第3話
テントの中でしばらく休憩する間、俺は自分の顔も確認したし、ついでにこの辺りの領土についても確認する事にした。
遅いとか思うだろうけど、オッサンはいっぱいいっぱいだったのだからしょうが無いんだ。
なあ、ナヴィさんや。
この世界はアスガルディアで、今いる街はセリスタだよね。
〔はい、その通りです〕
そのセリスタってどこの国の領地なん?
ってか、この世界には国ってどのくらいあるの?
そもそも俺はアスガルディアについて何も知らなさ過ぎる。生きる為に必要な当面の知識は得た。強くならなければ身を守る事も難しい。だから今ダンジョンでレベルアップしている。少し余裕も出てきたし、ここらで一気にアスガルディアについて知っておくべきだろう。
テントの中で暇だしね。
〔アスガルディアには大陸は一つしかなく、国は4つ、人族の国リオンテール、エルフ族の国エルカディア、ドワーフ族の国ガデリオール、獣人族の国フェルバーンが東西南北に分かれて建国されております。人族の国は立憲君主制で代々リオンテール王家が治めておりますが、貴族階級が議会で政治統治を行っている事もあり、王権派と貴族派との覇権争いで常に水面下での争いが耐えないようです。人族以外の国は評議国家ですので比較的争いもなく平和的に統治されているようです〕
へー、エルフやドワーフ、獣人もいるのか。異世界だなぁ。
立憲君主制って事は、王族は最高権力だけど法治国家って事かな?独裁統治ではないんだね。んでやっぱり貴族とかいるのか…面倒くさそ……
今んとこどっちが主流なの?王権派?
〔いえ、現在は貴族派が主流となっており、グリンデルバルド公爵家に権力が集中しているようです〕
公爵家って事は貴族の中でも最高位だったよな…
なあ、公爵家はそのグリンデルバルドってとこだけなの?
〔いえ、リオンテールにはグリンデルバルド公爵家、ルトワール公爵家、シュナイデン公爵家と3つの公爵家があります。他にベルンハルト侯爵家やリンデンベルド伯爵家などが有力家として挙げられますね〕
ふーん、伯爵家でも有力家になるのか。
あ、ちなみにリオンテールって大陸のどの辺になるの?
〔リオンテールは大陸の西側に位置し、セリスタはリオンテールの最南西にある街です。王都アデリオンはリオンテールの中心部にあり、東に向かえば獣人国、北に向かえばエルフ国、東北に向かえばドワーフ国の国境に接した街があり、その街を含んだ広大な領地を3つの公爵家がそれぞれ治めております。最南西のセリスタはリンデンベルド領で、ダンジョンを複数保有していることから伯爵領の中では栄えており、そのため議会での発言権も大きいようです〕
なるほどね。
ちなみに他の国とは友好関係にあるのかな?
〔積極的に交流してはおりませんが、国交はあるようですね。比較的盛んに交流しているのはドワーフ国でしょうか〕
へぇ、ドワーフ国とは友好国って感じかな。エルフは排他的なイメージあるし、獣人国も力こそ全て!な脳筋国家のイメージだし、交流はあるけど微妙な感じなのかも?
ふむふむ、大分この世界の事も分かってきたな。貴族や王家なんかとは関わりたくもないから王都に行くとか怖いんだけど、せっかくだしドワーフ国とか行ってみたいかも。商材とか思い付くかもだしな。
なんか若返っちゃったから寿命はあと50年以上でしょ。強くなれば厄介事も減りそうだし、なんなら色々見て廻るのも良いかもな。他の国にも行ってみたい!
俺はなんだかワクワクしてきた。某アニメの有名なセリフを言いそうになり、グッと飲み込む程にはワクワク感が込み上げてくる。若返った事を実感したからか、それともゼン・コウダの顔を見て甲田 繕ではなくなったのだとやっと脳が認識したからなのか、ナヴィのお陰でめっちゃ強くなってきた事も多分に影響していると思うけど、欲が出てきたんだと思う。どうせならこの世界の人生を楽しんでしまえって。
顔を確認してやっと脳と心と身体が一つになった、そんな感じだ。
ナヴィ、俺このダンジョン踏破したら色んな街を見てみたい。もちろん他の国も。夢と言うか、生きていく為の目的と言うか?手伝ってくれる?
〔もちろんですマスター。最善を尽くしサポート致します〕
ありがとうな!
ゆくゆくは商会立ち上げて店出したリしたいけど、ゆっくりで良いや。今は見聞を広めて行こう!
俺は毛布にバフっと寝っ転がりMAPを見ながらセリスタ周辺からその先へ続く道を思い描く。今見れるのは多分リンデンベルド領なんだろうな。移動すればきっと地図も切り替わるのだろう。
いい感じに眠くなってきたので、俺は眠る事にしたが、このまま眠ってしまうのもちょっと怖いので、無属性魔法の結界魔法を使いテントの周りに結界を張る事にした。起きるまで持続出来るのと、結界を破ろうとしたら感知出来る優れものだ。
結界を張り終わりようやく安心して眠りについた。
「ふわ〜ぁ!」
大きく伸びをして、ゴキゴキっと首を回し、俺はテントの中に座り直す。
ナヴィおはよう。
〔おはようございます、マスター〕
ブーツを履いてテントを出ると俺は徐ろにストレッチをする。テントの中だとちょっと窮屈でさ。
また大きく伸びをして、身体の筋を伸ばし切ると俺はテントに戻って朝ごはんを食べる事にした。
なあ、ナヴィ、俺どのくらい寝てた?
〔だいたい7時間くらいです〕
おお、ぐっすり寝てたな。
今って何時?
〔朝の6時過ぎです〕
ん、そっか、サンキュな。
俺も時間分かるようになりたいな。
〔魔導具を買えば時間は分かるようになりますよ〕
お、時計あるのか。
今度買おうっと。
俺は空間収納からパンとファムと果実水を取り出し、ファムをパンに塗って口に運ぶ。
ファムは宿屋のおばさんのが美味いな……
果実水を飲みつつパンを一気に食べ終えると、毛布に浄化魔法を使い空間収納に入れる。
身支度を整え、テントも折り畳んでマジックバックに入れるように見せ掛けながら空間収納にしまうと俺はさっさと16階層へと向かう事にした。
階段を降り16階層に足を踏み入れる。と、そこは湿地帯で鬱蒼と水草が茂ったフロアが続いていた。気をつけなければ沼地に沈みかねない為、MAPで足下を常に確認しながらの移動になった。
魔物はポイズンフロッグやポイズンリザードと毒持ちが多く耐性がないとかなり厳しい。
〔スキル 毒耐性を習得致しました〕
「お、ナイスタイミング!」
さすがナヴィ!これで多少はHP減少も抑えられるな。スキルLV上げていけば更に減少可能だろうし、積極的に毒貰ってこうかな。危なくなったら状態異常回復魔法使えば良いもんね。
俺はポイズンフロッグの毒攻撃を受けながら毒耐性スキルを上げる事に専念した。
意外にHP減少激しいな……
しばらく続けていたけど、スキルLVが上がるよりHPの減少の方が早くてキュアやヒールを頻繁に使わなければ下手したら死にかねないぞ。
毒耐性があってもポイズンフロッグやポイズンリザードの毒は強力なのか、HPの減りが著しいのだ。
なあなあ、スキルの定番でさ、HP自動回復とかあったりしないの?
ふと思い付きナヴィに聞いてみた。
〔スキル 剣豪のLVが上がれば習得可能です。今すぐ必要ですか?〕
あら、剣豪スキルのレベル上がれば習得出来るんだ。うーんフライングで取りたいな。
ナヴィ、今すぐ覚えるのは可能なの?
〔はい、可能です〕
「じゃあ、よろしく!」
俺は迷わずスキルを習得する事にした。レベルが上がれば習得出来るなら今習得したって構わないだろう。こういうのは速いに超したことはないからね。
〔スキル HP自動回復を習得致しました〕
お、さすが大賢者ナヴィ様!
〔スキル MP自動回復を習得致しました〕
え?
「大賢者スキルを上げる事でMP自動回復も覚える事になりますので、ついでにこちらも習得致しました〕
「ついでにって……!」
いや、まあ有難いけどね!
「ステータス・オープン」
名前:ゼン・コウダ
年齢:16
LV:22
種族:人族
HP:767/1445
MP:2095/2223(+400)
攻撃力:1394(+40)
防御力:1368(+32)
魔力:1420
魔防:1362
俊敏:1398(+20)
幸運:37
スキル:剣豪LV5、大賢者LV4、空間収納LV-、鑑定LV MAX、聖属性魔法LV2、探索LV2、火属性魔法LV3、風属性魔法LV4、索敵LV4、ステータス補正LV4、MP消費軽減LV4、水属性魔法LV3、土属性魔法LV3、無属性魔法LV3、隠密LV1、毒耐性LV2(+1)、HP自動回復LV1(new)、MP自動回復LV1(new)
ギフト:全言語理解、ナビゲート
装備:
ミスリルソード(効果:攻撃力+40)
皮の胸当て(効果:防御力+12)
探索用ブーツ(効果:防御力+20)
アクセサリー:疾風のピアス(効果:俊敏+20、回避率10%)
うん、HP自動回復有難い。これでヒールの回数少しは減るだろう。
毒耐性スキルはまだLV2だけど、このままLV上げていけばHP自動回復で相殺出来るようになるかもな。HP自動回復だってスキルレベル上がるだろうし。
俺は両方のスキルレベルを上げる事を優先し、しばらくポイズンフロッグやポイズンリザードから毒攻撃を受け続けるという苦行に勤しむ為、16階層に留まる事にした。
ひたすら毒を浴び、危なくなったらキュア&ヒールを繰り返す。正直ほぼ棒立ちなので傍から見たら気が狂ってるとしか思えない……
いいんだ。
お陰で毒耐性はLV5、HP自動回復だってLV4、ついでにMP自動回復もLV3に上がったんだから!
〔マスター、そろそろ夕方の時間です。セーフティエリアに戻り休まれる事をおすすめ致します〕
もうそんな時間か……
じゃあ今日はここまでにして戻るよ。
ナヴィに言われセーフティエリアへ続く階段を登り泥水や毒で汚れた身体をノロノロと引きずりながら、昨日と同じ場所にテントを張る。
他の冒険者の視線が痛い。
汚いと思われてるんだろうな……
ほんとならテントの外で水で身体を洗うんだろうけど、
俺はやはりテントの中で浄化魔法を使うことにした。入ってすぐに浄化魔法を使いブーツを脱いで毛布を出し横になる。
「あぁぁぁ疲れたぁぁぁー」
棒立ちだったとはいえ、常に毒攻撃によってHPが減り続けていたのだ。体力は限界だったわ。
今日はもう寝よう……
俺は結界を張り夕飯も食べないまま眠りに落ちた。
朝5時、10時間以上熟睡したようで、すっかり気力も回復したようだ。朝食をしっかり食べまた棒立ちしに16階層へ向かう事にした。
俺は索敵スキルで周りを警戒しつつ、昨日と同じようにポイズンフロッグ達から毒攻撃を受け続ける。HPが1/3以下になったらキュア&ヒール。なんならヒールは2回掛けたりする。1回ではさすがに全回復は無理だもの。他の冒険者達に見られないよう注意しながら今日も1日棒立ちし続けた…
そんな事を4日繰り返し、遂に毒耐性スキルはLV10に!HP自動回復もLV9、MP自動回復もLV6までアップした!
もう毒攻撃を受けてもHP自動回復ですぐに回復するまでになったのだ!やった!やりきった!俺頑張った!
セーフティエリアに戻りテントで休みながら地獄のような棒立ち作業を振り返り、俺はものすごい達成感に喜びを噛み締める。何でこんな事を目標にしたのかよく分からんけど、でもいいんだ!LV10というカンスト値を自らの手でやり遂げる事が出来たって事が大事なんだ。自分の思う通りに出来る、それがとんでもなく嬉しかった。
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