第23話

本日も晴天なり。

昨夜思い立ち、早速ザッケルの街まで移動を開始した蒼銀の月商会の豪華な荷車は相も変わらず盗賊に囲まれている。まあ、通常運転である。

盗賊ホイホイ。

面白いように引っかかるんだから、盗賊ってバカばっかなのかね。

対応はオルト達に任せ、俺はみんなのステータスを久しぶりにじっくり観察する。


名前:ゼン・コウダ

年齢:16

LV:42

種族:人族

HP:4523/4523

MP:3708/6180(+1000)

攻撃力:4728(+40)

防御力:4712(+32)

魔力:4792

魔防:4707

俊敏:4730(+20)

幸運:37

スキル:剣豪LV MAX、大賢者LV MAX、空間収納LV-、鑑定LV MAX、聖属性魔法LV MAX、探索LV6、火属性魔法LV8、風属性魔法LV9、索敵LV MAX、ステータス補正LV MAX、MP消費軽減LV MAX、水属性魔法LV MAX、土属性魔法LV7、無属性魔法LV MAX、隠密LV5、HPMP高速自動回復LV-、状態異常無効LV-、精神異常無効LV-、隠蔽LV7、支配権限LV2、錬金術LV MAX

ギフト:全言語理解、ナビゲート

称号:異世界からの転生者、神からの不遇享受

装備:

ミスリルソード(効果:攻撃力+40)

皮の胸当て(効果:防御力+12)

探索用ブーツ(効果:防御力+20)

アクセサリー:疾風のピアス(効果:俊敏+20、回避率10%)


名前:オルト

年齢:27

LV:36

種族:人族

HP:2170/2170

MP:2161/2161

攻撃力:2139(+45)

防御力:2125(+32)

魔力:2148

魔防:2121

俊敏:2105(+5)

幸運:10

スキル:風属性魔法LV7、土属性魔法LV5、短剣術LV8、酒造LV7、二刀流LV6、状態異常無効LV-、精神異常無効LV-、隠密LV2、索敵LV2、隠蔽LV2

恩恵:ステータス補正(低) LV8、無詠唱LV6、魔力操作LV6、魔力感知LV6、魔法命中率LV6、言語理解LVー

状態:正常、従属契約

称号:犯罪奴隷(濡れ衣)、ゼン・コウダの奴隷

装備:

-君影の短剣(効果:攻撃力+25、攻撃時に時々麻痺付与)

-蟲殺の短剣(効果:攻撃力+20、俊敏+5)

-皮の胸当て(効果:防御力+12)

-探索用ブーツ(効果:防御力+20)


名前:ナジ

年齢:20

LV:35

種族:人族

HP:2100/2100

MP:2089/2089

攻撃力:2071(+42)

防御力:2096(+72)

魔力:2128(+20)

魔防:2102(+20)

俊敏:2003

幸運:8

スキル:商人LV6、火属性魔法LV7、風属性魔法LV8、槌術LV8、盾術LV6、状態異常無効LV-、精神異常無効LV-、索敵LV2、隠蔽LV2

恩恵:ステータス補正(低) LV8、無詠唱LV6、魔力操作LV6、魔力感知LV6、魔法命中率LV6、言語理解LVー

状態:正常、従属契約

称号:ゼン・コウダの奴隷

装備:

-魔槌(効果:攻撃力+42、魔力+20)

-魔鋼の盾(効果:防御力+40、魔防+20)

-皮の胸当て(効果:防御力+12)

-探索用ブーツ(効果:防御力+20)


名前:ノエル

年齢:14

LV:35

種族:人族

HP:2154/2154

MP:2201/2201

攻撃力:2169(+62+12)

防御力:2209(+63+32)

魔力:2263(+67+5)

魔防:2225(+64)

俊敏:2114(+61)

幸運:12

スキル:水属性魔法LV8、風属性魔法LV7、料理LV9、杖術LV5、状態異常無効LV-、精神異常無効LV-、索敵LV2、聖属性魔法LV3、隠蔽LV2

恩恵:ステータス補正(低) LV8、無詠唱LV6、魔力操作LV6、魔力感知LV6、魔法命中率LV6、言語理解LVー

状態:正常、従属契約

称号:ゼン・コウダの奴隷

装備:

-波状の杖(効果:攻撃力+12、身体能力+3%向上(攻撃力、防御力、魔力、魔防、俊敏))

-皮の胸当て(効果:防御力+12)

-探索用ブーツ(効果:防御力+20)


名前:レビー

年齢:13

LV:35

種族:人族

HP:2203/2203

MP:2132/2132

攻撃力:2233(+45)

防御力:2186(+32)

魔力:2112

魔防:2103

俊敏:2177

幸運:15

スキル:剣士LV9、風属性魔法LV5 、状態異常無効LV-、精神異常無効LV-、索敵LV1、隠蔽LV2

恩恵:ステータス補正(低) LV8、無詠唱LV5、魔力操作LV5、魔力感知LV5、魔法命中率LV5、言語理解LVー

状態:正常、従属契約

称号:ゼン・コウダの奴隷

装備:

-魔剣(効果:攻撃力+45)

-皮の胸当て(効果:防御力+12)

-探索用ブーツ(効果:防御力+20)


名前:ジガン・トレバーズ

年齢:131

LV:37

種族:ドワーフ族

HP:2019/2019

MP:1949/1949

攻撃力:2041(+78)

防御力:2124(+125)

魔力:1885(+20)

魔防:1854(+20)

俊敏:1807

幸運:25

スキル:鍛冶師LV9、土属性魔法LV6、ハンマーLV9、大盾LV5、建築LV6 、状態異常無効LV-、精神異常無効LV-、隠蔽LV1

恩恵:ステータス補正(低) LV8、無詠唱LV5、魔力操作LV5、魔力感知LV5、魔法命中率LV5、言語理解LVー

状態:正常、従属契約

称号:ゼン・コウダの奴隷

装備:

-魔鋼のハンマー(効果:攻撃力+78、魔力+20)

-魔鋼の大盾(効果:防御力+60、魔防+20)

-鍛冶師の胸当て(効果:防御力+35)

-鍛冶師のブーツ(効果:防御力+30)


名前:ネラ・エルディアス

年齢:50

LV:25

種族:ハイエルフ族

HP:1432/1432

MP:1540/1540

攻撃力:1316(+15)

防御力:1290(+32)

魔力:1495

魔防:1448

俊敏:1236

幸運:20

スキル:精霊召喚LV7、癒しの息吹LV6、緑蔭の風LV4、風属性魔法LV4、土属性魔法LV3 、状態異常無効LV-、精神異常無効LV-、隠蔽LV1

恩恵:ステータス補正(低) LV5、無詠唱LV4、魔力操作LV4、魔力感知LV4、魔法命中率LV4、言語理解LVー

ギフト:精霊女王の愛し子

状態:正常、従属契約

称号:エルフの女王、ゼン・コウダの奴隷

装備:

-レントの木の弓(効果:攻撃力+15)

-皮の胸当て(効果:防御力+12)

-探索用ブーツ(効果:防御力+20)


うん。

俺自身も凄いことになっているが、全員エグいな。

一応旅路とあって武装しているけど、装備要らんだろ、これ。

にしても全員が隠蔽スキル習得したのか。隠しておくのはいい事だから常時スキルは展開しておくように伝えておくか。

……言わなくてもやってたわ。

みんな優秀ね。

それにしても、割と他にもスキル習得してるな。

ノエルなんて聖属性魔法習得してるじゃないよ。いや〜凄いわぁ。うちの子達みんな優秀過ぎて褒めてあげないとだな。お父さんは誇らしいです!

ノエルに視線を向けるとついつい顔がにやけてしまう。


「ゼン、顔がイヤらしい」


「ネラ!?」


「変な笑いしてる」


ネラの鋭い突っ込みに空かさず顔を押さえて「へ、変な顔じゃないもん、酷いよネラ」と涙目で訴えるも、ネラは眉間に皺を寄せ「変な顔」と呟いた。

ぐぅぅ…お父さんはショックです。


ネラの突っ込みに落ち込んだまま、反抗期?ネラは反抗期なの?と考えを巡らせている間にザッケルの街に到着した。

宿を取り、屋台の許可を取りに行くオルトと、冒険者ギルドに盗賊達を連行するナジとジガンとレビー。

ノエルとネラは市場へ買い出しに行ってから夕食作りだそうだ。

そういう訳で暇を持て余した俺は早速一人で奴隷商へ行くことにした。


(錬金術スキル持ちでなくても、潜在能力があったり、頑張れば覚えられそうとか興味があるって人がいるといいね)


〔そうですね〕


MAPを見ながら奴隷商の店に向かいほんの少しだけ期待に胸を膨らます。

俺の錬金地獄を救ってくれる見知らぬ誰か、どうかおいでませ!


「いらっしゃいませ」


店に着くといかにもな顔立ちの男が下卑た笑いを浮かべ挨拶してきた。ただでさえ奴隷商ですって顔なのに下卑た笑いも相まって悪人顔にしか見えない。

そんな悪人顔でジロジロと上から下まで舐め回すような視線を不躾に浴びせてくるのが非常に不快だ。


「あなたが店のご主人ですか?」


目を細めて俺の顔を見ながら「ええ、私が店主です」と頭を下げる。


「本日はどのようなご用件で?」


「一人か二人手先の器用な人を探しています。性別、年齢は問いませんので、一通り見せて頂けませんか?」


「そうですか、ではご案内致しましょう」


店主は話している間もずっと俺の顔をジロジロ見るのを止めず、案内をすると言って隣に並びさりげなく腰に手を回そうとしてきた。

いやちょっと無理。

俺はサッと身をかわし「先導してください」と告げると「ふむ、ではこちらへ」とニヤリと笑って奴隷が居る所へと案内してくれた。

なんなんだ、気持ち悪いな。


〔好事家なのでは?〕


(……なん...だ、と...)


ナヴィの一言に思わずゴクリと喉が鳴る。

俺は枯れたおっさんなんだ。

いや、おっさんじゃなくても男なんてお断りだ。


〔マスターの好みは熟女ですか?〕


(ちょっとナヴィ!熟女なんて言葉使っちゃいけません!いや、普通は良いんだろうけど、ちょっとなんか、なんか恥ずかしいわ。精神年齢は45歳だけど見た目はティーンエイジャーなんだからねっ!ってか、おっさんに恋愛関係は無理だから!)


〔見た目も実年齢も美少年の16歳なのですが〕


ぐぅ。

美少年とか...

マジ勘弁して欲しい。


「さあ、どうぞごゆっくりご覧になってください」


数人の奴隷が男女別に入れられている小部屋が並んだの通路に通され、窓から中が確認出来る。俺はざっと鑑定をして目当てのスキル持ちがいないか確認していった。


あっ!

一人の男性に覚醒していないけど錬金術スキルがある。


名前:エイダン

年齢:24

LV:1

種族:人族

HP:22/22

MP:12/12

攻撃力:9

防御力:7

魔力:8

魔防:6

俊敏:8

幸運:18

スキル:(錬金術)、(調薬)、(水属性魔法)、(火属性魔法)

状態:疲労


(ナヴィ居たよ!錬金術スキル持ちの人!しかも調薬スキルまであるよ!ポーションとか作れるんじゃないの!?)


〔さすがですねマスター。幸運値が普通の人の倍以上なだけあります〕


(運が良いって事?まあ、そうかもな!)


他にはいないかな?

先ずは全員の鑑定を済ます。

エイダン以外は特にいないかな。

あ、この人!


名前:グレイ

年齢:32

LV:1

種族:人族

HP:25/25

MP:14/14

攻撃力:10

防御力:8

魔力:7

魔防:6

俊敏:10

幸運:16

スキル:(錬金術)、(料理)、(水属性魔法)、(土属性魔法)

状態:疲労


錬金術も料理も両方潜在スキルとして保有してるじゃん!

よし!この二人に決めた!


「店主さん、こちらの長髪の方とあちらのガタイの良い方とお話させて頂いても?」


「ふむ、エイダンとグレイですかな。二人ともこちらへ来い。お客様からお話がある」


店主は別々の部屋から二人を俺の目の前に連れて来たかと思えばその場に跪かせた。

え〜そんなやり方なの!?


「さ、どうぞお話下さい」


「あ〜とりあえず立たせてあげてください」


「え?」


店主は何を言われたか分からないような顔で俺を見た。跪いてる二人からも同じような視線が飛ぶ。

そんな変な事言ってないんだけどな。


「俺は従業員を探しに来てるので、あからさまな奴隷扱いは控えて頂けますか」


「...あ、ああ、はい。…では二人とも立つように」


エイダンとグレイは戸惑いながらもその場に立ち上がった。


「えっと、俺の名前はゼン・コウダと言います。蒼銀の月商会の会長で、一応冒険者もやってて、ランクはBです。と言っても商会の活動がメインですけどね。お二人にはうちの商会で働いて頂きたいなと思ってます。衣食住等の福利厚生はもちろん月末には給金もお支払いします。一緒に働きませんか」


「……」


「蒼銀の月商会とは今話題の、今まで食べたことのないふかふかなパンや美味い酒を売っているという?」


先に言葉を発したのは店主だった。

いや、お前には聞いてねえんだが。


「ああ、はい。ふかふかパンやビール、ワインをはじめ、マヨネーズ等の調味料に便利な魔導具も取り揃えておりますよ。2~3日はこの街に滞在して、屋台を出すので店主さんもよろしければ是非ご利用ください」


俺はにこりと営業スマイルで対応し「売り上げは良いんですよ。なので人手がほしいんです」と二人に向けて微笑んだ。


「なぜ俺に?」


「僕も、体力自慢ではないので…どうして声をかけて貰ったのか...」


選ばれた理由が分からないと言い、眉間に皺を寄せるグレイとエイダン。

俺そんな胡散臭いかな…


「理由はちゃんとありますよ。ただ今はそうですね、あなた方のまだ開花していない能力に期待しているとだけ」


笑みを深くして二人を見つめる。


「ちなみにお二人はどうして奴隷に?」


グレイもエイダンもいい大人なのでちょっと理由が気になった俺は、経緯を確認するため質問してみた。ステータスには犯罪関連の称号とかはないけれど、それだけで分かるものでもないからだ。


「フットマンとして働いていたが、その主人に意見したら生意気だと奴隷に落とされた。いけ好かない貴族共だったが生きていく為に我慢してたが、さすがに目に余る行為が続いてな。まさか奴隷として売られるとは…」


はぁ...と小さく溜息を吐いたグレイは、ガタイも良いが姿勢も良い。所作も綺麗だったから何をしてたのか気になってたけど貴族の屋敷で働いてたのか。

フットマンって執事より下級の使用人だっけ。


「僕は薬草屋で働いていたんだけど、貴族のご子息に粗相をしてしまって...と言うか、知ったかぶりで間違った薬草の知識を連れのお嬢さんに話してて、信じて薬草を購入しようとしてたから違うと言っただけなんですけどね…」


しょんぼりと項垂れるエイダン。


「あのまま購入して服用したら症状によっては麻痺したり、手足の痺れが後遺症として残ってしまうかもしれなかったから、つい口を出してしまった結果が奴隷落ちで...ほっとけば良かったんでしょうか。貴族には関わって良い事なんて何も無いのに...」


「お二人とも貴族の横暴な扱いで奴隷に...ちなみにその貴族の名前は?」


「「ペラード子爵家のギャビン令息です」」


被った。


「「え?」」


グレイとエイダンが驚いて顔を見合わせる。

お互いに同情のような憐憫のような連帯感のようななんとも言えない感情が込み上げているようで、ははっと乾いた笑いが口をついて出ていた。


いやまあ、一つの街で起こった事だし貴族なんてそうそういないから同じ貴族なんだろうね。


〔ザッケルを治めているのはペラード子爵ですね。リンデンベルド伯爵の子飼いです。一応東側の隣街にはルブセン男爵家もあるようです〕


へえ、貴族の直轄地なのか。


〔リンデンベルド伯爵が領内の全ての街や村を統括する事は難しいため、同家門の貴族にダンジョンがある領地以外を任せているようですね〕


ふん、美味しい所は独り占めってか。


「貴族とは随分横暴なんですね...俺は店の拠点はルトワール領の首都ハイデルワイスに構える予定です。ザッケル、いえリンデンベルド領からは離れますし、新しい人生を迎えてみませんか。ウチの従業員はみな奴隷でしたが、今は平民に戻ってます。正直なところ奴隷契約は好きではなくて、従属契約に変更してるんですよ。まあ、機密事項が多いのでどうしても俺に帰属する契約はして頂くことにはなるのですが…」


一応従業員情報と今後の契約についても話しておく。詳細はまだ言えないけれど、可能な範囲で情報公開はしないとね。


「俺たちは何をするんですか?」


「蒼銀の月商会の従業員として働いて貰うつもりです。潜在能力に期待してるので、先ずは俺と一緒に魔導具作成とか、グレイさんにはノエルっていう可愛い子と一緒に料理を学んで貰ったり。エイダンさんには俺ブレンドのハーブティー以外にも薬効が高くて美味しいハーブティーを研究して貰ったりですかね」


にこにこと思いつくままに話していくが、基本は錬金術スキル習得です!今は言わないけど!

だって、店主が聞いてるしね。


「...分かりました。俺を買って下さい」


グレイがスっと頭を下げる。


「僕もお願いします。変な人に買われるより、あなたに買われる方が全然良いです。普通は奴隷に意見なんて求めませんしね」


ふふふっとエイダンが笑った。釣られて俺もはははと笑う。少し和やかな空気になり、俺は店主に二人を購入すると伝えて奴隷契約を変更して貰った。

相変わらず人ひとりの金額が安い...

こっちの世界での命の重さが如何に軽いか思い知らされる気がした。


俺は二人を連れて店を出ると、路地裏に足を運び辺りに人がいない事を確認する。


「とりあえず奴隷契約を解除して、従属契約に変更するね。奴隷紋なんてさっさとなくしちゃおう」


そう言いながら二人の奴隷契約を解除して、従属契約を新たに結ぶ。

二人の首から奴隷紋が消えた。

呆気に取られている所申し訳ないがこれから服やら食器やらテーブルやら色々と買いに行くので、急いで職人通りに行く必要がある。


「じゃあ、先ずは服を買おう。後は食器とか家具類も必要だからね。ああ、ベッドは他で既に購入済みだから自室で寛ぐ為の家具だけで大丈夫だから」


俺は足早で職人通りに向かいながら、必要な物を告げていく。

あたふたと訳も分からないままに後を着いてくる二人ははてなマークがいっぱいだろうけど、夕食の時間までには帰りたいのだ。

服屋に着いて二人に5着ずつ普段着やら下着やらを購入して貰い靴も3足程選んで貰っている間に、俺はベルトに付けられるタイプの鞄を購入。タオルや食器類も一通り買うと、二人に渡し家具屋に急ぐ。

テーブルやソファーを選んでくれと伝えると、俺はリビングに置くためのテーブルやソファを探した。今使ってるのとは雰囲気を出来るだけ合わせた物がいい。同じ家具屋じゃないからね、多少違ってもしょうがないけれど、あまりにも雰囲気が違うとちぐはぐな感じになりそうで。良さげなテーブルセットとソファを選び、二人にも選んで貰った家具を一緒にマジックバックから空間収納にしまい、家具屋の店主さんもグレイもエイダンも驚いていたけれど、気にせず支払いを済ませ宿に戻った。

ふぅ。

夕食には間に合ったかな。

予め二人程従業員が増えるとナヴィを通して伝えてあるので夕食が足りないって事はないし、紹介も夕食の席で良いだろう。

宿で二人の部屋を新たに取ったけど、俺の部屋に入ってもらい更に異空間に入って貰った。


「ただいまー」


「あ、ゼン様おかえりなさい!」


「おかえりなさいませ」


既に全員集まっていたようで、思い思いの場所に座って寛いでいたり、料理を手伝っていたりみなが俺の帰りを待ってくれていた。

じんわりと心が暖かくなる。

うん、やっぱ良いね、こういうの。


「丁度出来上がった所ですよ。ちょっとテーブルが狭いし椅子も足りないのですけれど、ソファの方に用意しますか?」


「ありがとうノエル。テーブルセット買って来たから大丈夫。ちょっと待ってて」


サッと空間収納から先程購入したばかりのテーブルセットを設置する。高さも合ってるし、色も似てるから違和感はあまりないな。良かった。


「このテーブルに準備してくれ」


「はい。直ぐに準備しますね」


にこにこと笑顔で二人分の料理を置いていく。ノエルは相変わらず笑顔で良き。

食器は予備の物を使っていたので、買って来た食器類の方を予備に回すか。


「さあ座って座って」


俺は呆然としているグレイとエイダンに席を進め「じゃあ食べようか。いただきます」と手を合わせて食事を開始する。


「いっただっきまーす!」


「いただきます」


みんなも一斉に食前のいただきますを言い終えると、「ん〜今日も美味〜い」とか「この料理は初めてですね。美味しいです」等賑やかに食事を始めた。

目の前の料理は個別に盛られているので大丈夫だが、大皿料理もあるので早目に取りおかないと無くなってしまう。

未だに呆然としている二人に「早く食べないと無くなるよ」と声をかけ食事を勧めた。

慌てて目の前の食べ物に手を出し「うまっ!」と驚いては一気に食べ進めるのを確認すると、大皿料理から小皿に取り分けて二人に渡す。

最初は遠慮がちだった二人もしばらくすると美味い料理に夢中でがっついていた。


「さて、食事も済んだ事だし、みんなに紹介するね。急だったから驚いたとは思うけど」


ぽりぽりと頭を掻きながら俺は二人の事を紹介する。


「エイダンとグレイだ。二人とも錬金術スキルの潜在能力があるので従業員になってもらう事にした。エイダンは他にも調薬スキルも覚醒出来そうだし、グレイは料理スキルが覚醒出来ると思う。先ずは錬金術スキルを覚醒して欲しいからしばらくは俺と一緒に魔導具作成をしてもらう予定」


俺は軽く二人を紹介すると、自己紹介を促した。


「エイダンです。よろしくお願いします」


「グレイだ。よろしくお願いします」


緊張気味に簡潔な自己紹介を終えたので「オルト、ナジ二人に色々教えてあげて。でも先に部屋に案内かな」と、2階の空き部屋へと案内する。


「両端はもう埋まってるので真ん中の部屋になるんだけど、廊下を挟んでどっちの部屋を使うか決めてね。まあ、間取りも設備も変わらないんだけどね」


とりあえず一室に入りどっちが使うか確認すると、状況を全く把握出来ないエイダンではなくグレイが自分が使うと名乗り出てくれたので、さっき購入したグレイの家具を空間収納から取り出していく。

既にベッドは準備してあるので、家具が入れば快適に過ごせるだろう。

部屋の設備も軽く説明すると、後はオルト達に任せ俺は自室へ戻ることにした。エイダンの家具は誰かが空間収納から取り出してくれるはずだ。


いや〜まさかの錬金術スキル潜在状態の人が二人も見つかるなんてねぇ。

俺やっぱツイてるよね。

しかも他のスキルもさ、有能そうじゃない。料理スキルは言わずもがなだしさ。

調薬スキルなんてポーションとかバフ系ポーションとかもさ、作れちゃうんじゃないの?これも商材になりそうですなぁ。ぐふふ。


〔マスター顔〕


あ、はい。

だって、新しい商材のチャンスだからさぁ。ついね、顔も緩んじゃうよねぇ。

しかし明日からここで作業ってのもアレだしな。

地下に錬金用の作業部屋作るか。ついでに調薬部屋も。効能ごとのハーブティー作ったり、ポーション作って商材に出来そうなら薬草栽培から考えるのもありだな。


〔マスターは本当に沢山の事を思い付きますね〕


ん〜まあ、あっちの世界にいた時より、実現性が高いからじゃない?

アスガルディアは魔法とかスキルとか、向こうじゃ考えられない事が出来るからさ。なんて言うか自分の想像力次第なとこがあって、凄い楽しいんだよね。もちろん独りじゃ出来ない事は多くてさ、ナヴィにめちゃくちゃ助けて貰ってるから実現出来る事も多いんだけどな。

だからいつも感謝してるんだぜ、相棒。


〔マスター...〕


これからもよろしくな。


〔はい、これからも全力でサポートさせて頂きます。マスター〕

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