御用ですか?」
そっとネラの前に出て男に質問してみた。
「あぁん?俺はそこのエルフの女に用があるんだ。おめぇはすっこんでな」
「うちのメンバーになんの御用です?」
「小僧が。俺に話しかけてんじゃねぇぞ」
男は怒気を孕んで一喝してきた。
う〜ん、弱い相手に凄まれても…こっちからしたらチワワに唸られてるようにしか思えないんだよな。
「小僧だとか関係ないでしょう。ネラはうちのメンバーですよ。なんの用かリーダーである俺に話して貰えますか」
呆れたように見やるとイラついた男が俺の胸ぐらを掴み「さっきからうるせぇんだよ!ぶっ殺すぞ!」と怒鳴り散らしてきた。
しょうがないので俺も怒気でもってお答えしよう。
「はあ?人のパーティーメンバーにちょっかい出しといて、随分な態度だな!まともに会話も出来ないからって胸ぐら掴んで脅してんじゃねぇぞっ」
掴まれた腕を捻りあげ、身体の反射反応を利用して背中を向かせ右腕を捻ったまま反対側の肩を掴む。
これで男は動けない。
「痛ぇっ!くそっ離せ!」
俺はご要望通り男を仲間に向けて勢い良く突き放した。
一瞬の出来事に仲間連中も理解出来ていなかったがリーダーの男を受け止めると一気に険悪なムードになる。
「小僧!俺にこんな事してタダで済むと思うなよ!」
「さっきからキャンキャンうるさいよ。あんたら一体何様なの。勧誘するのは自由だけど、断られてるんだよね?寧ろ嫌がられてるんだよね?だったら大人しく諦めろよな。それともネラ、コイツらのパーティーに入る約束でもしてるの?」
俺はネラに一応確認してみることにした。
「む、そんな訳ない。ネラ断った。ゼン酷い事言う…」
シュンと項垂れたネラに「ごめんごめん、一応意思確認しただけだって。俺が悪かったよ」と頭を撫でる。
「ネラは断ってるって言ってるんだからもう話すこともないでしょ。胸ぐら掴んだ件は忘れてやるから今後は絡んで来ないでね」
俺はにこりと微笑んだあと、ネラ達を連れて奥へと歩こうと後ろを向いた。
「ふざけんなっ!小僧俺を誰だと思ってやがるっ!俺はBランク冒険者でブラッドスネイクのリーダー、ジャイロ様だぞ!」
振り返ると真っ赤な顔で湯気でも出そうな程激おこの男、ジャイロががなり立てていた。
「だから?」
俺は誰とも聞いた覚えもないのに自己紹介されてもね。
「は、はあ!?だからだと!?俺様はそこらの冒険者共とは違うんだ!てめぇなんぞ足元にも及ばない程の強さなんだぞっ」
「へぇ、そうなの?」
自分が強いとか自慢してる時点で雑魚いんだよなぁ…
「ランクアップ試験の準備が整いました。Cランクの受験者2名はそちらのモリスに着いていって下さい。Bランク受験者6名は私リーリスがご案内します。最後にAランク受験者はギルドマスターがお相手致しますので少々お待ちください」
険悪なムードをぶった切って受付嬢リーリスさんが俺達に声をかけてきた。
「グレイとエイダンは初ランクアップ試験だけど、気負う必要はないからね。他のみんなはやり過ぎないように、特にレビーとネラ、張り切らないで程々にね」
「む、ネラだって分かってる…」
「俺も大丈夫ですってばっ」
俺の言葉にそれぞれの反応を見せながら、試験会場に向かっていくみんなを見送ると、怒り心頭のジャイロを無視してギルドマスターを待つ事にする。
ジャイロがこっちに向かって歩き出そうとしているのを仲間が止めているのがチラリと見えた。
頭に血が上りすぎて俺が自分より格上だと判断出来てないんだな。仲間の方が状況をしっかり把握出来てるよ。
「Aランク試験を受けるのは君か?」
すぐにギルドマスターと思われる人物が現れた。
百戦錬磨という言葉が似合いそうな戦士系のダンディな人だ。顔に大きな傷があるが、強面と言うより穏やかな印象を受けた。
「はい、ゼンと言います。よろしくお願いします」
「随分と若いな。最近ブループラチナムというパーティーが活躍しているが、君も?」
「はい、ブループラチナムのリーダーを任されてます。本日はメンバー全員でランクアップ試験を受けに来ました。大人数で急に押し掛けてしまいお手を煩わせてしまいましたよね。申し訳ありません」
ぺこりと頭を下げると「随分と礼儀正しいんだな」とギルドマスター、ブレイズさんが破顔した。
「冒険者は副業のようなもので、本来の職業は商人ですので」
「商人!?これはまた…商人なのに冒険者のAランク試験を受けに来たというのか…」
「まあ、素材集めも自分達でやっていますので」
「なんともはや…」
和気あいあいと話しながらブレイズさんと試験会場に向う途中、ジャイロに視線を向けると真っ赤な顔が真っ青になっていた。まあ、メンバーの大半がBランク試験を受ける上に俺はAランクを受けるのだから、強さ自慢が通用しないとやっと理解出来たのだろうね。まだなんかちょっかい掛けて来るならお仕置が必要だろうけど、このままフェードアウトするなら見逃しても良いか。
試験会場はギルドの奥に設置された修練場で、既にCランク、Bランクの試験が始まっていた。
特に仕切りがある訳ではないが、テニスコート2面分の広さ程で引かれた枠内で戦うルールとなっており、枠から出たら失格との事だ。
俺の試験はCランク試験が終わってからになるそうだ。
ならばと今試験を受けているメンバーを見てみるとCランクはグレイが既に終わりエイダンが試験中だった。
試験官と上手く距離を取りながらスリングショットではなく弓で攻撃している。しかも魔力矢ではなく普通の矢での攻撃で、随分と余裕をもって戦えていた。エイダンは一気に数本の矢を放ち試験官の周りを取り囲むように矢を落とし、詰みです!と叫びながら魔力矢を試験官の心臓目掛けて射る。
試験官は避ける事も出来ずに魔力矢を被弾した。
内心殺す気か!と焦ったが、どうやら殺傷能力のない威力の魔力矢だったようで試験官はピリッとした刺激だけで済んだようだ。
エイダン物凄く成長してないか?
正直驚いたわ。
Cランク試験も決着がついたのでBランク試験の方を見てみると、既にレビー、ネラ、オルト、ナジが終わっていた。
いや、早くない!?!?!?
今からノエルが試験に挑むようなのでそのまま試験を見る事にする。
……
……
ああ、そりゃ速攻終わるわな…
開始と共にノエルは試験官の前に踏み込むと頭に杖をあてがい「すみません、詰みです」と申し訳なさそうに呟いていた。
既に何度も同じ目に合っているのだろう…Bランク試験の試験官は涙目で完全に戦意喪失している。
これはジガンも同じ感じで終わりそうだな。
「君んとこのパーティーメンバーはバケモン揃いか…」
ブレイズさんが顔面蒼白で呟いた。
「あはは…まあ、正直全員Aランク以上の実力なんで」
俺の返答に「嘘だろ…」とギギギと音がする程にぎこちなく首を向けるブレイズさん。
チートなんですごめんなさい。
「もしかして君も…?」
冷や汗をダラダラかきながら若干瞬きが増えているブレイズさんは、徐々に八の字眉になっている。
「すみません…」
申し訳ない気持ちで返答する。
「そうか…高ランク冒険者が増えるのは良い事だからな、ははは」
顔が笑っていないです、ブレイズさん…
「じゃあ、Aランク試験始めようか。あちらの線が引かれている場所が開始位置だ。合図が鳴れば試験開始。どちらかが戦闘不能、もしくは試験場の枠線から出たら終了だ」
「はい、分かりました」
俺は開始位置に立ち合図を待つ。
カーン!と高らかな音が鳴り試験が開始した。
申し訳なく思いつつ、一瞬でブレイズさんの前に移動し、俺は剣を首元に突きつけた。
「詰みです」
俺の動きを見切れず一瞬のうちに剣を突きつけられたブレイズさんは息を飲んで剣を凝視した。
ふぅ…と飲んだ息を吐き出し緊張した身体から力を抜くとじっと俺の顔を見つめニヤリと笑う。
「俺も一端の冒険者だったんだが、全く動きが見えなかった。正直君の実力は俺には測れん。Sランクの試験受けても合格しそうだと思えるくらいだ。いや、確実に合格するだろうね。Aランク試験は文句なしの合格だ。おめでとう」
「ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げてお礼を言うとブレイズさんは「最年少Aランク冒険者の誕生だな」と肩を叩いて喜んでくれた。
受付でランクアップした表記に変わったギルドカードを受け取り、オルト達素材狩り組はダンジョンに向う。
「ではゼン様行って参ります」
スっとお辞儀をして颯爽と去って行くオルト。カッケーっす。
後ろにゾロゾロと小鴨達がついて行った。小鴨にしてはガタイがいい奴や髭面豆タンクみたいなのも混じってるけどな。
「ゼン様、俺達もBランクになったので、依頼もBランクの物が受けれます。二手に分かれますか?それともAランクの依頼を四人で受けてみますか?」
「そうねぇ、内容によるかな…どれどれ…」
俺は改めて掲示板を確認する。
Bランク依頼は行商の護衛やダンジョンの魔物の素材集め、素材集めは受けてオルト達に狩って来てもらうのもありだな。護衛依頼は時間掛るからパス。後はナントローモ西にある魔の森と呼ばれる深い森に生息する魔獣狩りか。うん?魔獣が生きてる状態での素材調達…?調達部位は角か。というか角なのに、死んだら色変わるんだ…不思議…
難易度は確かに高いだろうけど、魔獣だよな?なのにBランク依頼って…
ナヴィ、魔の森ってなんかいわく付きなの?
〔強い魔物や魔獣が生息している古くからある森ですが、一度入ると出られないと言われております。原因は毒性の強い植物や幻惑作用のある臭い、花粉を出す植物が多いためですね。マスター達ならば状態異常無効化スキルにより何ら影響はありません〕
ふ〜ん、ならこれも問題無いな。
「Aランク依頼は…ダロンの村近辺を根城に活動する盗賊団の討伐か。盗賊団って事は大所帯なのかね」
〔多くても20〜30人規模でしょう。道中に捕縛した盗賊達が一味であれば更に人数は減っていると思われます〕
そうねぇ。
討伐って事は生死問わずだよね。
〔盗賊団の頭くらいは捕縛してギルドに引き渡せば、ギルドの面目も立つでしょう〕
おっけー決めた。
「ダンジョンの魔物の素材集めは依頼受けてオルト達に頼もう。魔の森の魔獣狩りはナジ、ネラ、レビーで受けてくれ。俺は盗賊団潰してくるわ」
「ゼン様お一人では危険です!せめてネラかレビーをお連れください!」
ナジが慌てて異議を唱えた。
「う〜ん、人数が多いだけで烏合の衆じゃん?それに無属性魔法と聖属性魔法の複合魔法でスリープ覚えたからさ、何とでもなるんだよね」
「スリープ…ですか?どういった効果の魔法でしょう」
「一定範囲の対象を強制的に眠らせる魔法だね」
「そんな魔法が…?」
「まあ、あっちの知識から編み出した魔法だから、創作魔法だよね、あはは」
いよいよ俺のチートがとんでもない事になってきている。正直某RPGのメテオとかアースクエイクとか、普通に習得出来るんじゃないかって気さえしているわ…覚える気はないけどさ。
「魔獣狩りはネラが居た方がいいと思うよ。森の中だから、エルフとも精霊とも何かと相性は良いはず。それにナジは索敵持ってるから魔獣を見つけやすいだろうし、レビーの持つ剣士のソードバッシュはスタン効果があるだろ?魔獣狩りって書いてあるけど、生きてる状態で角を取らないと色が変わっちゃうみたいだし三人で組んで狩りに行った方がいいんじゃないかな。貴重な魔獣だし角だけ取ったら逃がしてあげる方が良いみたい。また角は生えるらしいからさ」
俺は利点を説明して三人で狩りに行くことを勧めてみる。
それでもナジは納得がいかないようだ。
「ん〜、盗賊団の討伐は直ぐに終わらないだろうから、ナジ達が魔獣の角の依頼が終わったら合流するって事でどう?」
「それならば…ゼン様、俺達が合流するまで危険な行動は出来るだけお控え下さいね」
「ゼン様俺も!すぐ依頼終えて行くからっ待ってて下さい!」
「ゼンはネラ達もっと頼る」
「分かった、無理はしないよ。みんなも少しでも危険だと思ったら引き返すようにな」
三人からお小言を貰ったけど、心配されてるのが嬉しくてつい頭を撫でてしまう。
ナジは撫で慣れてないからか、顔が真っ赤になっていた。ごめん、こっちでの年齢はナジのが年上だったね。
俺達は三つの依頼票を掲示板から剥がして受付で依頼を受けるとギルドを出た。魔の森に向う三人と、ダロンの村へ向う俺。ナントローモの街を出て、街道が左右に分かれたところから別行動となる。
心配そうに何度も振り返りながら魔の森に向う三人にこそ、無理はしないで貰いたい。
俺は手を振り三人の姿が小さくなるまで見送るとダロンの村へと足を向けた。
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